研究分野
コミュニケーションとネットワーク
-
OS-3-4-2公募発表本報告では、虫屋の採集道具とそのデザインの事例を通して、脱人間中心主義的な観点から、人間性中心デザインについて考察することを目的とした。事例では、虫屋の採集道具が、虫の形態や生態、採集環境や自身の身体に合わせてデザインされ、しばしば他文化からの流用されることが示された。これらの事例を元に、脱人間中心主義的立場の人類学者であるGellの議論を参照しながら、ヒトと環境の結びつきを変化させる道具やそのデザインのあり方について考察を行った。
-
O-3-1A本研究は,バーチャル空間においてアバターをまとって行われるコミュニケーションと,嗜好品摂取によって得られる心理学的効果との関係について,質的・量的研究の両面から検討した.その結果,一定のプロセスを経てコミュニケーション促進,セルフ・エンパワメント,ポジティブ気分の獲得という3つの効果が得られることが示された.得られた結果と装いや演技との関係を踏まえつつ,バーチャル空間でのアバターをまとったコミュニケーションについて考察する.
-
O-3-4遠隔地間において同じ場所を共有しているように感じさせる技術「テレプレゼンスアバターロボット」が注目されている.これらの技術において,遠隔地のロボットを自己の身体であると認知するプロセスには,外部とのインタラクションが深く関わっている可能性がある.これを検証するため本研究では視線追従動作を操作者の意思とは別の自律動作として実装し,この自律動作によってロボット操作者の没入感が向上するか検証した.実験の結果,本仮説を示唆する結果が得られた.
-
O-5-1表情は他者とのコミュニケーションに欠かせないメディアである.特に,他者の表情の模倣は,相手の好感度を高め,共通認識の形成に寄与するとされる.本実験は,参加者が置かれる立場が変化するサイバーボール課題を通し,表情がエージェントと参加者の関係に与える影響を調査した.結果,他者の表情は物理的構成のまま認識されるのではなく,感情を伴って解釈されることが示唆された.また自身の表情によって相手の印象が変化する可能性も示唆された.
-
P-1-2交通におけるすれ違い状況において,相手からの注視時間の長さが,その相手にどれほど思いやりを感じるか,その動きをどれほど予測・説明できたかの各評定に与える影響を検証した。その結果,注視時間が長くなるほど思いやりは高く評定された。相手の行動に対する予測・説明に関しては,相手が道を譲ってくれた場合は注視時間が長くなるにつれて評定が高くなったが,相手が先に通過した場合は評定が低下した。
-
P-1-15A本発表では,指示詞を産出させる実験課題を用いて,日本語指示詞の選択に話者から指示対象までの距離と,聞き手位置が及ぼす影響を調べた.多項ロジスティック回帰モデルの推定をおこなった結果,(1)距離は聞き手位置にかかわらず指示詞選択に影響し,(2)聞き手位置の影響は距離によって異なっていた.この結果は日本語の指示詞は聞き手を考慮した基準を用いて選択されるという,先行研究の主張を補完するものであった.
-
P-1-16ヒトの集団では、知らず知らずのうちに個々の行動が他者に伝染し、集団レベルでのバースト現象が生じ得る。こうした現象では、どのような知覚的相互作用が働いでいるのだろうか。本研究では、大規模な集団において空間的位置関係を考慮しつつ、自発的行為が周囲から受ける影響を調べた。結果として空間を共有する者同士による知覚的相互作用による顕著なバースト現象が確認し、またこの相互作用は近距離ではなく遠距離であることが示唆された。
-
P-1-19オフィスで生起する「事前に予定されていない会話」の開始場面について3つの事例に対して、身体動作と発話開始箇所について定性的検討を行った。分析の結果から、話者は聞き手候補のコミュニケーション意図のない振る舞いから、他者の関与状態を推察し,話しかけ方を調整や話しかける相手の選択をしている可能性が示唆された.
-
P-1-31BtoB企業の「営業活動」を技術として捉え,効果的なセールスモデルを探求することを目的とした.米国で行われた先行研究において卓越した成果を上げるとされた「チャレンジャー」と,成果を残せないとされた「リレーションシップ・ビルダー」について,日本で調査を行い,先行研究との比較を行った.その結果,「成約」に関して「チャレンジャー」に対する顧客側の積極的な意思決定(成約意思)が行われる傾向がみられた.
-
P-1-32アート鑑賞が鑑賞者の創造性の向上に効果があるという仮定を立て,その実証のため没入型の環境を構築し,その環境で被験者を用いたアート鑑賞時の生理データの計測・分析を行っている.本報告では,没入型環境の構成について簡単に述べた後,その環境でアートコンテンツを幾何学図形コンテンツや無コンテンツと比較した際の心電データの計測・分析の結果について報告する.
