研究分野

思考・知識

  • OS06-1
    公募発表
    櫃割 仁平 (京都大学大学院教育学研究科)
    上田 祥行 (京都大学人と社会の未来研究院)
    尹 優進 (京都大学大学院教育学研究科)
    野村 理朗 (京都大学大学院教育学研究科)
    本研究では,385名が人間もしくはAIによって創作された俳句の評価と判別を行った。人間とAIの共創俳句の美しさが最も高く評価され,人間作とAI作の美しさは同等であった。また,参加者は人間とAIの作品を判別できなかった。これは人間とAIの共創が優れた創造性を持つことを示している。また,AI俳句の美的評価が高いほど,人間が作ったと誤認される傾向が見られた。これはAI芸術がアルゴリズム嫌悪により過小評価されている可能性を示唆している。
  • OS07-2
    公募発表
    横山 拓 (株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・ユニバーシティ)
    本稿では不確実な環境下に置かれたIT企業のマネジャーの事例研究を通じて,マネジャーと周囲のネットワークや人工物との経路依存的な相互作用によりゴールが構成されることを論じる.
  • OS07-3
    公募発表
    田中 吉史 (金沢工業大学心理科学科)
    越田 恵斗 (金沢工業大学心理科学科)
    非専門家による文化的実践への参与過程にアプローチするために、ボーカロイド・ファンを対象としたインタビューを行った。その結果、「ハマる」前の準備段階として、対象に接触するための物理的環境の整備と、興味のきっかけとなる外部刺激があること、また深化の過程では、初期には個人的な活動が主となるが、深化とともに他者との共有などより社会的な活動が行われることがわかった。また対象への興味の変遷には、個人内での一貫した軸が存在する可能性も示唆された。
  • O2-001
    阿部 慶賀 (和光大学)
    本研究では、過去に接触した人物の属性が物品に伝染する、魔術的伝染についての減衰パターンを検討した。解釈レベル理論によれば、私たちの判断や思考の姿勢は物理的、概念的な距離に依存して変わることが報告されている。このことから、人の手を仲介した回数や仲介した人間の関係性が魔術的伝染にも影響が及ぶと仮説を立て、調査を行った。その結果、魔術的伝染においても解釈レベル理論が一部適用でき、仲介した人数や時間経過に従って効果が減衰していくことが示された。
  • P1-011
    内海 英夏 (京都電子)
    篠原 修二 (東京電機大学)
    正角 隆治 (エプソン)
    森山 徹 (信州大学)
    交差点間距離が10,16,32cmの多重T字迷路装置を用い,ダンゴムシに対しT字迷路を連続で約6時間与えた.その結果,交替性転向の成功率は,それぞれ64,45,30%と距離の増加に伴い減少した.一方,いずれの条件でも,約半数の被験体において,交替性転向の成功試行数の100試行移動平均が,10から80%程度の範囲で増減する現象が観察された.この結果は,本種の多くは,交替性転向を自発的に動機づける心的過程を備えることを示唆する.
  • P1-018
    大井 京 (近畿大学)
    小野 奨太 (近畿大学)
    本研究では,フェイクニュースの真偽判断に関連する要因として,1. 常識,2. 実現可能性,3. 信念,4. 画像のリアリティを取り上げた.実際のニュースとフェイクニュースに対して「真実」か「フェイク」かの真偽判断を求める調査を実施した結果,「常識」と「実現可能性」が,それぞれ「信念」と「画像のリアリティ」よりも,「画像のリアリティ」が「信念」よりも判断の根拠とされる傾向が確認された.
  • P1-022A
    安陪 梨沙 (立命館大学人間科学研究科)
    服部 雅史 (立命館大学総合心理学部)
    林 勇吾 (立命館大学総合心理学部)
    本研究では,創造性課題において,ロボットまたは人による実験の進行が,作品の独創性に対してどのように影響するのか比較検討した.実験中に作品が評価されることについて考えたか(状態評価不安)を調整変数とし,独創性に与える影響を検討した結果,ロボット群では状態評価不安が高いほど,独創性が低くなることが明らかになった.作品評価に対する疑問を発言しづらい状況が独創性の発揮に対して不利に働いたことが考えられる.
