研究分野

推論・問題解決

  • OS07-2
    公募発表
    横山 拓 (株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・ユニバーシティ)
    本稿では不確実な環境下に置かれたIT企業のマネジャーの事例研究を通じて,マネジャーと周囲のネットワークや人工物との経路依存的な相互作用によりゴールが構成されることを論じる.
  • O2-002A
    二宮 由樹 (名古屋大学)
    寺井 仁 (近畿大学)
    三輪 和久 (名古屋大学)
    本発表では,著者らのこれまでの研究[1][2]に基づいて,より良い解決策(代替解法)の発見がどのような探索過程を経て生じるのかを議論する.まず,発見者は,代替解法の発見する以前から,既知の解決策が成功していても,未知の情報を得ようとしていたこと,成功を経験することで生じる固着の強化に抵抗していたことを示す知見を紹介する.そして,これらの知見をもとに,代替解法の発見について,既知の解決策の成功と失敗という観点での対比的な整理を行う.
  • P1-027
    寺井 仁 (近畿大学)
    甲斐 慎治 (近畿大学・産業理工学部)
    本研究では、匿名性が道徳的ジレンマ状況における自己の判断及び他者の判断に対する許容性に及ぼす影響を実験的に検討した.匿名性の操作のため,実名条件,仮名条件,および無名条件の3条件を設定した.実験の結果,無名条件において,(1)功利主義的な判断が増加する傾向にある一方,(2)他者の功利主義的判断に対しては批判的になる傾向にあることが示された.また,(3)実名条件と仮名条件の間に差異は確認されなかった.
  • P1-029
    太田 聖三郎 (早稲田大学)
    河原 大輔 (早稲田大学)
    野村 理朗 (京都大学大学院教育学研究科)
    川柳は日本の伝統文芸の一つである.詩や俳句に関する機械学習を用いた研究は散見されるが,川柳に関するものはない.本研究では,川柳を構成する要素を様々な指標に分解し,それらの予測を組み合わせることで,より高精度な川柳評価を予測する手法を提案する.川柳を使った事前学習モデルやクラウドソーシングを用いた川柳データセットを構築し,BERTのファインチューニング(パラメータの微調整)により川柳の評価を予測する.
  • P1-050
    尾関 智恵 (愛知工科大学)
    小笠原 秀美 (中京大学)
    数独はポピュラーなパズルであり,制約充足問題として知られている.これまで問題自体に対する提案は数多くあるが,人がどのように難易度を評価し,解答方略を獲得してパフォーマンスを向上させていく熟達過程に焦点を当てた研究は少ない.本発表では,数独における制約伝播に基づく解決方略を獲得していく過程の追跡をするため,これに適した問題生成とその難易度評価の探索的な試みを報告する.
  • P1-051A
    大屋 里佳 (東京大学)
    佐藤 有理 (お茶の水女子大学)
    福田 玄明 (一橋大学)
    植田 一博 (東京大学)
    私たちが話し手の言語表現(感想)からその意味(味)について推定するとき,どうすれば推定が成功しやすいのだろうか.本研究では,二者間で味覚言語表現を手がかりに,相手が飲んだコーヒーを推定する実験を実施した.実験では訓練と推定をおこなうが,訓練時に推定者が相手と同じコーヒーを飲用する条件としない条件を設け,味の意味空間のすり合わせができる飲用条件の方が,非飲用条件よりも推定が成功しやすいのか検討した.本発表では現時点での結果を報告する.
  • P1-053A
    塚村 祐希 (東京大学・日本学術振興会)
    植田 一博 (東京大学)
    本発表では,段階反応データに対し,連続的な反応分布を仮定したモデルを適用し,閾値に対称制約を置くことによってモデルを識別可能にする方法を説明する.さらに,この方法を用いた分析の例として,因果的説明における潜在スコープバイアスに関する先行研究のデータをモデリングした結果を報告する.本手法は,モデリングを想定せず取得された段階データをモデルベースで分析しやすくするものであり,二次分析の積極的な実施を促進すると考えられる.
  • P1-062
    渡邊 元樹 (東京電機大学)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    中村 紘子 (日本学術振興会,東京電機大学)
    本研究は,反実仮想条件文「もしpだったらqだっただろう」のもっともらしさの評価について, Petrocelli et al.(2011) と Over et al.(2007) の二つのモデルのどちらが予測力が高いかを頻度事例を用いて検討した.また,もっともらしさの評価の際の計算式の自由記述式を用いることで,計算結果だけではなく計算過程からもモデルの検討を行った.
  • P1-063
    中村 國則 (成城大学)
    確率と価値の負の相関という現象が,言語確率表現についても当てはまるかを検討するため,2つの実証研究を行った.その結果,言語確率表現についても確率が高くなるほどそれに伴う結果の大きさが小さくなることが示され,さらにその結果の大きさは言語確率の持つ方向性という性質とも関連することがあきらかになった.