-
P-1-36A本研究では創作ダンスの創造場面における対話や環境などの観点から作品の主題がどのように創造されているか、ダンサーとして熟達していない非熟達者がどのような要因によって創造に主力として参加することができているのかを多層的に検討してきた。その結果、参加者たちは創作ダンスに取り組む共同体としての集合的な主体性(エージェンシー)を構成し、創造活動をしており、その営み自体が熟達者と非熟達者の相互行為を可能とし、創造性を促進させていることが示唆された。
-
P-1-62本研究の目的は,探究学習において言外の意味を扱った対話を実現できるメンタリングチャットボットの開発である.著者らは先行研究として,BDIモデルベースの自己/他者モデルと大規模言語モデルを統合することで,大規模言語モデルが言外の意味を扱えるようにするアプローチを提案している.本研究では,このアプローチをメンタリングチャットボットに導入し, 探究学習におけるメンタリングにおいても有効であるか評価するためにケーススタディを実施した.
-
P-2-40本研究の目的は,寄付意思がない対象者に反感を抱かれにくい寄付行動促進エージェントの実現である.先行研究として著者らは,対話者が好意的解釈の傾向がある「準」自然言語に着目し,「準」自然言語エージェントを提案している.本研究では,「準」自然言語エージェントの有用性を検証するため,実際の寄付行動を想定した実空間の実験を行った. 検証の結果,仮説は支持されなかったが,「準」自然言語が持つ曖昧性により広告を注視する等の情報を補う行動を誘発した.
-
P-3-4カンブリアンゲーム(安斎,中村)に画像生成AIを使用したセッションの参加者は,AIが予想していなかった画像を生成したときに,より興味深いつながりを発見し,画像に新しい意味を見出し,世界に新たな可能性を発見し世界観が広がった.アートはテクノロジーによる創造的活動の抑制に抵抗してきたが,AIを含むテクノロジーを,便利なツールとして消費するのではなく,創造的活動のパートナーとして扱う必要があることを論じる.
-
P-3-28本研究ではVR曝露療法中の注意誘導が,プレゼン中の不安,スピーチ不安,社交不安に及ぼす影響について検討した.VR要因(あり対なし)と注意誘導要因(あり対なし)の2×2の参加者間計画で行った.結果,各指標について練習前後での変化量に条件間で差は見られなかった.練習中の不安の高さとプレゼン中の不安の減少量に正の相関が見られた.今後,スピーチ不安に対するVRETの効果の要因を明らかにするため,様々な練習環境や練習方法を比較検討する必要がある.
-
P-3-34A近年ではSNS (Social Networking Service)上におけるフェイクニュースの拡散や意見の分極化などが問題視されている.一つの原因として,小さな閉じた社会での意見の偏りが挙げられる.本研究では,これをローカルエコーチェンバーと呼び,その性質を理解するため,IBLT (Instance Base Learning Theory)に基づいて,ローカルエコーチェンバーの形成と,フェイクニュース拡散のシミュレーションを行う.
-
P-3-37本研究ではオンライン対話環境において創造的な議論を実践するための環境要因を探るために,複数の集団が互いにオンライン対話システムを介して接続していない/常時接続している/時間限定で接続している状況においてアイデア出しを課題とする実験を行った.その結果,常時接続している集団では問題解決に有用な発想の伝播が生じ,時間限定で接続していた条件では互いの案出偏向が類似する傾向がみられた.
-
P-3-46A本発表では,心身重複障碍者とその母親との間で比較的スムーズに進行している日常的なコミュニケーションに着目し,障碍のために生じうる様々な困難にもかかわらずスムーズなコミュニケーションがいかにして達成されているか,振る舞いの意味の理解可能性がいかに構成されているかを,日常的な活動の構成に着目することで探索的に検討する.
-
P-3-49A関連性理論によると発話解釈に認知効果と心的労力が影響を及ぼすとされる。本研究ではこの2つが発話の意図解釈にどう影響するかを実証的に示すことを目的とする。認知効果と心的労力の程度を3段階に調整した会話テキストを実験参加者に提示し、解釈などの反応の違いを分析する。最適関連性の理論では、発話解釈の際に労力最小の道を辿りながら認知効果を最大化するとされ、心的労力が解釈に大きな影響を与えることが予想される。
-
P-3-62In 2022, Miyata Seminar students started a compost project in Toyota City, involving collaboration with the University Co-op Cafeteria, local citizens and groups in Toyota City, Japan. Our goal was to get more people involved in composting their food waste at work and home. This study will illustrate the various interests surrounding composting and analyze what values lead citizens and groups to become involved with compost. The mindsets around food waste, and the contents of food waste, differ between businesses and households. These differences affect the values each of these groups assigned to food, food waste, and compost. This study will analyze the mechanisms and motivations necessary to sustain composting efforts.
-
P-3-63これまで私たちは、廃棄食材堆肥化を中心に、食資源の循環につながる取り組みをおこない、様々な立場の人々とコラボレーションしてきた。これらの活動が持つ意味を、『よりよい世界のためのデザイン』(Norman.2023)で取り上げられているキーワード、経路依存、アフォーダンスを中心に考察した。その結果、生態的経路という同じ経路の共有によって、それぞれの抱える想いを実現するというアフォーダンスの認識につながっていることがわかった。