研究分野

視覚・聴覚・音声

  • OS05-5
    公募発表
    八木 裕子 (東洋大学)
    細馬 宏通 (早稲田大学)
    本研究は,介護関係を通して展開されるホームヘルプサービスにおける認知症高齢者の利用者とヘルパーとの相互行為に着目し,ホームヘルパーの専門性に資する何らかの方法を見つけることを目的とした.その結果,ヘルパーは発話だけでなく,さまざまな身体動作の手がかりを使いながら,注意の分散に関する障害がみられる利用者に対して,特定の対象へと誘導し,それを維持させながら,利用者の主体性の醸成を工夫していることが明らかになった.
  • O3-001A
    佐藤 優太郎 (名古屋市立大学芸術工学研究科)
    齋藤 五大 (東北大学電気通信研究所)
    小鷹 研理 (名古屋市立大学芸術工学研究科)
    身体変形錯覚には指の長さ変形に関するものが多数存在するが,幅変形の報告は限られる.このことは,指の長さ変形は幅変形よりも優勢に起こることを示唆する.本研究ではこれを検証するべく,自他の指に同期的に触れることで,選択的な指変形感を生起するdouble-touch illusionを用いて,固有感覚ドリフト計測に基づく指変形距離を比較した.結果,指変形は幅よりも長さ方向に優勢に生起し,このことには指の関節配置が関係することが示唆された.
  • O3-003
    土居 裕和 (長岡技術科学大学)
    小俣 貴宣 (ソニーグループ株式会社)
    栗原 貴之 (ソニー株式会社)
    山岸 和子 (ソニーグループ株式会社)
    柏井 美貴子 (長岡技術科学大学)
    植田 一博 (東京大学)
    行為者は, 実物体に働きかけ, それを操作することができる. 本研究では, このような実物体の「行為可能性」の認知と自律神経活動との関連性を, フランカー課題と ECG計測を併用して検証した. その結果, 呈示刺激の「行為可能性」が高い条件でのみ, 刺激物体に対する反応と自律神経活動との間に関連性がみられた. この結果は, 実物体認知と, その表象(二次元画像等)の認知には, 異なる処理過程が関与する可能性を示唆している.
  • P1-004
    ギエム ゴック チャム (法政大学大学院)
    川﨑 貴子 (法政大学)
    田中 邦佳 (法政大学)
    本研究ではベトナム人日本語L2学習者が日本語の歯擦音を学習する際、母語の方言と習得レベルがどのように影響するかを調査するため、発話実験を行った.北部・南部方言話者の両方で日本語の歯擦音は区別されていた.しかし、南部方言の初級学習者の一部では、区別が獲得できていないケースも見られた.実験の結果、上級学習者は習得レベルが高まるにつれて、日本語の歯擦音を明確に区別することができるようになることが示された.
  • P1-010
    山本 寿子 (東京女子大学・立命館大学)
    小川 浩平 (名古屋大学)
    窪田 智徳 (名古屋大学)
    勝間 萌衣 (東京女子大学)
    山﨑 美鈴 (東京女子大学)
    港 隆史 (理化学研究所)
    石黒 浩 (大阪大学)
    田中 章浩 (東京女子大学)
    本研究では,異なる基本感情を視聴覚で組み合わせることで高次感情が知覚されるか,文脈に応じて異なる高次感情が知覚されるかについて,アンドロイドロボットを用いて検討した.対話中にアンドロイドが表現した感情を評定する実験の結果,恐怖の身体表現と悲しみ声の組み合わせから高次感情「恥」が知覚された.一方,文脈の違いで読み取られる高次感情に違いはみられないことが示された.またこの結果からアンドロイドロボットが高次感情をも表現できることも示唆された.