  • P1-064A
    横須賀 天臣 (東京電機大学)
    石倉 圭悟 (東京電機大学)
    中村 紘子 (日本学術振興会,東京電機大学)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    認知的満足化は,行動の結果として見込まれる価値が満足化基準を満たすかによってリスク態度が異なり,意思決定の探索傾向に影響するというモデルである(高橋ら,2016).満足化基準が満たされない場合はリスク志向的になり,探索的な選択をすることが予測される. 本研究はギャンブル選択課題を用いて,意思決定の探索傾向とリスク態度を検証した.その結果,損失が見込まれるほどリスク志向的になり,探索的な選択をしやすいというモデルの予測が支持された.
  • P1-066
    中村 脩人 (立命館大学)
    服部 雅史 (立命館大学総合心理学部)
    本研究では,類推において,検索に伴う意識的な努力が,想起されやすいベースにどのように影響を与えるのか検討した.ターゲットからベースを検索するときの意識的な努力が,想起されるベースに与える影響を検討した結果,意識的な努力と想起されやすいベースの種類の間に関係がみられなかった.実験参加者に意識的な努力を伴わない検索を促すことができなかったため,検索に伴う意識的な努力と想起されやすいベースの種類に関係がみられなかったと考えられる.
  • P1-069
    渡邊 咲花 (立命館大学大学院人間科学研究科)
    下條 志厳 (立命館大学大学院人間科学研究科)
    林 勇吾 (立命館大学総合心理学部)
    先行研究では学習によるデカフェコーヒーの覚醒効果やコーヒーの香りのプラシーボ効果が指摘されている.そのため,本研究ではコーヒーの香りが計算課題のパフォーマンスに影響を及ぼすのかどうかを期待と覚醒度の観点から検討した.その結果,課題の進度は変化せず,コーヒーの香りのある条件で課題の正答率が低下した.覚醒度は香りのある条件で低下した.本研究ではコーヒーの香りは課題初期の覚醒度を低下させることで計算課題の正確性を低下させることが示唆された.
  • P2-002
    伊藤 毅志 (電気通信大学)
    金泉 則天 (電気通信大学)
    本研究では、招待隠匿型の多人数不完全情報コミュニケーションゲームである「5人人狼」を題材に、プレイヤの熟達過程を調べた。5人人狼では、熟達するにつれて村人が占い師をカミングアウトする「村人CO」と呼ばれるプレイが現れる。このプレイに着目して、どのようにこの村人COが獲得されていくのかを調べた。その結果、村人COのメリットを認識し、それを実践を通して手続き的な知識を獲得することで違和感なくプレイできるようになっていく過程が観察された。
  • P2-003
    田丸 陽稀 (東京大学大学院学際情報学府)
    藤崎 樹 (東北大学大学院情報科学研究科)
    馬場 雪乃 (東京大学大学院総合文化研究科)
    植田 一博 (東京大学)
    人々の意見を適切に集約した結果が時に高い精度を生む現象は集合知と呼ばれ,さまざまな手法が提案されている.中でも,集団内の成績優秀者を推定し,その意見のみを用いる少数選抜は高い精度を誇る.本研究では,少数選抜の一手法であるHyper Questionに注目し,この手法が回答に偏りがある際に精度が落ちることを明らかにした.また,この限界に対し,エントロピーを利用することで回答の偏りを回避する応用手法を提案する.
  • P2-029
    梶原 悠 (北陸先端科学技術大学院大学)
    日髙 昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    鳥居 拓馬 (東京電機大学)
    帰納推論の理解は, 人の認知過程を解明するために不可欠である. 哲学者Humeは帰納推論にあたり何らかの自然の斉一性を仮定する必要があると指摘した. 本研究は, 帰納推論にあたり仮定される自然の斉一性がどのようなものであるか, という問題への説明を目指す. 具体的には, ハノイの塔と呼ばれる古典的なゲームを題材として, ゲームを解く人や, 解く人を観察してそのゲームのルールを推定する人の推論過程の理論的な説明を検討した.
