研究分野

社会心理

  • P1-001A
    山縣 芽生 (同志社大学)
    高橋 英之 (ATR / 大阪大学)
    本研究では,既存コミュニティの構成員とコミュニティへの新参者の間で,それぞれがそれまでに有してきた異なる規範が同化していく過程を明らかにするため,このような状況を単純化したコンピュータ上でbotと行う課題を作成し,予備的な実験を行った。その結果,この課題を用いることで,既存コミュニティの構成員と新参者の規範が同化していく過程とその多様性が定量的に分析できることが示唆された。
  • P1-003A
    孟 憲巍 (名古屋大学大学院情報学研究科)
    千々岩 眸 (大阪大学大学院人間科学研究科)
    鹿子木 康弘 (大阪大学大学院人間科学研究科)
    近年,社会的地位の階層性を維持する心理的基盤として,ヒトが高い能力の持ち主に社会的優位性を帰属する認知バイアスを持っているという「能力・地位仮説」が注目されつつある.本研究は,事前登録された3 つの実験を通して,この認知バイアスが前言語期の乳児にみられることを示した.また,「能力・地位仮説」における能力の必要条件として,潜在能力と結果の両方が必要ということを提示した.
  • P1-039A
    Mujun QIN (北陸先端科学技術大学院大学)
    橋本 敬 (北陸先端科学技術大学院大学)
    個人と集団のアンマッチで生じる疎外感は,個性や創造性の顕れと見ることもできるため,疎外感の受容は個人に肯定的な影響を持つ可能性がある.本研究は,疎外感に連なる個人の性質に関わる自己肯定感が疎外感とその受容に影響するかを検証する.予備実験では,先行研究で示された自伝的記憶の想起による自己肯定感の上昇が再現できなかった.また,想起前後で疎外感に有意差が生じたが,疎外感受容度に有意な変化がなかった.自伝的記憶の想起課題を再検討する必要がある.
  • P1-043
    西垣 勇我 (関西大学)
    内川 乃天 (関西大学)
    岡村 敬 (関西大学)
    郭 雯 (九州大学)
    池田 鮎美 (北海道大学)
    高嶋 魁人 (九州大学)
    佐々木 恭志郎 (関西大学)
    山田 祐樹 (九州大学)
    自分と他者の持ち物の間にもパーソナルスペース(personal space: PS)の様なものが存在する(拡張的PS).本研究では手指消毒によって拡張的PSが変調されるかを検討した.実験では,サクラと参加者に長机に荷物を置くように求めた.サクラが参加者の前で手指消毒を行う条件と手指消毒を行わない条件を設けた.荷物間の最短距離を測定したところ,条件間で有意な差は見られなかった.ゆえに,手指消毒が拡張的PSに顕著な影響を与えるとは言えない.
  • P1-046A
    野崎 優樹 (甲南大学)
    本研究では,情動への信念と他者の情動を調整する際の方略選択との関連を検討した。実験では,参加者は,ネガティブ情動を感じた出来事と気持ちが書かれた文章を読み,「気晴らし」か「再評価」のどちらを用いて相手のネガティブ情動を和らげるかを選択した。分析の結果,相手のネガティブ情動の強度が相対的に低いとき,情動への信念のうち「ポジティブ情動に対する有用性の信念」が高いほど,有意に「再評価」を選ぶ傾向が示された。
  • P1-067
    神岡 拓真 (立命館大学)
    布山 美慕 (立命館大学)
    本研究では,恋愛感情の特徴づけの一歩として,自己 肯定感,対人関係など複数の要素を含む感情としての 安心感と恋愛感情の相関を分析した.先行研究の恋愛 感情と安心感に関する尺度を用いてアンケート調査を 実施した.調査の結果,安心感は「他者,社会へのはた らきかけに対する自信」,「自己肯定感と自己受容」「恋 愛に対する感情の安定性」という 3 つの要素で恋愛感 情に関係していることが示唆された.
  • P2-020
    中村 太戯留 (武蔵野大学)
    ユーモア理解においては,ヒトの生存と関連性のある事柄の見いだしと,その事柄を見いだしたヒトを保護するフレームの2つが重要であると,ユーモア理解の「見いだし」理論では考えられている.優越理論,エネルギー理論,そして不調和解消理論などの他の理論で提案されてきた概念は,この2つに発展的に統合できる可能性が考えられる.本研究では,ユーモアの事例を参照しつつ,この2つの概念装置を用いた説明可能性について検討する.
