研究分野

記憶

  • P-1-8A
    丹羽 晴香 (大阪公立大学大学院)
    月元 敬 (岐阜大学)
    本研究は,利き手の拘束が,利き手側に持ち手のある物体の長期記憶に与える影響を検証した.実験の結果,右利きの参加者では,利き手拘束条件において,利き手側に持ち手のある物体が,非利き手側に持ち手のある物体よりも多く想起できることが示された.これは不十分な手の拘束によるものだと考えられ,運動による記憶干渉効果を検証する実験において,適切な運動妨害や認知負荷を与えることの重要性について考察した.
  • P-1-24A
    渡辺 裕生 (大和大学保健医療学部)
    瀬川 大 (大和大学保健医療学部)
    服部 雅史 (立命館大学総合心理学部)
    軽度認知障害(MCI)の認知機能が低下している項目を健常群と比較検討した.また,手順記憶と実演を組み合わせた手順記憶実演課題を作成し,MCIスクリーニングへの活用可能性について検討した結果,MCI群では記憶項目だけではなく実行機能の項目でも低下を認めた.MoCA-J による分類結果を正解としたときの評価指標(AUC)は,手順記憶実演課題の「条件」で高い値が得られることから,この課題がMCIのスクリーニングに活用できる可能性が示された.
  • P-1-33A
    西東 理花 (早稲田大学)
    堀田 浩司 (早稲田大学)
    関根 和生 (早稲田大学人間科学学術院 人間科学部)
    自分の手で自分自身の身体に触れる行為は,自己接触行動と呼ばれている。本研究は,自己接触行動が語彙検索を促進させるかについて検討した。実験参加者を統制群,自己接触群(課題中手で頬に触れてもらう群),抑制群(ジェスチャーができない群)に分け,語彙検索課題と再生課題を行った。その結果,自己接触行動は語彙検索を促進させることが明らかになったが,TOT 状態に陥った際には,自己接触行動は影響を及ぼしていないことが明らかになった。
  • P-1-46A
    塚村 祐希 (東京大学,日本学術振興会)
    岡田 謙介 (東京大学)
    言語隠蔽効果とは,記銘した顔について言語的に説明することが,後の再認を妨害する効果のことである.本研究では,刺激セットの類似性が言語隠蔽効果に与える影響を調べるため,画像生成モデルを使用して顔画像を作成し,実験を行った.その結果,言語的に類似した刺激セットでのみ言語隠蔽効果が観察された.この結果は,与えられた刺激からの言語隠蔽効果の予測に貢献すると考えられる.
  • P-1-56A
    中分 遥 (北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科)
    佐藤 浩輔 (株式会社バンダイナムコ研究所・筑波大学理工情報生命学術院)
    中分・佐藤・五十里(2022)に続き,儀礼的行為における系列長さの効果を検討するための実験を行った.2種類の行動からなる長さ5までの刺激系列を用意し,実験参加者に儀式としての効能や複雑性といった側面を評価させた.結果は,系列の長さは効能・重要度・複雑性に強く影響を与えており,ランレングス長はすべての側面に影響を与えていた.回文や反復といった特徴は複雑性や規則性の評価に関連していた.現実の儀式の分析への応用可能性について議論する.
  • P-2-12
    正田 悠 (京都市立芸術大学)
    安田 晶子 (一橋大学)
    上宮 愛 (金沢大学)
    祐伯 敦史 (立命館大学)
    伊坂 忠夫 (立命館大学)
    人がいかなる出来事に感動するのか,その特徴を探索するため,日本語を母語とする者9,529人分の「人生で最も感動した出来事」に関するエピソード記述を計量的に分析した。トピックモデル(潜在ディリクレ配分法)により,「人生で最も感動した出来事」は,出産や家族,恋愛,仕事など,対人関係に関することから,音楽やスポーツ,自然,受験といった個別の対象を含む,多様なトピックと関わることが示された。
  • P-2-17
    藤井 佑実子 (筑波大学)
    森田 ひろみ (筑波大学)
    携帯型情報端末で画像を見る際には画像を動かしながら小さな画面内で断片ごとに見るため、画像内の物体位置を知覚するのが困難になる可能性が考えられる。本研究では心理学実験を用いて、スクロール表示された画像内の物体間の相対位置の符号化特性を明らかにすることを目的とした。実験の結果、スクロール表示による位置の符号化の正確さについて、物体間の方向関係の誤差は全体視に比べて大きいが、距離の誤差は小さいことが示唆された。
  • P-2-33
    本名 貴喜 (北陸先端科学技術大学院大学)
    日髙 昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    先天的に書字機能に困難を抱える書字障害者は日本国内で最低でも 6%は存在すると想定されている.しかし障害の発生要因や診断基準などは不明確であり症状の明確な定義もなされていない.本研究では漢字「要素」と「構造」ごとの想起を対象に書字障害者の漢字想起のエラー特徴の抽出を行い一群の書字障害の症状の定義の構築を目指す.