  • P1-027
    寺井 仁 (近畿大学)
    甲斐 慎治 (近畿大学・産業理工学部)
    本研究では、匿名性が道徳的ジレンマ状況における自己の判断及び他者の判断に対する許容性に及ぼす影響を実験的に検討した.匿名性の操作のため,実名条件,仮名条件,および無名条件の3条件を設定した.実験の結果,無名条件において,(1)功利主義的な判断が増加する傾向にある一方,(2)他者の功利主義的判断に対しては批判的になる傾向にあることが示された.また,(3)実名条件と仮名条件の間に差異は確認されなかった.
  • P1-033
    望月 正哉 (日本大学)
    太田 直斗 (名古屋大学)
    本研究では,形容詞の情動価と7つの観点に関する感覚強度を収集することで,感覚強度が抽象性にどのように寄与するのかを探索的に検討した.その結果,聴覚の強度と抽象度の間に有意な正の相関がみられたほか,特定の感覚への関与を示す度合いが低い,すなわち複数の感覚への関与度が高い形容詞の抽象度は高かった.本稿では,さらに抽象度と感覚情報の関連について議論する.
  • P1-034
    藤本 和則 (近畿大学)
    田中 優子 (名古屋工業大学)
    犬塚 美輪 (東京学芸大学)
    経時に伴うCOVID-19関連記事の正確さの識別力(真の記事を正しいと、偽の記事を誤りと判断する能力)の変化について分析した結果を報告する。分析には、異なる時期に実施された二つの再現実験のデータを利用した。分析の結果、正確さの識別力は経時とともに低下することを確認した。また、識別力の低下は、COVID-19への関心が薄れたことや、被験者の政治的偏りの変化だけでは十分に説明されないことを確認した。
  • P1-037A
    木村 陽菜 (東京電機大学大学院理工学研究科情報学専攻)
    安田 哲也 (東京大学)
    小林 春美 (東京電機大学)
    本研究では、コミュニケーションタスクにおいて、伝え手により自発的に産出された発話の継続時間が、曖昧な句構造の解釈にどのように寄与するのか、聞き手の正誤を基に検討した。その結果、句構造の違いによって発話継続時間が異なり、またその違いが回答の正誤にも影響することがわかった。最初のチャンクにおいて、発話継続時間が句構造の違いを反映していたこと、またそうした情報が発話を聞いた回答者の解釈に影響を与えていた可能性が示唆された。
  • P1-040
    阿部 詩織 (北陸先端科学技術大学院大学)
    髙宗 楓 (北陸先端科学技術大学院大学)
    西本 一志 (北陸先端科学技術大学院大学)
    現在、様々な場で文章を作成する機会が多く存在する。本論文ではその際に起こる「何を書いたら良いかわからなくなってきた」といった現象の解決に自作文章の書き写しが有効であると示すことを目的とした。そこで、文章作成が不得意または得意である大学院生を対象に実験を行った。その結果、文章作成が苦手な方には書き写しの有効性がみられたが、執筆が得意な方には効果がみられなかった。これの結果は執筆能力が関係すると考えられる。
  • P1-041A
    岩淵 汐音 (千葉大学)
    松香 敏彦 (千葉大学)
    自閉スペクトラム症で見られる細部へのこだわりは,カテゴリー学習に対する自閉スペクトラム症の影響を説明しうる.本研究ではドットランダム図形とAQを用いて自閉スペクトラム特性,細部へのこだわりそれぞれとプロトタイプ推論が有効なカテゴリー学習課題における正答率の関係を検討した.自閉スペクトラム特性全体の強さよりも細部へのこだわりの強さのほうが,自閉スペクトラム特性によるカテゴリー学習への影響を説明しうる可能性があることが示唆された.
  • P1-042
    山川 真由 (名古屋大学)
    三輪 和久 (名古屋大学)
    小島 一晃 (帝京大学)
    本実践では,系列位置効果を題材として,実験とシミュレーションを組み合わせた授業を行った.受講者は,自身が実験参加者となることで得られた実験結果と認知モデルをベースとしたシミュレータを使って生成された結果を対比した.実験とシミュレーションの結果を対比することにより,考察がどのように変化するかを検討した.シミュレーション結果との対比後には,実験結果の考察として,認知処理過程に基づく説明の記述が増加することが示された.
