プログラム順

[OS05] 創造性のキモをつかむ

9月16日(金) 9:30 - 12:00 会場:A24(情報科学研究科棟2階)
 新しいものを生み出す,これまでにないやり方で問題を解決するなど,創造性が関わる認知活動は,認知科学において常に関心を集めてきた。これまで,行動実験,神経科学的検討,計算機モデリング,フィールドワーク,インタビューなどの様々なアプローチにより,洞察,アイデア生成,芸術,デザイン,発見等,多様なテーマについて研究が蓄積されてきた。その結果,創造性が関わる認知活動を促進する,あるいは妨害する要因や,その生起メカニズムなどが徐々に明らかにされてきている。しかし,方法論やテーマの異なる研究領域間の交流は比較的乏しい状況にある。そこで,本オーガナイズドセッションでは,昨年度に引き続き,研究領域間の交流に重点を置き,研究間の関係性を明らかにすること,また,新たな協同の可能性を探ることを目的とする。
 具体的には,洞察,アイデア生成,芸術,デザイン,発見など,広く創造性に関わるテーマを扱う研究発表を募集する。タイトルにある「キモ」とは,「創造性とは何か」「創造性を生み出す認知プロセスとはどのようなものか」「創造性を高めるのに必要な要因は何か」など,創造性を考えるにあたって各自が重要と考える問いとその答えを意味している。それぞれがキモと考えるテーマについて発表するとともに,(a) 創造性をどのように捉えるのか,(b) 創造性を高める上でどのような要因・条件が必要かの2点を共通の問いとし,発表時に,各自の研究を報告することに加えて,問いへの回答を明示することを求める。また,今年度は招待講演枠を設けることで,創造性に関する新たな視点の提供をしたいと考えている。多様な背景をもつ研究者が,創造性に関する共通の問いを足場として議論を行う中で,それぞれが考える創造性のキモをつかむきっかけとなることを期待している。

キーワード:洞察,アイデア生成,芸術,デザイン,発見
  • OS05-1
    鷲田祐一 (一橋大学)
    本田秀仁 (東京大学大学院総合文化研究科)
    引田幹彦 (株式会社インテリジェンス)
    近年増加する未来洞察ワークショップ会議は、その効用が認められつつも、従来型会議と比較して信用性が低いとする意見が多い。現代企業組織においては、論理的な意思決定が意図せずコミュニケーションのルールになっており、人の自然な意思決定方法と乖離しているのはないかという仮説が立てられた。そこで一般生活者1017名に対して、ワークショップ型会議で多発する二段推論型意思決定を再現する実験を実施し、仮説検証を試みた。
  • OS05-2
    小田切史士 (青山学院大学社会情報学研究科博士課程後期)
    鈴木宏昭 (青山学院大学 教育人間科学部教育学科 教授 博士)
    人間が潜在情報をワーキングメモリなどの何らかの貯蔵庫に保持し,洞察問題解決時に参照している可能性があることを踏まえ,正解画像を閾下呈する際にワーキングメモリに負荷をかけた場合の影響を検討した.先行研究はタッピングによる負荷をかけると解決が促進されていたが,本研究では変化検出課題を用いたところ,関係制約緩和率において閾下情報の保持に干渉が見られた.このことから潜在情報の保持にワーキングメモリのリソースが用いられている可能性が示された.
  • OS05-3
    小出諒 (東京大学 学際情報学府 学際情報学専攻 修士1年)
    鈴木宏昭 (青山学院大学 教育人間科学部教育学科 教授 博士)
     洞察問題解決における無意識的情報処理システム内で起こる変化が,行動上だけでなく他の部分でも何らかの形で変化が生じている可能性は十分に考えられる.そのため,サブリミナルヒントの提示と指尖容積脈波測定を組み合わせた研究を行い,洞察問題解決における無意識的情報処理を,より詳細なレベルで捉えるための基盤作りを試みた. 結果として,課題として用いたパズルの正解図を閾下提示した群は,統制群に比べて脈波振幅の減少が起こる割合が有意に高かった.
  • OS05-4
    山川真由 (名古屋大学大学院教育発達科学研究科)
    清河幸子 (名古屋大学大学院教育発達科学研究科)
    新しいアイデアを生み出す時には,事物を新たな視点から捉える必要がある。本研究では,そのために有効な方法として2つの対象間の共通点の探索に着目し,その過程について発話プロトコル分析を用いて検討した。その結果,活性化した属性を照合するだけではなく,共通点となるように表現を言い換えることで独自で面白い共通点が発見されること,関連性が高い対象間での共通点の探索に比べ,低い対象間での共通点の探索において,より言い換えが用いられることが示された。
  • OS05-5
    福田玄明 (東京大学大学院 総合文化研究科 助教)
    北田萌香 (東京大学)
    植田一博 (東京大学大学院 総合文化研究科 教授)
    創造性は認知科学における大きな問題の一つです。しかし、これまでの多くの先行研究は定性的な記述がされており、創造性の基礎となる認知プロセスについては、まだあまりわかっていません。 本研究では、定量的な評価のため、創造性と計算モデルを用いて推定された意思決定における行動特性との関係を調べました。結果は、情報探索傾向が創造性と相関することを示しています。この結果は、創造性が情報探探索傾向の認知プロセスと共通基盤をもつことを示唆しています。
  • OS05-6
    須藤明人 (東京大学生産技術研究所)
    藤原直哉 (東京大学 空間情報科学研究センター)
    徳田慶太 (東京大学医学部附属病院薬剤部)
    本田秀仁 (東京大学大学院総合文化研究科)
    植田一博 (東京大学大学院 総合文化研究科 教授)
    コンセプトの自動生成は重要であり、コンセプト合成と呼ばれる従来研究では人が概念を合成するプロセスのモデルについて研究がなされてきた。しかし、合成する概念群が所与の条件下での研究であるため、概念が無数にあるビジネス等の領域への適用は難しかった。そこで、我々は概念の選択のされ方に共通した法則性があると仮定し、その仮定のもとで新しいコンセプトを自動で生成する機械学習を用いた手法を提案する。実験では、この仮定の妥当性を検証した。
  • OS05-7
    新谷嘉朗 (名古屋大学大学院情報科学研究科)
    寺井仁 (近畿大学産業理工学部情報学科)
    三輪和久 (名古屋大学大学院情報科学研究科)
    創造性の先行研究では「発明先行構造」の重要性が明らかにされてきた.同様に漫画家らは事前のキャラクター設定の重要性を指摘している.本研究では,事前のキャラクター設定が,作品上にどのように反映され,最終的に作品の質につながるのかを漫画作成課題を用いて媒介モデルによって検討した.その結果、主人公の社会的な記述とストーリーの質との関係を外向性が媒介し,また,主人公の内在的な記述と表現の質との関係を漫画的な記号が媒介することが明らかになった.