9月7日(木) 12:30 - 14:30
オーガナイズドセッション (OS09)
会場:大講義室
認知の能動性 ―ゲシュタルト心理学、環世界、状況依存性‥‥を切り口として
諏訪正樹(慶應義塾大学環境情報学部)
藤井晴行(東京工業大学環境・社会理工学院)
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OS09-1招待講演情報処理モデルに準拠して研究を進めてきた認知科学は,状況に埋め込まれた認知(situated cognition)や身体性の思想の登場によって,研究のありかたを変えつつある.実験室に閉じこもって統制実験をするのではなく,心身を外界に連れ出して初めて生起する認知の能動性をうまく利用して,生きるアクチュアリティに向き合い,新しい知の姿を顕在化させるのがよい.
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OS09-2招待講演ユクスキュルの提唱した環世界は、「生物によって内から生きられている世界」であり、ヒトは他者の環世界を、他者の行動とその他者を取り巻く環境とを手がかりに推測するより他ない。本発表では、ヒトどうしが他者の環世界を推測するときに生じる問題を、他者の指さしの対象を推測する実験によって例証し、他者の環世界に対して曖昧な認知しかもたない状態で、環世界内の対象を指し示すコミュニケーションをいかに行いうるかについて考察する。
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OS09-3招待講演認知の能動性は,表象主義的内心プロセスではなく,むしろリアルな現実の状況で営まれる活動なしは実践であり,この実践/活動からは研究者も逃れることはできない.本稿では,このことを転換するエージェンシー論とパフォーマンス・アプローチにおける近年の展開に基づき議論して,①表象主義に基づく能動性問題そのものが解消されること,②能動性探求に実践的介入的治療的方法が有効となることを論じた.
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OS09-4招待講演ひとは自らの身体を通じて環境を知覚し,また自らの身体とともに環境に働きかける.ひとの生は,身体と環境との間で繰り広げられる無限の知覚–行為循環である.本発表は,この「知覚–行為循環」について,哲学者メルロ゠ポンティの「身体図式」の理論に基づいて考察し,認知の能動性について言及する.
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OS09-5招待講演認知の能動性(能動的インタラクション)を探究するあたり、表象と表象が指し示す実体や概念との関係性をモデル理論的意味論によって捉え、環世界をモデル理論的意味論でいうところの構造として捉える。構造と表象との二項関係に能動的な影響を及ぼすフレームとして図式の概念を導入し、図式を環世界に接地させる運動感覚的イメージ・スキーマの概念を導入する。これらの関係性を研究的実践と実践的研究の経験に基づいて可視化する手法としての写真日記にふれる。