  • P1-062
    渡邊 元樹 (東京電機大学)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    中村 紘子 (日本学術振興会,東京電機大学)
    本研究は,反実仮想条件文「もしpだったらqだっただろう」のもっともらしさの評価について, Petrocelli et al.(2011) と Over et al.(2007) の二つのモデルのどちらが予測力が高いかを頻度事例を用いて検討した.また,もっともらしさの評価の際の計算式の自由記述式を用いることで,計算結果だけではなく計算過程からもモデルの検討を行った.
  • P1-063
    中村 國則 (成城大学)
    確率と価値の負の相関という現象が,言語確率表現についても当てはまるかを検討するため,2つの実証研究を行った.その結果,言語確率表現についても確率が高くなるほどそれに伴う結果の大きさが小さくなることが示され,さらにその結果の大きさは言語確率の持つ方向性という性質とも関連することがあきらかになった.
  • P1-064A
    横須賀 天臣 (東京電機大学)
    石倉 圭悟 (東京電機大学)
    中村 紘子 (日本学術振興会,東京電機大学)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    認知的満足化は,行動の結果として見込まれる価値が満足化基準を満たすかによってリスク態度が異なり,意思決定の探索傾向に影響するというモデルである(高橋ら,2016).満足化基準が満たされない場合はリスク志向的になり,探索的な選択をすることが予測される. 本研究はギャンブル選択課題を用いて,意思決定の探索傾向とリスク態度を検証した.その結果,損失が見込まれるほどリスク志向的になり,探索的な選択をしやすいというモデルの予測が支持された.
  • P1-066
    中村 脩人 (立命館大学)
    服部 雅史 (立命館大学総合心理学部)
    本研究では,類推において,検索に伴う意識的な努力が,想起されやすいベースにどのように影響を与えるのか検討した.ターゲットからベースを検索するときの意識的な努力が,想起されるベースに与える影響を検討した結果,意識的な努力と想起されやすいベースの種類の間に関係がみられなかった.実験参加者に意識的な努力を伴わない検索を促すことができなかったため,検索に伴う意識的な努力と想起されやすいベースの種類に関係がみられなかったと考えられる.
  • P1-068A
    南條 啓孝 (自然科学研究機構生理学研究所)
    山本 哲也 (自然科学研究機構生理学研究所)
    David Aguilar-Lleyda (理化学研究所脳神経科学研究センター)
    赤石 れい (理化学研究所脳神経科学研究センター)
    定藤 規弘 (自然科学研究機構生理学研究所)
    本研究は, 機能的磁気共鳴画像法 (fMRI)により, ヒトのメタ認知プロセスの神経基盤を明らかにすることを目的とした. 確信度評定を伴う連続的な知覚意思決定課題を健常成人34名が行い, その間の脳活動を撮像した. その結果, 確信度に応じて前内側前頭前野が, 判断を切り替える制御過程に背側前帯状皮質が関係することを示した. 更に, 前帯状皮質周囲領域に両プロセスに共通する活動が確認でき, メタ認知プロセスに空間的な関連性が示された.
  • P2-002
    伊藤 毅志 (電気通信大学)
    金泉 則天 (電気通信大学)
    本研究では、招待隠匿型の多人数不完全情報コミュニケーションゲームである「5人人狼」を題材に、プレイヤの熟達過程を調べた。5人人狼では、熟達するにつれて村人が占い師をカミングアウトする「村人CO」と呼ばれるプレイが現れる。このプレイに着目して、どのようにこの村人COが獲得されていくのかを調べた。その結果、村人COのメリットを認識し、それを実践を通して手続き的な知識を獲得することで違和感なくプレイできるようになっていく過程が観察された。
  • P2-009A
    多田 由彦 (中央大学)
    本稿は同時手番のgames with unawareness における discovery process について検討する. 本稿は各プレイヤーが他のプレイヤーたちの直前のプレイに対して最適応答を取るような myopic discovery process を定式化し, プレイヤーたちのプレイがある特定のCURB集合の中に収まることを示した.
