大会プログラム
ワークショップ7 (WS7)
9月20日(土)
15:40 - 17:40
会場:013講義室
内海彰(電気通信大学)・松井智子(東京学芸大学)・中村太戯留(慶應義塾大学)
岡本真一郎(愛知学院大学):社会心理学・社会言語学/秋元頼孝(理化学研究所):心理学・脳科学/松井智子(東京学芸大学):発達心理学・語用論/内海彰(電気通信大学):自然言語処理・情報抽出
アイロニーもしくは皮肉は,実際とは反対のことを意図的に言うことによって,現実に対する話し手の否定的な態度を言外に伝える言語表現である.アイロニーを理解するためには,言語表現として陽に述べられている内容だけではなく,その背後に隠された意味を推測しなければいけないという点で,言語使用を研究対象とする言語学の一分野である語用論の研究者や非字義的表現に興味を持つ認知科学・心理学者にとって,アイロニーは興味深い研究対象であった.実際に,多くの重要な理論的・実験的研究(e.g., Gibbs & Colston, 2007; 岡本, 2004; Sperber & Wilson, 1986;Utsumi, 2000) が行われ,アイロニー理解の認知過程に関する理解が深まってきた.しかしながら,我々の日常的な言語使用から考えると,アイロニーはそれほど頻繁に使用されるわけではない特殊な表現であることから,アイロニー研究は上述した分野の一部の研究者の興味の範囲にとどまっていた.
ところが,近年になって,さまざまな分野で研究対象としてのアイロニーが注目されている.例えば,アイロニーを正しく理解するためには話し手の信念や意図を推測しなければならず,そのことはアイロニー理解には「心の理論」が不可欠であることを示している(Happ´e, 1993).したがって,「心の理論」を対象とする研究者にとって,アイロニーはひとつの研究対象として認識されるようになり,「心の理論」の発達や障害とアイロニー理解を結びつける研究が多く行われるようになっている(e.g., Filippova & Astington, 2008; Pexman, 2008; 松井, 2013).さらに,その潮流は脳科学にも広がっており,近年ではアイロニー理解の神経器盤をfMRI を用いて探る研究も盛んになっている(e.g., Rapp et al., 2012; Uchiyama et al., 2012; Akimoto et al., 2013).一方では,Twitter を代表とするSNS では,ユーザが意見を発信する際にしばしばアイロニーが用いられる.SNS の発言から有用な情報(例えば,ある事柄に関する意見や評判)を自動抽出しようとする情報抽出・テキストマイニングの研究では,アイロニーかどうかを自動的に判断することが,その精度に大きく影響を与えるため,事前処理としてのアイロニーの自動検出が近年のホットトピックとなりつつある(e.g., Reyes et al., 2013; Wallace, 2013).
以上の現状をふまえて,本ワークショップでは,従来からのアイロニー研究とともに,最近のアイロニー研究の新たな展開を紹介するとともに,今後のアイロニー研究の方向性・多分野連携や,そこから得られる知見がより幅広い認知科学研究にどのような示唆を与えるかを議論したい.
ところが,近年になって,さまざまな分野で研究対象としてのアイロニーが注目されている.例えば,アイロニーを正しく理解するためには話し手の信念や意図を推測しなければならず,そのことはアイロニー理解には「心の理論」が不可欠であることを示している(Happ´e, 1993).したがって,「心の理論」を対象とする研究者にとって,アイロニーはひとつの研究対象として認識されるようになり,「心の理論」の発達や障害とアイロニー理解を結びつける研究が多く行われるようになっている(e.g., Filippova & Astington, 2008; Pexman, 2008; 松井, 2013).さらに,その潮流は脳科学にも広がっており,近年ではアイロニー理解の神経器盤をfMRI を用いて探る研究も盛んになっている(e.g., Rapp et al., 2012; Uchiyama et al., 2012; Akimoto et al., 2013).一方では,Twitter を代表とするSNS では,ユーザが意見を発信する際にしばしばアイロニーが用いられる.SNS の発言から有用な情報(例えば,ある事柄に関する意見や評判)を自動抽出しようとする情報抽出・テキストマイニングの研究では,アイロニーかどうかを自動的に判断することが,その精度に大きく影響を与えるため,事前処理としてのアイロニーの自動検出が近年のホットトピックとなりつつある(e.g., Reyes et al., 2013; Wallace, 2013).
以上の現状をふまえて,本ワークショップでは,従来からのアイロニー研究とともに,最近のアイロニー研究の新たな展開を紹介するとともに,今後のアイロニー研究の方向性・多分野連携や,そこから得られる知見がより幅広い認知科学研究にどのような示唆を与えるかを議論したい.