スケジュール順
[OS09] OS09 同じさの諸相:認知科学・数学・哲学からの示唆
9月13日(水)
16:10 - 18:40
会場:302講義室
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OS09-1読者の物語理解と熱中状態の関係性が近年注目されている.本論文では,物語展開の予測方法構築時の認知負荷が熱中状態と関係するとする「予測—熱中モデル」を提案する.このモデルでは,読み始めの新規予測方法構築時,予測方法の継続使用時,予測方法再構築時がそれぞれ,非熱中,安定した熱中,混乱を伴う熱中の状態に対応すると考える.モデルの提示に加えて,先行研究や著者らのこれまでの研究との関連や今後の本モデルの精緻化や実証可能性について議論を行う.
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OS09-2本研究では直喩表現における主題-喩辞の類似性と産出される解釈の数の関係性を検討した.研究1において,参加者(N = 50)は中本・楠見(2004)で収集された120個の直喩表現に対して,それぞれ最大3つまで解釈を産出することが求められた.その結果,直喩表現に対する主題-喩辞の類似性と,産出された解釈の数に有意な正の相関関係が見られた.この結果は,直喩表現において主題-喩辞の類似性が産出される解釈の数に影響している傾向を示した.
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OS09-3Systematicity Argumentによれば,心的表象は構成素と規則によって作動する.そのため認知の説明を与えられるのは計算主義だけである.この議論に対して多くの論者はその経験的な前提を批判し,二重過程理論が認知の説明理論として適切であるとしてきた.本稿ではこれを批判する.認知は異なる2つのメカニズムに依存してはいない.Predictive Processingはこの点で,二重過程理論に代わって認知のより良い説明を提供し得る.
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OS09-4I依頼講演本論文の主題は、自明に異なるもののあいだの「同じさ」の措定が、自然変換の創出という、圏論的な概念でとらえられるという作業仮説を提起し、その応用の可能性を論じることにある(全体として田口茂氏との進行中の共同研究に基づく)。また、この主題の具体的な展開として、「同じさ」の措定(発見/発明)である「比喩」の一般理論の枠組みを提示する(布山美慕氏・岡隆之介との進行中の共同研究に基づく)。
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OS09-5I依頼講演現象学的な観点から、「同じさ」を「差異」によって定義することを試みる。われわれは、差異を基盤としてはじめて何かを「同じもの」としてつかむことができる。「同じもの」とは、差異に満ちた現実から差異が部分的に相殺された結果であると考えることができる。それゆえ、同一性は差異に還元可能である。さらに、同一性に対する差異の根源性を、固視微動、カエルの視覚、神経適応、ニューロンの生理学的特性といった経験的・実験科学的知見から裏付けることをも試みたい。