  • P2-014A
    髙橋 奈里 (名古屋市立大学芸術工学研究科)
    佐藤 優太郎 (名古屋市立大学芸術工学研究科)
    小鷹 研理 (名古屋市立大学芸術工学研究科)
    スライムハンド錯覚は, 主観的には皮膚変形を生起させるが, 過去の行動実験では, 固有感覚ドリフトと皮膚変形を十分に分離できていなかった. 本稿では, 固有感覚ドリフトを抑制するために, 実験として上下方向の実験レイアウトを適用した. 加えて, 引っ張りの強度によって, 錯覚効果に差異があるかを検討するために, 4つの異なるつまみ方を条件とした. 結果は, 固有感覚ドリフトを抑制した状態でも, 皮膚変形感覚が生起することが示された.
  • P2-016
    犬童 健良 (関東学園大学経済学部)
    本論文は心の多様体モデルを提案し,認知過程を場の量に依存する局所座標系間の変換として解釈した.認知的空間は認知的阻止の影響を受けると仮定される.認知的阻止は閉鎖性と創造性の双対性を有し,同時に,自己検出を抑制する再帰性を有する.ねじれた心は,認知的阻止の力による認知空間の曲がりの埋め込みにおける像である.ねじれた心を解釈するため,フレームシステム,ナッシュの埋め込み定理,双行列ゲームに対するラベリングシステムの適用が考察された.
  • P2-017
    廣田 章光 (近畿大学)
    本研究は問題発見と解決についてプロトタイプの社会に広く公開することの効果を対話の枠組みで考察をする。そして、開発者のデザイン行動のみならず、社会実験における「非開発者」のデザイン行動の存在と影響を示す。さらに非開発者のデザイン行動を開発者が観察することによって、新たなデザイン行動を生み出す場合があることを示す。この2つのデザイン行動について、開発者の気づかない問題の発見に向けて2つ対話の存在を明らかにした。
  • P2-034A
    澤田 和輝 (京都大学大学院教育学研究科)
    小池 光 (京都大学大学院教育学研究科)
    村山 新 (京都大学教育学部)
    西田 帆花 (京都大学教育学部)
    野村 理朗 (京都大学大学院教育学研究科)
    本研究は,美しさの知覚,畏敬の念,意味生成の観点から,芸術鑑賞においてどのような感動が触発−創造的活動への高い動機づけ−を引き起こすのかを検討した.その結果,絵画に対する畏敬の念や意味生成から生じる感動が触発を促すこと,また,畏敬の念や意味生成の効果を統制した場合に絵画の美しさは触発と関わらないことが新たに示された.
  • P2-035
    山田 雅敏 (常葉大学)
    本研究は,一人称なる自我の「わたし」を超越する<わたし>,すなわち無人称の自己に関する認知の解明を目的とする.方法として,呼吸を意識している時と,観念的虚構を想起している場合のそれぞれの脳活動と言語報告を検証した.その結果,呼吸を意識している時に前頭前野の脳活動の低下が示されたことから,呼吸により自我の働きが弱まる可能性が示唆された.また呼吸への意識と観念的虚構との切り替わりの際に,体感に関するクオリアの現出が認められた.
  • P2-041
    眞嶋 良全 (北星学園大学社会福祉学部)
    鈴木 凜太朗 (北星学園大学・社会福祉学部)
    市原 実夢 (北星学園大学・社会福祉学部)
    岩間 雅 (北星学園大学・社会福祉学部)
    桑原 彩 (北星学園大学・社会福祉学部)
    本間 大貴 (北星学園大学・社会福祉学部)
    吉田 崚人 (北星学園大学・社会福祉学部)
    本研究では,科学の非専門家が学術研究の成果をどのように評価するかについて,刊行形態と,科学に対する全般的な信頼と思考スタイルの影響を検討した。その結果,プレプリントの位置づけを理解している場合は刊行形態が評価を決めるが,プレプリントと査読論文が区別できていない状況では,科学への信頼,あるいは非分析的思考スタイルが影響し,特にプレプリントの評価は分析的思考スタイルに大きく影響されることが示された。
  • P2-049A
    松本 和紀 (東京電機大学)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    中村 紘子 (日本学術振興会,東京電機大学)
    本研究では,条件文の話者間の上下関係が条件推論の抑制に影響を及ぼすかをポライトネス理論に基づき検討した.ポライトネス理論によると社会的距離や社会的地位,要求量が曖昧な表現の利用に影響を及ぼすとされている.今回の実験では社会的地位に着目し,社会的地位の上下関係を操作したシナリオを用いて,条件推論の実験を行った.その結果,条件推論の抑制に追加条件文の有無の影響が確認されたが,上下関係による推論の抑制への影響はみられなかった.
