日程

オーガナイズドセッション6 (OS06)

意味理解とオブジェクト認知:ホモ・クオリタスとしての人間理解へ向けて
8月30日(木) 16:10 - 18:40
会場:A棟2F AC232
オーガナイザー:日髙昇平(北陸先端科学技術大学院大学),高橋康介(中京大学)
  • OS06-1
    招待講演
    日髙昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    高橋康介 (中京大学心理学部准教授)
    我々は自動車を運転をするとき、ハンドルを持つ手を意識することなく、“自分を拡張した自動車”全体の操縦に専念できる。これはハンドル操作の高い予測性により自動車全体と一体として感じられる最たる例である。広範な認知過程の鍵となる、こうした統合的な情報処理の単位(オブジェクト)をテーマに、本OSでは、オブジェクトの知覚、その障害である幻覚、または知覚を誘導する技術、そして情報処理について議論を行う。
  • OS06-2
    招待講演
    西尾慶之 (東京都立松沢病院)
    レビー小体型認知症やパーキンソン病では、人の幻視、実体意識性(「近くに誰かがいる」という幻覚)、キネトプシア(動きの錯視)などの病的感覚体験が観察されます。私は「逸脱した空間知覚→幻の対象の存在感→他者にまつわる意味表象の賦活」という心理的流れに基づいてこれらの病的感覚体験を理解できるのではないかと考えています。この仮説の根拠となる現象学的、神経学的知見についてご紹介させていただきたいと思います。
  • OS06-3
    招待講演
    西郷甲矢人 (長浜バイオ大学)
    意味は関係的である。ひとつの形象の意味ですら、他の無数の形象との関係を離れては存立し得ない。本講演においては、こうした構造を記述し理解するために格好の数学的枠組み=「圏論」を用いた意味の理論として、布山美慕氏と演者が提唱した「不定自然変換理論」の試みについて述べる。重要な応用である新規比喩の意味生成の問題を焦点としつつ、「意識」の圏論的理解との関連も論ずる。
  • OS06-4
    招待講演
    鳴海拓志 (東京大学)
    女の子のキャラクタが近づいてくるだけで吐息を感じる,見た目と香りが変わると味まで変わって感じてしまう,アフロのアバタを使うだけで太鼓の叩き方が変わる.バーチャルリアリティ(VR)では,矛盾する感覚刺激は理解可能な体験として統合され,自分とは異なる体を使うだけで振る舞いや心理が変わってしまう.VRを通して垣間見えるこうした過剰なまでの意味の辻褄合わせの事例を紹介し,「意味」の認知の理解に迫りたい.
  • OS06-5
    パネルディスカッション
    日髙昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    高橋康介 (中京大学心理学部准教授)
    西尾慶之 (東京都立松沢病院)
    西郷甲矢人 (長浜バイオ大学)
    鳴海拓志 (東京大学)
    計算論的認知科学者(日高昇平)、知覚心理学者(高橋康介)、VR研究者(鳴海拓志)、精神医学者(西尾慶之)、比喩の理論化に挑む数学者(西郷甲矢人)などの関連分野の異なる視点を持つ気鋭の論者を招待し、オブジェクトあるいは意味の単位をいかに理論的に扱うべきか、という点を主要なテーマとして議論を深める。これに先立って、この企画の趣旨説明、また各論者の研究概要の紹介、VR技術の体験セッションなどを事例に議論を深める。
  • OS06-6
    体験企画
    高橋康介 (中京大学心理学部准教授)
    鳴海拓志 (東京大学)
    昨今、Virtual Reality(以下VR)の隆盛が著しい。VRの本質は「意味」の現前といえるかもしれない。その世界を一人称的に体験する者にとってのみ、その世界およびその世界における意味が現れる。ではその「意味」は一体どこから、どこに、どのような時に現れるのだろうか?本企画では、VRを用いた体験を通して、「意味」の認知現象と意味の圏論的理解や病的感覚体験との接続を試みたい。