大会プログラム
ワークショップ4 (WS4)
9月18日(木)
16:50 - 18:50
会場:011講義室
白水 始(国立教育政策研究所)・益川弘如(静岡大学)
三宅なほみ(東京大学)・村山 功(静岡大学)・田代直幸(常葉大学大学院)・山口悦司(神戸大学)
ねらい:
認知科学のコミュニティでは,Piagetの発達段階説は,知識の領域固有性や発達の社会文化依存性などの観点から顧みられなくなって久しいが,教育行政やそれに近い教育研究の分野では依然根強く信奉されている.これには,認知科学の知見が十分に浸透していないことも一因としてあるが,学校教育上,特定の教育内容をどの学校段階のどの学年に配当するかの根拠を教育関係者が求めていることも一因としてある.認知科学が,広く現実社会と対話していくためには,こういったニーズを学術上の立場から一方的に否定するのではなく,それに対して建設的な解を提案し,対話を通して自らの研究も深化させていく必要があるだろう.そこで,本ワークショップでは,小中高の理科を対象に,従来の学習指導要領では,いかなる根拠で配当が決められていたかを確かめた上で,概念変化研究を基に何らかのオルタナティブが提案できるかを検討したい.
概念変化を「物理,生物,天体などの仕組みについて,人が社会的文化的な文脈の中で作り上げた素朴理論を,自らの認知発達や学校教育における意図的教授に従って,より『科学的』な理論へと作り変えていく過程」だと捉えると,その過程の研究は教育内容の配列と密接に関係する.実際,近年のハンドブック刊行(Vosniadou, 2008/2012; Handbook of research on conceptual change)に見るように概念変化研究が成熟するに従って,それを一つのベースとして理科教育の内容を配列する「ラーニング・プログレッションズ」が提案され,米国の理科教育スタンダードに採用される動きなども出ている.そのような積極的な提案は,果たして,クラスのどの程度の子供が同じようなペース(年齢)や順序やコースで概念を変化させるのかという問いや,多様な概念変化に合わせてスタンダードが柔軟性を持っていた方が良いのではないかといった新しい問いを生む.
構成:
ワークショップでは,田代氏の「学習指導要領と発達段階」の概説と山口氏の「ラーニング・プログレッションズ」の紹介を基調として,発達研究と教育研究の結節点で子供の概念変化を明らかにしてきた研究者(交渉中)から「生物学における概念変化と意図的教授」,概念をより動的なものと捉える立場として村山氏から「断片的知識論と教育への示唆」,通常想定される発達段階の乗り越えを目指して教室場面での概念変化を実践的に支援・評価する三宅氏から「協調的な相互作用による概念変化」について話題提供を行った後,「神経科学的な立場」からの研究者(交渉中)のコメントや企画者側の提案も含めて,フロアのみなさんとの議論から,上に挙げたような問いへの答えを模索し,教育現場に役立つ発達段階の再定義やその示し方について考えたい.
認知科学のコミュニティでは,Piagetの発達段階説は,知識の領域固有性や発達の社会文化依存性などの観点から顧みられなくなって久しいが,教育行政やそれに近い教育研究の分野では依然根強く信奉されている.これには,認知科学の知見が十分に浸透していないことも一因としてあるが,学校教育上,特定の教育内容をどの学校段階のどの学年に配当するかの根拠を教育関係者が求めていることも一因としてある.認知科学が,広く現実社会と対話していくためには,こういったニーズを学術上の立場から一方的に否定するのではなく,それに対して建設的な解を提案し,対話を通して自らの研究も深化させていく必要があるだろう.そこで,本ワークショップでは,小中高の理科を対象に,従来の学習指導要領では,いかなる根拠で配当が決められていたかを確かめた上で,概念変化研究を基に何らかのオルタナティブが提案できるかを検討したい.
概念変化を「物理,生物,天体などの仕組みについて,人が社会的文化的な文脈の中で作り上げた素朴理論を,自らの認知発達や学校教育における意図的教授に従って,より『科学的』な理論へと作り変えていく過程」だと捉えると,その過程の研究は教育内容の配列と密接に関係する.実際,近年のハンドブック刊行(Vosniadou, 2008/2012; Handbook of research on conceptual change)に見るように概念変化研究が成熟するに従って,それを一つのベースとして理科教育の内容を配列する「ラーニング・プログレッションズ」が提案され,米国の理科教育スタンダードに採用される動きなども出ている.そのような積極的な提案は,果たして,クラスのどの程度の子供が同じようなペース(年齢)や順序やコースで概念を変化させるのかという問いや,多様な概念変化に合わせてスタンダードが柔軟性を持っていた方が良いのではないかといった新しい問いを生む.
構成:
ワークショップでは,田代氏の「学習指導要領と発達段階」の概説と山口氏の「ラーニング・プログレッションズ」の紹介を基調として,発達研究と教育研究の結節点で子供の概念変化を明らかにしてきた研究者(交渉中)から「生物学における概念変化と意図的教授」,概念をより動的なものと捉える立場として村山氏から「断片的知識論と教育への示唆」,通常想定される発達段階の乗り越えを目指して教室場面での概念変化を実践的に支援・評価する三宅氏から「協調的な相互作用による概念変化」について話題提供を行った後,「神経科学的な立場」からの研究者(交渉中)のコメントや企画者側の提案も含めて,フロアのみなさんとの議論から,上に挙げたような問いへの答えを模索し,教育現場に役立つ発達段階の再定義やその示し方について考えたい.