  • P1-019
    川﨑 貴子 (法政大学)
    田中 邦佳 (法政大学)
    ギエム ゴック チャム (法政大学大学院)
    本論文では、2つの無声歯擦音をL1に持つベトナム語話者が、日本語の ɕ を習得する際、母語音との区別はどうなされるのかを音響的に調査した。ベトナム語話者は、2つの歯擦音をCoG により区別するが、日本語にあるɕ はベトナム語の2音とは異なるF2の値を示す。ベトナム語を母語とする学習者の発話を分析したところ、母語にはF2で区別される歯擦音が無いベトナム語母語話者は日本語の歯擦音の発音においても、CoGのみで区別していることが示唆された.
  • P1-020A
    北川 浩行 (電気通信大学)
    粕谷 美里 (電気通信大学)
    阿部 香澄 (電気通信大学)
    中村 友昭 (電気通信大学)
    鷲尾 宏太 (トヨタ自動車株式会社)
    真鍋 周平 (トヨタ自動車株式会社)
    自動車事故防止のため,運転者の意識に焦点を当てた対策が考えられる.本研究では,運転者に安全運転の持続的な意識付けを促すリアルタイムフィードバックシステムの実現を目指す.その第一段階として,急ブレーキを対象に,危険運転を指摘する画像の印象を検証した.本発表では,脳活動を指標に,複数の画像間で比較検証した結果を報告する.実験の結果,指摘画像の中で脳が不快感を感じづらい可能性のある画像が明らかとなり,運転気質と関連している可能性が示された.
  • P1-023A
    韓 旼池 (京都大学大学院)
    日常のコミュニケーションでは標準的な発話音声から逸脱した発話音声が現れうる.本発表では,母音の(非語彙的な)延伸を題材に,逸脱した発話音声の規則性を追究する.音声・音韻・統語的な要因による延伸の生起位置の傾向を観察する.観察対象は,生起位置のパターンが目立つ強度強調の母音の延伸である.母音の延伸の生起パターンの存在,声の高低と独立した母音の延伸,統語的な要因に左右される延伸の位置について述べる.
  • P1-026A
    石原 由貴 (金沢工業大学)
    体験者自身の能動的な運動意思が伸縮錯覚の強度にどのような影響を及ぼすのか明らかにするため, 身体部位に対する受動的・能動的伸縮の提示条件を比較した. 結果, 主観評価においては伸縮が能動的/受動的に行われるかどうか, また伸縮を予期させる身体所作による入力であるかに関わらず, 指の伸縮イメージを視覚的に提示することで, 一定程度の伸縮錯覚の誘起が為されることが示唆された.
  • P1-032A
    森本 優洸聖 (大阪府立大学 人間社会システム科学研究科)
    牧岡 省吾 (大阪公立大学 現代システム科学研究科)
    系列依存性は,直前の情報によって知覚や判断が変化する現象である.本研究は,系列依存性が形の判別において生じるかを追試した.また従来の刺激の主観的等価点での分析に加えて反応時間分析を行い,系列依存性が反応時間に影響するも検討した. その結果,形の判別の系列依存性が確認された.また反応時間においても系列依存性が確認された.これらは過去の刺激の影響が刺激の判別に関する基準点そのものに影響することを示唆している.
  • P1-033
    望月 正哉 (日本大学)
    太田 直斗 (名古屋大学)
    本研究では,形容詞の情動価と7つの観点に関する感覚強度を収集することで,感覚強度が抽象性にどのように寄与するのかを探索的に検討した.その結果,聴覚の強度と抽象度の間に有意な正の相関がみられたほか,特定の感覚への関与を示す度合いが低い,すなわち複数の感覚への関与度が高い形容詞の抽象度は高かった.本稿では,さらに抽象度と感覚情報の関連について議論する.
  • P1-038A
    畑 美緒 (早稲田大学)
    加藤 麻樹 (早稲田大学人間科学学術院)
    三嶋 博之 (早稲田大学)
    観察者の移動から生じるGOFと対象の移動から生じるLOFが視覚的探索に与える影響について,実験1では一重のリング状のLOFを,実験2では球状のLOFを使用しLOFの肌理の違いの効果を検討した.また実験2でGOFの速度が変化する効果について検討した.その結果,一重のリング状のLOFはその輪郭あるいは外側に,球状のLOFはその輪郭に視線を誘導する可能性が示唆され,GOFの速度が上がると視覚探索の反応時間が長くなる可能性が示唆された.
