研究分野別一覧
神経生理
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OS11-4公募発表本研究は自閉スペクトラム症(ASD)患者と定型発達者の運動模倣の方略の違いを特定することを目的とした。運動模倣時に反応時間と脳波を計測した。聞き取り調査の結果、運動模倣時にASD患者は心的回転、定型発達者は視点取得の方略を用いることが分かった。この方略の違いは反応時間と脳波の結果からも確認できた。以上の結果は、他者視点で模倣する定型発達者とは違い、ASD患者が他者の行動を自己視点に合わせるプロジェクションを用いて模倣することを示唆する。
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sO3-2人間の言語活動をめぐり、脳機能イメージングの領域に機械学習を適用し、言葉の意味処理の神経基盤を求める研究は、脳の中に辞書を地図として描く段階にまで進んでいる。しかし、こうした研究は現在、個人差の捉え方と意味処理中枢の位置をめぐり、大きな限界に直面している。本研究では、Mitchell et alのScience論文に始まる計算神経言語学的アプローチを新たな視点で再分析することで、この限界を扱いうる具体的なメタ分析の例を提示する。
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sO3-4言語間距離の遠い日本語と英語を対象言語とする通訳になったばかりの新米通訳者を6年間(22〜28歳)追跡し、英語力・ナラティブ力と脳賦活度合いの関連性を調査した。その結果、大学卒業時に既に高い英語力を持つ新米通訳者も6年間の内に語彙密度や流暢さは向上し、脳賦活もより堪能な母語賦活を抑えることで第2言語にリソースを多く割り当てる経済的な賦活様態に変化してきていることが判明した。
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sP1-8embodiment理論によれば、脳の運動野は言語の意味理解に本質的に関与する。 これを踏まえ、本研究では人間の動作、特に手の動作を表す文を読む時と、運動を含まない心的な文を読む時の脳の賦活を比較し、運動野と言語野との協調性について考察する。 変量効果分析を行ったところ、左角回と左中側頭回の周辺に有意な差が確認できた。 この結果はembodiment理論に対立するamodal理論を支持している。
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sP1-19本研究では、機能的連結性を用い、日本人が母語の文を理解するのと比較し、同じ意味の英文を理解する際に特徴的な脳反応を、言語処理ネットワークに着目し抽出した。また、TOEICの点数に基づく英語能力の差による脳反応の違いを調べた。結果として、DMNと顕著性ネットワークが英語の意味処理に関係することが示唆され、両側に跨る第二言語特有のネットワークが存在することも導かれた。
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sP1-53言語の身体性に関する多くの研究では、行為文の理解時に知覚運動シミュレーションが活性化し、実行為が影響されることが示されている。 本研究では、記述された行為の速度が、知覚運動シミュレーションに影響するか調べた。日本語行為文の有意性をボタン押しで回答させ、 低速―高速行為文間で反応時間を比較した。その結果、低速文理解時の方が高速文理解時よりも、反応時間が速かった。この不一致をもたらす仕組みについて、考察した。
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sP1-60集団で運動したときに「この運動は我々が起こしている」と感じる感覚を共同運動主体感という.本研究では,共同作業中の2者の脳波を同時計測し,運動主体感と2者の脳波同期の関係から共同運動主体感の生起に関わる脳領域を調査した.実験の結果,互いに協調し合うほど,共同運動主体感は高まり,β波帯域において頭頂葉の同期が高まった.このことから,共同運動主体感の生起には頭頂葉のβ波帯域の活動が関わると考えられる.
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sP1-81ヒトはさまざまな対象に自己を認識する.本研究は,氏名と筆記者の2領域の自己情報をもつ手書き氏名を観察中の事象関連電位を計測し,対象によって異なる自己表象があるのかを調べた.その結果,筆記者における自己-他者情報処理の違いは後頭頂領域のP250に,氏名における自己-他者情報処理の違いは正中部のLPCに反映した.このように,氏名と筆記者の自己情報処理は異なる成分に反映し,対象によって異なる自己表象があることが示唆された.
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sP2-34本研究はチャップリンが監督・主演したコメディ映画を見る際に鑑賞者に生じるユーモアと笑いの認知に関わる神経メカニズムを調べることを目的とし,鑑賞中の脳活動をNIRSで計測した.実験の結果,独自に作成したチャップリンのおもしろさ測定尺度によって実験用映像をあらかじめ評定させ,主成分分析を施した結果の第1主成分~第3主成分と,ミラーニューロンシステムや心の理論に関わる領域の脳活動の間に有意な相関があることが示された.