  • P2-041
    眞嶋 良全 (北星学園大学社会福祉学部)
    鈴木 凜太朗 (北星学園大学・社会福祉学部)
    市原 実夢 (北星学園大学・社会福祉学部)
    岩間 雅 (北星学園大学・社会福祉学部)
    桑原 彩 (北星学園大学・社会福祉学部)
    本間 大貴 (北星学園大学・社会福祉学部)
    吉田 崚人 (北星学園大学・社会福祉学部)
    本研究では,科学の非専門家が学術研究の成果をどのように評価するかについて,刊行形態と,科学に対する全般的な信頼と思考スタイルの影響を検討した。その結果,プレプリントの位置づけを理解している場合は刊行形態が評価を決めるが,プレプリントと査読論文が区別できていない状況では,科学への信頼,あるいは非分析的思考スタイルが影響し,特にプレプリントの評価は分析的思考スタイルに大きく影響されることが示された。
  • P2-049A
    松本 和紀 (東京電機大学)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    中村 紘子 (日本学術振興会,東京電機大学)
    本研究では,条件文の話者間の上下関係が条件推論の抑制に影響を及ぼすかをポライトネス理論に基づき検討した.ポライトネス理論によると社会的距離や社会的地位,要求量が曖昧な表現の利用に影響を及ぼすとされている.今回の実験では社会的地位に着目し,社会的地位の上下関係を操作したシナリオを用いて,条件推論の実験を行った.その結果,条件推論の抑制に追加条件文の有無の影響が確認されたが,上下関係による推論の抑制への影響はみられなかった.
  • P2-050A
    金子 晶史 (東京電機大学大学院)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    中村 紘子 (日本学術振興会,東京電機大学)
    本研究では,タイムプレッシャーの有無と視点(書き手・読み手)を操作し,視点やタイムプレッシャーの有無によって論理的な条件推論が促進されるか,抑制されるかを検討した.実験の結果,書き手の視点から推論する場合は推論の結論を受け入れやすく,書き手は自身の主張に強い確信を持っているという解釈が行われている可能性が示された.一方,タイムプレッシャーの有無による条件推論の受け入れやすさの差は見られなかった.
  • P2-063
    青井 孝史 (北陸先端科学技術大学院大学)
    日髙 昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    前提文を満たす名辞の順序が全順序としては1つに定まらない不確定な名辞系列問題の推論では、複数の全順序を暗示する単一のメンタルモデルが構築されるとする説が有力である。本研究では80人の実験参加者の不確定な名辞系列問題に対する回答パタンを分析し、先行研究で提案されたモデルのうち名辞間の対称性を認識しやすい異性体モデルが有力だと示唆する結果を得た。また、名辞の対称性を利用して推論中の認知負荷を下げようとする対称性バイアスの存在も示唆された。
  • P3-001A
    白砂 大 (追手門学院大学)
    香川 璃奈 (筑波大学)
    本田 秀仁 (追手門学院大学)
    本研究では、判断の正確さを高めるためのシンプルな介入策(ブースト)として、課題冒頭に「1秒待たせる」という手法を提案した。二者択一課題を用いた行動実験の結果、待ち時間がない群と比べて、1秒の待ち時間がある群の方が高い正答率を示した。また、マウストラッキングにより参加者の判断プロセスを検証した結果、待ち時間が衝動的な判断を抑制していることが示唆された。1秒待たせるという介入策は、非常に低コストであり、他の場面への応用可能性も期待される。
  • P3-025A
    市野 弘人 (東京電機大学)
    林 涼太 (東京電機大学)
    大用 庫智 (関西学院大学)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    樋口 滉規 (長岡技術科学大学)
    人間は観察による因果帰納において,相関ではなく非独立性を検出しているということが因果帰納モデルを用いた実験のメタ分析と,刺激を確率的に生成するシミュレーションによって示唆されている.本研究ではこの仮説を検証するために従来の因果帰納実験の枠組みを拡張し実験を実施した.結果は人間の因果帰納が独立よりも相関の検出に近いことを示しており,仮説は支持されなかった.また,人間は観察した情報をマージし単純化して因果推論に利用していることが示唆された.
  • P3-027A
    平田 瑞貴 (名古屋大学)
    三輪 和久 (名古屋大学)
    人は問題を解決する際に,減算的な解決策よりも加算的な解決策を用いることが多い.本研究ではこの加算的な解決策と減算的な解決策の関係について,論理的に等価な実験シナリオにおいて,それぞれの解決策の有効性を統制した実験を実施した.その結果,多くの実験条件において加算的な解決策での回答の比率が高くなり,人の加算的な解決策に対する選好は,解決策の有効性に依拠したものではなく,加算,減算といった操作に依拠したものであることが示唆された.
  • P3-057
    佐々木 健矢 (静岡大学情報学部)
    長島 一真 (静岡大学創造科学技術大学院)
    西川 純平 (静岡大学)
    森田 純哉 (静岡大学)
    自動運転車などの自律した機械を社会実装するためには,機械自体が直面する道徳的問題に対して,人間と整合する判断を行う必要がある.本研究では,人間とコンピュータの価値観のすり合わせを達成するため,二重過程理論に基づく人間の思考システムとしての道徳をモデル化する.この研究のステップとして,言語モデルと認知アーキテクチャACT-Rを組み合わせた事例ベースな道徳判断のプロトタイプモデルを構築し,ケーススタディとしてのトロッコ問題に適用する.