  • P1-044
    大槻 大槻 (福島工業高等専門学校)
    小泉 康一 (福島工業高等専門学校)
    縦格子を通して,地面や制御されたドット平面を自然に両眼視すると,波打った地面,立体縞模様,トーラスなどの立体錯視像が得られる. 本研究では,この縦格子による錯視像に近い錯視像を別の方法で脳内に再構成する方法を2つ提案する. 1つは3Dステレオグラムによる方法,もうひとつは色立体視による方法である.
  • P1-045
    伊東 俊輔 (電気通信大学大学院情報理工学研究科情報学専攻)
    鈴木 雄登 (電気通信大学大学院情報理工学研究科情報学専攻)
    松倉 悠 (電気通信大学大学院情報理工学研究科情報学専攻)
    坂本 真樹 (電気通信大学大学院情報理工学研究科情報学専攻)
    近年,照明の光源の種類や照度と雰囲気の関係を調べた研究や色と人間の感情状態の変化に関する研究が行われている.一方で,照明の色の違いと雰囲気を紐づけた研究はまだ少ない.本研究では,照明が雰囲気に及ぼす影響について研究する.トークテーマと照明を各4種類,計16パターンにちて約24時間分の会話データを取得し,各データについて形容詞対4尺度を用いて評価付けを行った.評価データを分析したところ,雰囲気に大きく影響を与える照明が確認できた.
  • P1-047
    林 美都子 (北海道教育大学教育学部函館校)
    本研究では,「F」並びに「F」に頭部を添えた記号を作成し,大学生 71 名の協力を得て心的回転実験を行った。正答した項目に関する反応時間を,項目(F 文字・F 擬人化記号)×性別(男性・女性)×回転角度(0度から340度まで20度刻み)の三要因混合分散分析の結果,項目と性別間で交互作用が確認された。男性では統計的に有意な差はなかったが,女性では F 文字より F 擬人化記号の反応時間は短いことが有意傾向で示された。
  • P2-004
    曹 昂 (東京大学総合文化研究科広域科学専攻)
    植田 一博 (東京大学)
    This study retests the "2-step" hypothesis and the "rainbow-like" theory concerning pitch class-color synesthesia, as proposed by Itoh et al. (2017). The findings of this study suggest that the 2-step hypothesis may have limited applicability, as it can only account for a subset of individuals with pitch class-color synesthesia. Additionally, there may exist 1-step synesthetes, whose synesthetic experiences may be governed by a different mechanism. The variation in mechanisms is likely influenced by the different ways in which synesthetes form their associations. Furthermore, the "rainbow-like" theory may only represent the experiences of 2-step synesthetes. The color perception of 1-step synesthetes deviates from the description of a rainbow-like pattern.
  • P2-013
    横田 陽生 (筑波大学)
    原田 悦子 (筑波大学)
    國部 雅大 (筑波大学)
    小井土 正亮 (筑波大学)
    本研究は,サッカーにおける認知的疲労についての 基礎的知見と,適切な測定指標に関する情報を得るこ とを目的として,単一事例により5週間,サッカーの試 合・練習前後様々なタイミングで5つの認知課題と疲 労に関する主観的評価を行った.その結果,特に抑制機 能と視空間ワーキングメモリーにおいてサッカーによ る認知的疲労の影響が見受けられ,その時間変化にも 複数の形態が示された.これらは,練習内容や主観的評 価との関連性もみられた.
