スケジュール順
[OS16] OS16 認知科学で捉える相互行為
9月14日(木)
15:40 - 18:10
会場:301講義室
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OS16-2野沢温泉道祖神祭りの準備活動において問題が発見されていく過程の相互行為を分析した。分析対象は、祭りの「初灯籠」作りにおいて、灯籠の柱を切りするという問題であった。分析の結果、(1)一度問題への気付きが得られた後に、再度問題の確認を行うというシークエンスと、(2)以上のシークエンスを通して参与者らに問題の気付きが共有されたにも関わらず、アジェンダ設定を保留するということが行われていたことが見出された。
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OS16-3I依頼講演ひとのアイデンティティを私的—公的,社会的—個人的という2軸で類型化したうえで,本人視点の私的社会的アイデンティティについてのインタヴュー調査データを検討した.他者との異同や相互行為場面における快適さが,アイデンティティ選択の基底にあることを指摘した.公的アイデンティティには一瞥的側面があるが,この分野の研究はあまり蓄積がない.最後に,アイデンティティの4類型と認知科学との関係の現状と将来について論じた.
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OS16-4他者への化粧行為において,行為者は予想外の出来の悪さに悩まされる.素人の行為者が自分の母親に化粧をしているデータから,試行錯誤や偶然のチャンスを通じて,望ましくない出来を回復していく事例を分析する.途中,出来について被行為者に伝達できない様子や,あるきっかけで回復への糸口が見つかる瞬間が分析によって明らかにされた.この事例を用いて,複合活動における会話と行為の境界の不一致と,行為者による境界の調整について論じる.
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OS16-5本稿では,北信州野沢温泉の道祖神祭りのための社殿組み作業の一部である,鳶口を使った「木遣り」の協働作業を対象に,そのビデオデータを微視的に分析することを通じて,各行為主体の身体行動上の特徴に見られる環境のアフォーダンスとの関わりという側面とこうした身体行動を相手と協調させる相互行為としての側面とがいかにして統合されているかを記述的に解明していく.
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OS16-6失語症のある人の生活場面をエスノメソドロジー・会話分析の立場から観察・分析し,行為と間主観的理解が協働的に達成されていることを,次の4つの現象に注目して示す:1)副詞(+身振り)の単独での使用,2)(反応の遅延「う::ん」+)「まあね」の使用,3)連鎖を閉じる笑い,4)理解を適切な位置で示すこと.このことを観察可能なデータとして見出すことが可能であることが,EMCAと認知科学の接点として重要である.
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OS16-7本研究では,野沢温泉村で受け継がれてきた湯澤神社例祭の神楽の一つ,猿田彦の舞について分析する.拍子方による囃子の旋律や舞の型は決まっているが,毎回時間的に一定ではなく,特に舞の序盤と終盤ではテンポが変化している.それにも関わらず,「返し」と呼ばれる囃子の区切りでは笛と太鼓の出だしが一致する.ここでは,拍子方における相互行為の分析を通じて,動的に変化するテンポや状況の下でどのように認知された上で対処されているのかを明らかにする.
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OS16-8本発表では,視覚障害者に対する歩行訓練場面の相互行為を観察し,視覚障害者と晴眼者の間に知覚の不均衡が存在する状態において,いかにして双方の認識が擦り合わせられるのかを考察する.歩行訓練士が行う環境の説明に対し,視覚障害者がその説明内容 (の一部) を「わかっている」ことを示すことで,両者の認識が摺り合わせられていく.これにより,利用可能な知覚モダリティの異なる人々の知覚体験が共有され,知覚の不均衡を越えた相互理解が達成される.