日程 9月9日(土) 15:40 - 17:40

オーガナイズドセッション (OS03)

会場:594中講義室・オンライン
「愛」の定義を拡大する - 生物学的基盤からナラティブまで –
オーガナイザー:
高橋英之(ATR 深層インタラクション総合研究所/大阪大学大学院 基礎工学研究科)
岡部祥太(自治医科大学医学部 神経脳生理学部門・応用倫理学研究室)
山縣芽生(同志社大学文化情報学部)
  • OS03-1
    人間と非‐人間的存在たちとの愛や性を含む関係について――動物性愛およびロボット性愛を事例として
    招待講演
    濱野 ちひろ (大阪公立大学/京都大学/ノンフィクション作家)
    発表者は、人間と非人間の関係を探求する文化人類学的研究を行ってきた。2016年からはドイツの動物愛好家の生活を参与観察し、著書『聖なるズー』にまとめた。本書では、人間と動物が対等な関係を保つ方法がテーマであった。2020年からは、ロボットやドールとの性や愛の側面を含む関係を調査しており、最近では米国で3ヶ月間の観察とインタビューを行った。本報告では、これらの成果を用い、人間と非人間の関係、特に動物愛とロボット愛の事例を検討する。
  • OS03-2
    動物研究から愛について考える
    招待講演
    岡部 祥太 (自治医科大学)
    社会的動物は通常同種と親和性を持つが、時に異種とも親和的関係を結ぶことがある。この親和性の背後にあるメカニズムを理解することは、愛の定義と拡張に重要である。本報告では、マウスの母子関係や人間と動物、人間とロボット間の親和性を支える神経生理学的メカニズム、特にオキシトシンの役割について説明し、生理学的研究が愛の類型拡大にどう寄与できるかについて議論を展開する。
  • OS03-3
    定量的アプローチを通じた愛の多様性拡大の試み
    招待講演
    山縣 芽生 (同志社大学)
    近年、AIと人間の協調が必要とされ、AIに抽象的な概念を実装することが重要となっている。本研究は、「愛」の抽象概念を定義し、愛のイメージと社会的態度との関連性を検証しおた。具体的には、質問紙調査でオノマトペやピクトグラムを用いて愛のイメージを多角的に測定し、いくつかの愛の種類をクラスターとして抽出しクラスターごとの社会的態度の特徴を調査した。この知見は愛の新たな視座を提案し、愛の類型を拡大することにつながると考えている。
  • OS03-4
    ロボットで愛の原体験をデザインする
    招待講演
    高橋 英之 (ATR / 大阪大学)
    我々はどのように言葉である体験を伝えられても,実際の体験の記憶(原体験)がないと,それを質感の伴った形で想像することができない.そこで人間とロボットの関係性を様々な形でデザインすることにより,人間に様々な原体験を付与することが可能になり,結果として愛の定義が社会の中で拡大していくのではないかと考えている.本発表では,この哲学に基づく人間とロボットの関係性についての研究事例を紹介したい.
  • OS03-5
    予測としての身体と愛
    招待講演
    鈴木 啓介 (北海道大学)
    本講演では、愛という広範な感情が、家族や人類愛から性愛までどのように身体性と結びつくかについて議論したい。具体的には、ラバーバンド錯覚や身体完全同一性障害といった自身の身体認知の偏りが、情動的な経験としてどのように表れ、その結果として愛情や欲望がどのように他者へ向けられるのかについて、身体と認知プロセスの視点から説明を試みる。