  • P2-014A
    髙橋 奈里 (名古屋市立大学芸術工学研究科)
    佐藤 優太郎 (名古屋市立大学芸術工学研究科)
    小鷹 研理 (名古屋市立大学芸術工学研究科)
    スライムハンド錯覚は, 主観的には皮膚変形を生起させるが, 過去の行動実験では, 固有感覚ドリフトと皮膚変形を十分に分離できていなかった. 本稿では, 固有感覚ドリフトを抑制するために, 実験として上下方向の実験レイアウトを適用した. 加えて, 引っ張りの強度によって, 錯覚効果に差異があるかを検討するために, 4つの異なるつまみ方を条件とした. 結果は, 固有感覚ドリフトを抑制した状態でも, 皮膚変形感覚が生起することが示された.
  • P2-018A
    宮本 真希 (北陸先端科学技術大学院大学)
    日髙 昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    近年,マンガはその高い情報伝達性から,情報伝達の手段としても利用されている.マンガは,言語情報と視覚情報の両方を併存させる独特の表現形式によって製作される.マンガの構成要素の中でも,装飾文字「描き文字」は,その特徴を顕著に有している.本研究では,描き文字が付加された場面の情報伝達性にかかわる要因を実験的に検討することで,マンガの高情報伝達性を実現する要因を明らかにすることを目指す.
  • P2-024
    奥田 祥司 (宝塚医療大学)
    松㟢 由莉 (宝塚医療大学)
     学習方略については, 深い処理の学習方略をおこなうことで成績が向上することが明らかになっている. 現状では, 学習方略に関する研究において視線の動きに着目しておこなわれているものは少ない.  そこで本研究では, 視線入力装置を用いて暗記課題時の視線の動きを測定し, 視線の動きと課題の合計点数から浅い処理の方略と深い処理の方略時の視線の動きを可視化することができた. 最後に視線について評価していくことの重要性について述べる.
  • P2-026A
    河原 美彩子 (東京大学,日本学術振興会,東京女子大学)
    田中 章浩 (東京女子大学)
    コロナ渦において着用が推奨されてきたフェイスマスクは、感情認知の手がかりとなる顔の一部を遮蔽する。本研究では、多感覚感情認知における顔と声の情報の重みづけに顔の部分的な遮蔽がどう影響するか、またその影響の受け方はコロナ渦前後で異なるか検討した。その結果、感情表出者の顔が部分的に遮蔽されると声を重視しやすくなるが、口が遮蔽された相手の声を重視する程度がコロナ前より後に減少しており、多感覚感情認知におけるマスク顔への接触の影響も示唆された。
  • P2-031
    越智 景子 (京都大学)
    酒井 奈緒美 (国立障害者リハビリテーションセンター研究所)
    角田 航平 (国立障害者リハビリテーションセンター病院)
    発話の流暢性の障害である吃音の生起について、発症が多い年代である幼児を対象に、発症メカニズムを説明するモデルの観点から、語彙の分散表現に関して定量的に分析した。吃音児10名の親子の遊戯場面の会話の分析の結果、親の発話の直後に子どもが発話する場合、その語彙の距離が遠い、すなわち類似単語の繰り返しでない発話が起こるときに、幼児にとっての負荷が高く吃音が生じやすいことが示唆された。
  • P2-038
    寒川 留衣 (宝塚医療大学)
    奥田 祥司 (宝塚医療大学)
    松㟢 由莉 (宝塚医療大学)
    音楽には,作業効率やパフォーマンスを向上させたり,作業量を減少させ誤謬率を増加させるなど,作業に対して様々な影響をもたらすことが分かっている.そこで,本研究では,好みの音楽聴取が,記憶課題の成績に与える影響を明らかにすることを目的とした.結果,音楽聴取による記憶課題への影響に有意差はみられなかったが,普段の音楽聴取の習慣や聴取した音楽のBPMは,音楽聴取時の記憶課題に影響を与えることが明らかとなった.