  • P2-025
    東 美由紀 (明治大学研究・知財戦略機構)
    島田 真希 (明治大学大学院理工学研究科)
    嶋田 総太郎 (明治大学理工学部)
    近年,応援に関連する言葉として「推し」という概念が一般的に受け入れられるようになってきた.両者はどちらもプロジェクションのプロセスを含むが,その関連については検討の余地がある.本研究では,個人の応援傾向による分類を元に,「推し」の有無と応援行動の調査を行った.その結果,個人の応援傾向によって「推し」の有無および応援行動の特徴が異なり,応援傾向の高さと「推し」が必ずしも同一のものではない可能性が示された.
  • P2-032
    桑原 光輝 (明治大学大学院理工学研究科)
    嶋田 総太郎 (明治大学理工学部)
    我々は他者と経験や感情を共有することで,信頼関係を構築し,集団生活を送っている.他者との関わりの最中には,他者との間に脳波や瞬時心拍数の変化といった生理信号の同期が確認されている.本研究では,2人でお笑い映像を視聴している時に,喚起される感情および瞬時心拍数の変化の同期現象を検証した.その結果,2人で視聴する方が映像はより面白く感じられること,2人での映像視聴中は2者間の瞬時心拍数変化の同期が高まっていることが示された.
  • P2-033
    岩橋 直人 (岡山県立大学)
    笹倉 晴景 (岡山県立大学)
    古家 祐介 (岡山県立大学)
    樫本 幸八 (岡山県立大学)
    趙 敏廷 (岡山県立大学)
    坂野 純子 (岡山県立大学)
    他者との協力は人間の最も重要な特徴のひとつである.協力参加者のパーソナリティは自身の行動と認知に影響を与え,認知と行動は互いに影響し合い,行動はインタラクションを通して協力相手の行動と認知にも影響を与える.本研究は,著者らが開発した協力の数理モデルとマルチエージェント行動シミュレータRoCoCoを使用することにより,協力行為におけるパーソナリティと認知および行動の個人内および個人間での顕著な作用関係を明らかにした.
  • P2-044A
    井坂 匡希 (同志社大学大学院文化情報学研究科)
    谷本 花 (同志社大学文化情報学部)
    坂本 晶子 (ワコール人間科学開発センター)
    阪田 真己子 (同志社大学文化情報学部)
    人が「自己」を評価する際には、それが自己に深く関わるものであるため、自尊感情や性別といった要素に影響され、客観的な評価が困難な可能性がある。本研究では外見的特徴を排除したスティックフィギュアの歩行アニメーションを使用し、その動作主を他者と想定している際と自己と想定している際に評価に差異が生じるかどうかを検証した。結果、同じ歩行アニメーションに対する評価であるにも関わらず、自尊感情の低い人や女性では自己想定の際に評価が低下した。
  • P2-047
    城 真範 (産総研)
    浅野 健一郎 (産総研)
    木村 健太 (産総研)
    佐藤 洋 (産総研)
    本報告では、個人によって異なる多様な主観的認知から得られた統計に一定程度の客観性、汎化性を持たせるための、アンケートのデザインと結果の提示方法における一つの指針を提案する。仮想的な例を使って構成したアンケートの例を示す。
  • P2-054
    寺田 和憲 (岐阜大学)
    長谷川 智大 (岐阜大学)
    Celso M. de Melo (DEVCOM ARL)
    Francisco C. Santos (Universidade de Lisboa)
    非ゼロ和ゲーム的社会においては,搾取者(悪人)を避けながら協力者(善人)と良好な関係を構築することが重要な課題であるが,その認知計算については未知である.本研究では,人が社会的価値志向性を生成モデルとして用い,観察した相手の行動から相手の性格の善悪をベイズ推論し,新規状況で相手の行動の善悪を予測し,合理的な意思決定ができることを実験(n=372)によって確かめた.
  • P2-065
    山田 歩 (滋賀県立大学)
    木戸 柚果 (滋賀県立大学)
    古木 一朗 (三菱電機株式会社)
    椿 泰範 (三菱電機株式会社)
    橋口 拓弥 (三菱電機株式会社)
    橘温 希 (三菱電機株式会社)
    歩きスマホは事故やトラブルを招く社会問題となっている.しかし,現状の啓発活動では十分に抑止できていない.本研究はナッジ理論に基づき,歩きスマホを防止するパーソナル・ナッジを開発した.デジタルサイネージを用いて「歩きスマホ者」と「非歩きスマホ者」で異なる内容の映像提示を行う介入実験を現実空間で実施し,大きな抑止効果を確認した.
  • P2-068A
    大貫 祐大郎 (一橋大学)
    大瀧 友里奈 (一橋大学)
    植田 一博 (東京大学)
    先行研究では,自己が所有していない物よりも,自己の所有物の方が,より高い価値があると判断する所有効果が確認されている.しかし, 物を手放すか受け取るか (損失と利得) の交絡を除いた状況における他者の所有物への評価は,十分に検討されていない.そこで,本研究では,所有者の違い(自己と他者)が,物の評価に与える影響を検討した.結果,自己の所有物の価値よりも,他者の所有物の価値の方が高いと予想する「隣の芝生は青い」バイアスの存在を示唆できた.
