研究分野別一覧
人工知能
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OS05-4公募発表Marrによれば認知モデルを表す階層として計算論とアルゴリズムの水準が区別される.これらの水準は相互に関連しているが,そのつながりは必ずしも明確ではない.そこで本研究では,アルゴリズムの水準の認知モデルを,計算論の観点から検討し,妥当性を付与することを目指す.本報告では,知的好奇心のACT-Rモデルの振る舞いを計算論に基づくベイジアンネットワークを用いて分析した.その結果,知的好奇心の仮説とACT-Rモデル間で整合する特徴が現れた.
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P1-13F本研究では,CNNを用いて顔の魅力度を予測するモデルを構築し,CNNにおける予測判断の根拠を可視化するのに優れたGradient-weighted class activation mapping(Grad-CAM)の手法による顔魅力要因の調査を行った.その結果,抽出された特徴から,性差による違いと心理学研究における知見とのいくつかの共通点が確認された.
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P1-14F他者の行動を読み合う認知プロセスは十分に明らかになっていない。これを明らかにするには、認知プロセスを詳細に記述するモデルが必要である。本研究では、認知アーキテクチャACT-Rを用いて模倣や部分一致に関する様々な条件の認知モデルを構築し、行動の探り合いが発生するカードゲームをプレイさせた。その結果から、模倣戦略は行動の読み合いを再現するという可能性が示唆された。
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P1-16自然言語処理により,新聞記事に対する読み手の感情と重要性を自動推定するシステムを構築した。はじめに新聞記事の重要性ならびに感情指標に関し,各々2000記事,40000記事からなるオリジナルのデータセットを構築した。続いて深層ニューラルネットワークの先端モデルの一種であるBERTをベースに,記事に対する各心理指標の分類課題を行った結果,重要性推定の精度は65%とおおよそに実用可能な水準に達した。
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P2-11F計算機により生成された俳句に対する季語を中心とした単語関連度に基づく評価機構について検討した.まず,現代俳句データベースを用いてSeqGANの学習を行い,季節情報を付与された俳句生成が可能なシステムを開発した.生成された俳句に対し,季語及び構成語の関連度を推定し,評価実験で得られた俳句の良さに関する評定値との関係を分析した.その結果,意味の理解しやすい句において季語と対立語の関連度が低いほど良い俳句であると評価される傾向が示唆された.
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P2-12本稿は,ストーリーの構造にストーリー生成の仕組みが内包されたモデルを提案する.そのモデルを生成システムとしてのストーリーと呼ぶ.提案モデルでは二つの生成が実行される.一つは,提案モデルが持つストーリーを外部から編集する生成であり,もう一つは閾値に基づき駆動される,ストーリーの内側からストーリーを編集する手続きである.ここでは色付けと呼ぶ技法を使って,提案モデルにおけるストーリー生成の例を検討する.
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P2-24F本研究は,対話エージェントの外見属性が機微情報開示に与える影響を明らかにすることを目的とし,インターネット調査を実施した.結果として,外見属性の中で,状況と合致した社会的役割が開示に最も影響を持つことを確認した.調査では,年齢や性別,社会的役割といった外見属性を変化させた対話エージェントを質問項目とともに表示させ,実験協力者が感じたストレスをアンケートで取得した.
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P2-25基本的な感情に対して普遍的で固有の表情が対応づくと報告されているものの,東洋人での検証は不十分であった.本研究では,加齢を考慮し30代以上の日本人を対象とし,写真条件とシナリオ条件それぞれでの感情と表情の関係を分析した.その結果,写真条件では幸福,驚き,及び悲しみにおいて特定の表情が,シナリオ条件では幸福のみが特定の表情と対応づいた.幸福において,個人差が大きく,感情理解力の自己評価が高い人は特定の表情と対応づかない傾向が示唆された.
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P2-26F人は様々なパターンから規則性を見出す傾向がある.パターンの良さやパターン対の類似度に対する人の判断を説明する理論に変換群構造説がある.この理論は,パターンが持つ変換群構造によってパターンの良さや類似度を予測する仮説である.本研究では,先行研究で報告されていないパターンに対しても仮説が成立するか追試実験により検証を行った.加えて,元の仮説を修正した新たな二つの仮説を検証し,より好意的な結果が得られた.
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P2-35人間がロボットの心や社会性を理解できれば,ロボットと人間は長期的な関係を持てるようになるだろう.本論文は,長期的な関係を維持するために, 新しい概念を生み出す思考の一つである概念融合を促すロボットと人の間の対話を提案する.この対話は2つの概念についての説明と概念を結合したものについての説明が含まれている.本稿ではこの対話の効果を検討する実験の計画を示す.
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P2-56F歌舞伎舞踊『京鹿子娘道成寺』は道成寺伝説の後日譚であるが、道成寺伝説のストーリーを直接表現しているわけではない。しかし、隠れた対応関係が多く見られることに筆者らは気付いた。そこで、「心」・「振り」・「歌詞」の三つをキーとして二つの物語の対応関係の分析を行い、その結果に基づき、独自に開発した『京鹿子娘道成寺』の2Dアニメーションシステムを利用して『京鹿子娘道成寺』と道成寺伝説とを結合する新しいシステムの方法を提案する。
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P2-58東日本大震災時に撮影された動画の分析で発見さ れた,二つの避難行動が出口からの距離によって分れ る現象において,エージェントの個性,同調行動中の エージェント間の関係,さらに避難中のエージェント の動的な行動特性などが群衆避難行動に与える影響に ついて分析した.その結果,個々のエージェントに着 目したアプローチには限界があり,集団のダイナミク ス全体に介入するようなアプローチが求められるとの 示唆を得た.
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P2-63人と機械のインタラクションで実現が困難なことの1つに,ターンテイキングと呼ばれる主従関係の自然な入れ替わりがある.我々は,モニター越しに球の移動を介して他者あるいは計算機とインタラクションする実験室実験を実施し,相手とのインタラクション視点が三人称から一人称に変わることによる,人と計算機の識別率の違いを調べた.結果,一人称視点は計算機が示す主従関係に人を合わせやすくする効果があることを示唆する結果を得た.