  • P2-043
    月田 諒弥 (北陸先端科学技術大学院大学)
    日髙 昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    本研究では,ネッカーキューブをはじめとする平面線画でありながら三次元構造に知覚されやすい図形の立体知覚を調べるために視線追跡型VRを用いた知覚心理学実験をUnityで開発し,実験を実施した.実験中の参加者の眼球運動を計測し視線の奥行方向の推定距離を算出することで,平面線画に対する立体知覚と眼球運動の関係を分析した.その結果,図形に対する主観的な立体評価と図形を観察中の視線から算出されたGaze Depthの中央値の間に相関が確認された.
  • P2-046
    内川 乃天 (関西大学)
    佐々木 恭志郎 (関西大学)
    本研究は自律感覚絶頂反応(ASMR)を喚起する刺激がもたらす感情印象がヒトのどのような内的特性と関連するかについて検討した.結果,高い嫌悪感受性や社会不安傾向を持つ人ほどASMR喚起刺激を不快に評価する傾向が示された.これらの結果,他者からの接触に対する回避反応がASMR喚起刺激のもたらす不快感の背景にあるという仮説を生成した.ただし調査方法の限界や刺激の種類による影響も考慮する必要があり,確証的研究に移る前に慎重な議論が必要とされる.
  • P2-053
    児玉 謙太郎 (東京都立大学)
    友野 貴之 (札幌学院大学心理学部, 早稲田大学人間総合研究センター)
    本研究では身体性認知の考えに基づいて立位姿勢時に「どこに意識を向けるか」によって,姿勢動揺の複雑さが変わるかを探索的に調べた.特に,内的焦点化(身体に意識を向ける)について身体部位の違いや外的焦点化(環境に意識を向ける)について目の前の地面や障害物の存在,および,身体と環境の関係(アフォーダンス)の影響などを検討した.しかし,いずれの要因の影響も見られなかったため,先行研究の知見を踏まえ多角的に考察した.
  • P2-061A
    橋本 拓磨 (大阪公立大学 現代システム科学研究科)
    森本 優洸聖 (大阪府立大学 人間社会システム科学研究科)
    牧岡 省吾 (大阪公立大学 現代システム科学研究科)
    系列依存性は,直前の情報によって知覚が変化する現象である.本研究は,落下音による物体数の推測課題を用いて,数の系列依存性が聴覚において生じるかどうかを検討した.さらに、系列依存性が,直前の刺激と参加者の応答のどちらから生じるかについても検討した.その結果,聴覚においても数の系列依存性が存在することが確認された.さらに,系列依存性が,参加者の反応に起因することが示唆された.これは,系列依存性が高次の処理段階で生じるという見解に合致する.
  • P2-066
    都丸 武宜 (京都工芸繊維大学)
    布施 朋之介 (京都工芸繊維大学)
    西山 雄大 (長岡技術科学大学)
    村上 久 (京都工芸繊維大学)
    他の動物と同様に人の集団での自己組織化も個体間の局所相互作用により駆動される. では, 相互作用の形態は集団のサイズで不変なのだろうか. 本研究では, 一人の歩行者が一人の対向者とすれ違う際に右に避けやすいという選好性が, 対向者が3人になることで消失することを示す. ただし, 視線データ解析から,歩行者は通過方向の選好性を潜在的には有しており, それが歩行軌跡ならびに相互作用に影響している可能性が示唆された.
  • P3-009
    相馬 あい (関西学院大学 工藤研究室)
    工藤 卓 (関西学院大学 工藤研究室)
    近年,コロナ禍による仮想現実(Virtual Reality,VR)への需要が高まっている.VRは現実の空間から別の世界に入り込んだような没入感が重要であり,そのためにさまざまな研究が行われている.本研究では,自分がここにいるという感覚である自己定位を撹乱することで,自身の身体とは別の場所に意識が定位する現象である体外離脱体験(Out of Body Experience,OBE)を誘導した.
