日程
オーガナイズドセッション3 (OS03)
「生きる」と向きあう科学:方法論からの解放
8月30日(木)
8:40 - 11:10
会場:A棟2F AS251
オーガナイザー:伝康晴(千葉大学),諏訪正樹(慶應義塾大学)
-
OS03-1基調講演「生きる」ことにしかと向き合うための研究方法論が、認知科学では今求められていると感じる。従来の科学的方法論は、主観や個人固有性を十全に扱えない。本論文では、まず認知科学の歴史を振り返ることから、新たなパラダイムを得るために今何が致命的に欠けているのかを露わにする。そして、一人称研究という新しい方法論を紹介する。それは、対象世界と二人称的な関わりを結ぶことを通じて、人が「生きる」ことに向き合う方法であることを説く。
-
OS03-2公募発表本研究の目的は,自身の身を世界に晒すことにより、世界との調和に至る身体の認知モデルを構築することである。我々は初めて行う方法で世界に向き合わねばならぬ時、生まれたての子鹿のように覚束ないが、次第に大地に対する力のかけ方とバランスを見出していく。本研究では、著者自身が水泳とサーフィンを学習する場面を一人称視点で分析し、世界の物理的法則の中へ自身の身体を滑り込ませるに至る知覚形成過程をモデル化する。
-
OS03-3公募発表本研究では、会話分析と行動経済学という全く異なる既存の方法論と理論的枠組を用いて,同一の社会的相互行為における現象を検討することで、一見して、購買活動や展示販売活動といった経済的活動の具体的な場面と記述されうるやりとりが、どのような社会的行為によって組織されているのかを明らかにすることを試みる。その際に、行動経済学からの理論的枠組を記述された現象の裏付けとして援用する。
-
OS03-4公募発表本稿では,身体技能の遂行・習得メカニズムを明らかにする方法論として,随意運動制御の計算モデルに意識の働きを組み込むことについて議論する.ヒトの運動制御の本質的な難しさが身体の多自由度性にあることを指摘するとともに,意識に上る認知の働きと無意識の下で働く運動計画・運動制御の働きがこの問題を解決するうえでどのように機能するかを考察したうえで,意識の働きを計算モデルに組み込むうえでの課題について論じる.
-
OS03-5公募発表風土や文化に根ざす生きるための知と科学技術が相克しつつも共存する背景にあるものごとを、空間図式に注目し、地域にある臨床の知の共創と継承のための4つ課題を通して浮き彫りにした。1)普遍性に駆逐された固有性に再び意味を持たせ、2)固有の文化と普遍的な要求を共存させる術を探し、3)普遍的な技術を加えて固有の知を更新し、4) 固有の知と普遍的な知の折り合い方を探ることである。これらはいくつかの研究方法を並行して繰り返して気づいた仮定である。
-
OS03-6公募発表行為主体の行為にとって不確実性は不可避の事実である.この不確実性は少なくとも二つの面での外部性によるものである.一方で,行為主体の意味が他者による理解と応答という二人称的な視点を経由することによって構築される.他方で,行動は全面的に予測可能ではない物質的環境の中で行われる.本稿では,行為主体がこれらの外部性を通じて「自分自身の行為に出会う」という経験を出発点とした認知科学の可能性を模索することを目的とする.