  • P3-004A
    Ruolan LING (Department of General Systems Studies, Graduate School of Arts and Sciences, The University of Tokyo)
    Reiko MATSUNAKA (Department of General Systems Studies, Graduate School of Arts and Sciences, The University of Tokyo)
    Kazuo HIRAKI (Department of General Systems Studies, Graduate School of Arts and Sciences, The University of Tokyo)
    This study delves into the cognitive abilities of preverbal infants in understanding abstract rules and their capacity to exhibit rule-compliant behavior, employing a novel experimental technique called gaze contingency. Within an environment where stimuli could be interpreted through either numerical or shape matching, providing explicit rule instructions became imperative. Infants were divided into two distinct groups, namely Self-learning and Guided-learning, based on the way that infants gained the instruction and learned the rules. Our results suggest that preverbal infants possess the ability to grasp abstract rules and that guided teaching significantly enhances their aptitude for comprehending and adhering to rules effectively.
  • P3-017A
    楊 文通 (名古屋大学)
    松林 翔太 (名古屋大学)
    三輪 和久 (名古屋大学)
    心理学では,運の知覚と運の信念に着目した研究が行われてきた。運の信念は,さらに,BILとPLによって構成されている。しかし,運の信念が運の知覚にどのような影響を及ぼすかについては,まだ十分に検討されていない。人の能力と運の知覚に関する関係も明確になっていない。本研究では,運の信念と能力が,運の知覚に与える影響について検討した。実験の結果は, BILと相手の能力が運の知覚に正の影響を与えることが確認された。
  • P3-020
    松田 憲 (北九州市立大学)
    杉浦 由奈 (北九州市立大学)
    楠見 孝 (京都大学)
    本研究は,ブーバ/キキ効果におけるブーバ図形とキキ図形を参加者に繰り返し視覚呈示することで,呈示刺激の外見的特徴が単純接触効果の生起に及ぼす影響を検討した.実験の結果,反復呈示によってブーバとキキの両図形への親近性は上昇した一方で危険度は低下しなかった.キキ図形への危険度認知は一貫してブーバ図形よりも高く,安心感の上昇はブーバ図形のみで見られた.視覚刺激の反復呈示による単純接触効果はブーバ図形のみで生じ,キキ図形では生じなかった.
  • P3-023
    徐 きょう哲 (弘前大学)
    新川 広樹 (弘前大学)
    松香 敏彦 (千葉大学)
    本研究では、顔の機械学習で一般的に使用されるランドマークで表現された顔の動画刺激を使用し、人がどの程度表情を認識できるか検討した。刺激として、あらかじめ6種類の表情の動画を68個の特徴点に変換したものを使用した。実験では意識的な観察行動を記録するため、マウスのカーソルの周辺の一部しか見えないように設定した。分析の結果、人々はポジティブな表情に対しては機械学習と同様に高い精度で認識できることがわかった。
  • P3-030A
    笠原 千聖 (同志社大学大学院 文化情報学研究科)
    阪田 真己子 (同志社大学文化情報学部)
    我が国が目指すべき未来社会の姿としてSocity5.0が提唱され,今後アバタを用いたインタラクションが日常として根付くことが予測される.本研究では,他者が自分に対して抱く印象を操作する自己呈示に着目し,各人がアバタを用いて,どのような意図で印象を調整するのか,また,その印象操作の意図は他者に伝達するのかについて検討した.その結果,個人属性によって,アバタを作成する際の印象意図が異なり,他者に印象意図が伝達する要素が明らかになった.
  • P3-049
    川俣 亮悟 (明治大学大学院理工学研究科)
    世良 菜那見 (明治大学大学院理工学研究科)
    肥後 克己 (明治大学研究・知財戦略機構)
    萩原 隆義 (慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科)
    田中 由浩 (名古屋工業大学)
    嶋田 総太郎 (明治大学理工学部)
    私たちは日々の生活の中で他者とインタラクションしながら生活している.その中で,他者と共に何か行った際に,「この運動は,われわれが引き起こした」という感覚を共同運動主体感と呼ぶ. 本研究ではロボットアームを2人で操作した際の共同運動主体感ついて調査した.操作方法としてそれぞれが異なる役割を担う役割分担条件と2人の操作を50%ずつ反映させる操作融合条件を設けた.その結果,役割分担条件と操作融合条件の両方で共同運動主体感の生起が示された.