  • P-2-38
    光田 基郎 (私立大学 非常勤講師)
    学生に「欺かれた振りで報復」と「誤解」が主題の絵本各1件を画面で読み聞かせ, 2次的誤信念内容の理解技能を示す実験である。その技能として(a)真実と誤信念内容の対比及び真実の抑制,(b)息子が欺かれた振りで「服毒自殺を偽装」の報復を描く絵本の文章構造理解,(c)類推の下位技能となる真実と誤信念内容の対比)(d)作業台となる作業記憶の負荷,特に(e)下記の方法1に示す様に誤信念理解における後知恵に対処する際の情報処理負荷増加を指摘した。
  • P-2-58A
    岩根 榛花 (筑波大学,日本学術振興会)
    椎葉 黎 (筑波大学)
    原田 悦子 (筑波大学,株式会社イデアラボ)
    現状のオンラインストアでは,カテゴリラベルを用いた探索が求められ,実店舗の商品探索と異なる体験がもたらされる.この体験の異なりは,買い物の楽しさを変化させ,高齢者における商品探索の障壁となりえる.そこで本研究では,実店舗の商品探索に近い買い物体験のために,店舗の俯瞰地図型のオンラインストアを考案し,有効性について検討した.その結果,地図型の有効性は必ずしも確認されなかったが,実店舗での商品探索に類似した行動が観察された.
  • P-3-19
    宮代 こずゑ (宇都宮大学共同教育学部)
    白戸 陽菜 (宇都宮大学卒業生)
    本研究は大学生を対象として,におい刺激の快-不快と,におい刺激を手掛かりとして想起された自伝的記憶の情動性の関連に焦点を当て,実験を行った.その結果,プルースト効果は見られなかったものの,5つのにおい刺激のうち,固形ハッカ,コーヒー豆,カレー粉,および制汗剤において,においがもたらす快感情が肯定的感情に関連した自伝的記憶の想起を引き起こしていたこと,すなわち気分一致効果の生起が示唆された.
  • P-3-29
    大石 充希 (立命館大学大学院人間科学研究科)
    林  勇吾 (立命館大学総合心理学部)
    近年,長期記憶において瞳孔反応が課題に依存することが確認されている.しかし,この課題依存性の原因である検索の違い(ボトムアップとトップダウン)に関する検討は十分でない.本研究では両検索を促すことができるfan課題に着目し,トップダウン検索における情報量の多さに対する瞳孔反応を検討した.結果として,情報量の多さに対する認知負荷により瞳孔が散大した.今後は,ボトムアップ検索で検討された瞳孔散大を本研究手法から調べていく.
  • P-3-34A
    佐々木 健矢 (静岡大学)
    森田 純哉 (静岡大学)
    近年ではSNS (Social Networking Service)上におけるフェイクニュースの拡散や意見の分極化などが問題視されている.一つの原因として,小さな閉じた社会での意見の偏りが挙げられる.本研究では,これをローカルエコーチェンバーと呼び,その性質を理解するため,IBLT (Instance Base Learning Theory)に基づいて,ローカルエコーチェンバーの形成と,フェイクニュース拡散のシミュレーションを行う.
  • P-3-42A
    新堀 耕平 (静岡大学)
    森田 純哉 (静岡大学)
    個々の人間には固有の記憶の傾向があり,日常生活において様々なエラーを引き起こす.本研究では,エラーを引き起こす特定の個人属性や感情状態を表現するモデルパラメータを,データから推定する手法を検討する.モデルパラメータの推定手法には複数のものが存在する.本論文では,ACT-Rのパラメータを推定する手法として,勾配法に基づくものと最尤法に基づくものを比較し,両者の差異を比較検討する.
  • P-3-45A
    瀬島 章仁 (東京電機大学大学院理工学研究科情報学専攻)
    小林 春美 (東京電機大学理工学部理工学科情報システムデザイン学系)
    安田 哲也 (東京大学大学院総合文化研究科)
    本研究は,ニュース映像でアナウンサーを務めるアバターの口の動きと顔の向きが,視聴者に与える印象やニュース内容の認知に及ぼす効果を調べた.異なる4つの条件でアバターが映った刺激動画が提示され,理解度と好感度に関する質問紙調査を行った.結果,アバターの口の動きがある場合,参加者は動画をより理解したと考えやすかった.さらに,アバターの顔方向がニュース映像の方に動くと,参加者はアバターにより注意を向けていた.