  • P3-010A
    細川 敦司 (北陸先端科学技術大学院大学)
    日髙 昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    鳥居 拓馬 (東京電機大学)
    観察者が観察対象に対して生き物らしさを知覚することをアニマシー知覚という.本研究では実験において複数物体の動きにおける相関を統制し,アニマシー知覚を特徴づける要因として時間的随伴性および他の統計量を検討した.その結果,時間的随伴性とともにそれよりアニマシー知覚と高い相関を持つ統計量として自己共分散比があることが示唆された.
  • P3-013A
    水野 貴行 (京都工芸繊維大学)
    都丸 武宜 (京都工芸繊維大学)
    西山 雄大 (長岡技術科学大学)
    村上 久 (京都工芸繊維大学)
    錯視を用いた実験から, 知覚のための視覚と運動のための視覚は異なるメカニズムによるとする「知覚対運動仮説」が提唱されているが, 依然として反論も多い.本研究では, 運動への錯視の影響を従来より明確に検証可能と考えられる, 「まわし」動作における指の使用本数に着目した実験を行った. 結果として, 錯視による指の使用本数への影響が観察され, 運動のための視覚も錯視の影響を受けている可能性が示唆された.
  • P3-014
    山本 江應 (公立はこだて未来大学院)
    竹川 佳成 (公立はこだて未来大学)
    三浦 寛也 (理化学研究所)
    オンラインによる多人数ビデオ会議は,対面の場合と比較して,円滑なコミュニケーションを築くことが困難である場合が多い.本研究では,意思決定を目的とした3者間ビデオ会議における消極的発話者の視線情報に着目した合意形成に至るまでの非言語の特徴やプロセスの分析を行なった.消極的発話者の視線の動きや視線の滞留時間から賛成意見の付箋を反対意見の付箋よりも見ていることや,選好順位と視線滞留時間との間に相関が見られることがわかった.
  • P3-018
    藤井 佑実子 (筑波大学図書館情報メディア系)
    森田 ひろみ (筑波大学図書館情報メディア系)
    携帯型情報端末の限られた画面に表示されたものの視覚情報処理は,全体視とは異なる特徴を持つ.本研究では心理学実験を用いて,小さな画面でのスクロール表示が画像内の物体位置の記憶の正確性に与える影響を明らかにすることを目的とした.実験の結果,スクロール表示では窓を通して観察することにより,また画像の絶対位置を移動して観察することにより物体位置の符号化及び遅延後記憶の正確性が低下することが示唆された.
  • P3-019
    平田 貴士 (名古屋大学大学院 情報学研究科)
    川合 伸幸 (名古屋大学大学院 情報学研究科)
    ヒトは上昇物体よりも下降物体の運動を正確に推定する.また,上視野よりも下視野で捉えた物体を正確に知覚する.この知見から,下降物体は下降するからではなく,下視野で捉えるから運動の推定が正確だと考えられる.本研究では,視野上下で上昇・下降刺激の到達時刻の推定精度を評価した.下視野下降の到達時刻の推定は上視野上昇よりも正確であり,上視野下降と下視野上昇の精度は同じであったことから,視野の上下も物体の運動推定の精度に影響することが考えられる.
  • P3-021
    小鷹 研理 (名古屋市立大学芸術工学研究科)
    佐藤 優太郎 (名古屋市立大学芸術工学研究科)
    今井 健人 (名古屋市立大学芸術工学研究科)
    The paper introduces the "Buddha's Ear Illusion," a novel skin-deformation illusion inspired by the previously discovered "Slime Hand Illusion." This illusion is induced by swiftly lowering the fingers in a pinching motion from below the earlobe down to the waist area, as if pulling an elongated, transparent earlobe, while actually pulling down the earlobe. Our experiment demonstrated that both the tactile pulling operation and the visually miming operation significantly contribute to enhancing the illusory sensation of earlobe stretch.
  • P3-024
    川島 尊之 (帝京平成大学 健康メディカル学部 心理学科)
     前後の方位の違いが、音が喚起する感情に与える影響を研究した。参加者に対して声などの日常的な音を前後から提示し、音が喚起する感情を快・不快、覚醒度、被コントロール感について評定することを求めた。後方に提示した音は、覚醒度をより高める傾向が見られた。別の実験から前後では、定位処理の効率が異ならないことが反応時間を指標として示された。後方で覚醒感が強くなる背景、研究の限界と展望を考察した。
  • P3-026
    黒田 航 (杏林大学 医学部)
    CMU Pronouncing Dictionary を使って,単語の綴りと発音の対応が理想的な1対 1対応から外れている程度を,二つの方法で定量評価した.一つは必須度の高い資源中の4,290語にの綴りと発音の対応の定量評価で,もう一つは英語とドイツ語の高頻度語形を同じ条件で比較.これらから,英語での対応が一対一から大きく外れている事がわかった.
  • P3-036A
    金子 祐二 (東北大学大学院教育学研究科)
    視野狭窄を持つ網膜色素変性症当事者の主観的視覚体験を再現するため,画像フィルタを提案し,その開発と応用の展望について報告する.本報告では画像処理手法により移動物体の除去と周辺視野領域のぼかし処理を行った.本処理により当事者の主観的視覚体験を一定程度再現できることを確認した.今後視線計測や適応性に関する研究を進めることで,人間の主観的視覚体験の発生機序に関する新しい知見が得られる可能性がある.
  • P3-037A
    長島 一真 (静岡大学創造科学技術大学院)
    西川 純平 (静岡大学)
    米田 凌 (静岡大学)
    森田 純哉 (静岡大学)
    人間の運動技能は,外界の変化に対する予測精度を向上させることで獲得される.こういった運動学習の過程について,様々なモデルが構築されてきた.しかし,多数のパラメータが関与する状況での急速な適応を説明するモデルは構築されてこなかった.本研究では,認知アーキテクチャであるACT-Rをベースに,事前に獲得された運動スキーマを適用する学習を提案する.手法を適用した結果,人間と適合する急激な学習過程を確認した.
  • P3-038A
    友野 貴之 (札幌学院大学心理学部, 早稲田大学人間総合研究センター)
    栗原 勇人 (早稲田大学人間科学学術院)
    海見 康秀 (早稲田大学人間科学部)
    村野 良太 (早稲田大学人間科学学術院)
    加藤 麻樹 (早稲田大学人間科学学術院)
    自動運転車乗車時の間隙通過場面の動画とオンラインの質問紙を用いた実験を行い,車の車速が間隙の通過判断とその確信度に与える影響について検討した.その結果,間隙幅が車幅の1.6倍の場合,車の速度は間隙の通過可否判断に影響を与えることがわかった.また,間隙幅が車幅の1.9倍の場合は,1.6倍の場合よりも,間隙の通過可否判断に対する確信度が高くなることがわかった.一方で, 速度は通過可能と判断した際の確信度に影響を与えるとは言えなかった.
  • P3-042
    井関 龍太 (大正大学)
    手書き文字の美しさの印象について異なる字種を通して共通の説明変数を見出すことが課題となっている.本研究では,文字の形態の複雑度と左右バランスに注目し,これらの説明変数が文字のタイプ,字種,書き手のそれぞれの層できれいさの評価にどのように貢献するかを検討した.その結果,左右バランスはどの層でもきれいさの評価に影響することがわかった.一方,複雑度については,書き手個人の平均からのずれのみが負の影響をもたらすことが示唆された.
  • P3-044A
    髙宗 楓 (北陸先端科学技術大学院大学)
    西本 一志 (北陸先端科学技術大学院大学)
    論理的に等価であるにも関わらず,記述表現がポジティブまたはネガティブと異なることによって,後の意思決定が変化する現象は属性フレーミング効果として知られている.本研究では,属性フレーミング効果を誘発する文章表現に対して,数量を表現するジェスチャを追加提示した場合の意思決定への影響について調査を行った.本研究の結果として,一部ジェスチャの追加提示条件において,属性フレーミング効果が強化される可能性が示唆された.