  • P2-050A
    金子 晶史 (東京電機大学大学院)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    中村 紘子 (日本学術振興会,東京電機大学)
    本研究では,タイムプレッシャーの有無と視点(書き手・読み手)を操作し,視点やタイムプレッシャーの有無によって論理的な条件推論が促進されるか,抑制されるかを検討した.実験の結果,書き手の視点から推論する場合は推論の結論を受け入れやすく,書き手は自身の主張に強い確信を持っているという解釈が行われている可能性が示された.一方,タイムプレッシャーの有無による条件推論の受け入れやすさの差は見られなかった.
  • P2-056
    光田 基郎 (ノースアジア大学経済学部)
    絵本に描かれた「欺かれた振り」での2次的誤信念内容を大学生に理解させた際の後知恵効果の実験である。4肢選択のサリーアン型誤信念理解での後知恵条件では, 後知恵の干渉に対処する作業記憶負荷増に伴って2次的誤信念理解の下位技能の柔軟な運用が制約され, 技能のクラスタ分析で「欺いかれた振りで報復」や筋立ての再帰性理解のクラスターも得難い傾向を指摘。 キーワード:誤信念理解,欺かれた振り,文法、類推
  • P2-058
    佐々木 康佑 (静岡大学)
    西川 純平 (静岡大学)
    森田 純哉 (静岡大学)
    人間の思考は身体動作と結びつく.この結びつきの詳細を明らかにするために,本研究では,単語分散表現から多次元の数量的意味を抽出する手法を提案する.本手法は,単語分散表現のベクトル空間に,大きさ/速さ/丸さの軸を定義し,その軸に基づいて単語のイメージを生成する.この提案手法を検証するオンライン調査を実施した.その結果,記号と数量の変換機構を持つ人工物の開発可能性が示唆された.
  • P2-063
    青井 孝史 (北陸先端科学技術大学院大学)
    日髙 昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    前提文を満たす名辞の順序が全順序としては1つに定まらない不確定な名辞系列問題の推論では、複数の全順序を暗示する単一のメンタルモデルが構築されるとする説が有力である。本研究では80人の実験参加者の不確定な名辞系列問題に対する回答パタンを分析し、先行研究で提案されたモデルのうち名辞間の対称性を認識しやすい異性体モデルが有力だと示唆する結果を得た。また、名辞の対称性を利用して推論中の認知負荷を下げようとする対称性バイアスの存在も示唆された。
  • P2-064
    福井 麻紀 (香川大学大学院地域マネジメント研究科)
    西中 美和 (香川大学大学院地域マネジメント研究科)
    幼児教育の現場において知的発達の遅れよりも,落ち着きがない,集団に適応できないなどの行動特徴を持つ「気になる子」が増加し,保育者は対応に困難を抱えている.本研究では,保育現場においてどのような行動特徴を有する子どもを保育者が気になる子と認識し,どのような問題があるのかを明らかにする.それにより,対象児に合った支援策や方向性の契機とし,保育者の悩みの改善,また,早期発見・支援の実現に繋げる.
  • P2-067A
    大野 俊尚 (早稲田大学)
    三嶋 博之 (早稲田大学)
    本研究では,模倣可能な「リズム動作」があるパフォーマンスの方が,より「かっこいい」と評価されやすいことを仮説とし,「模倣可能な動作」がパフォーマンスの「かっこよさ」評価に影響を与える可能性について検討する。予備実験の結果から,評価対象のパフォーマンス未経験者であっても「かっこよさ」と「うまさ」を区別して評価すること,また,「模倣可能な動作」が「かっこよさ」評価に与える影響が,熟練者・未熟練者とで異なる可能性が示唆された。
  • P3-001A
    白砂 大 (追手門学院大学)
    香川 璃奈 (筑波大学)
    本田 秀仁 (追手門学院大学)
    本研究では、判断の正確さを高めるためのシンプルな介入策(ブースト)として、課題冒頭に「1秒待たせる」という手法を提案した。二者択一課題を用いた行動実験の結果、待ち時間がない群と比べて、1秒の待ち時間がある群の方が高い正答率を示した。また、マウストラッキングにより参加者の判断プロセスを検証した結果、待ち時間が衝動的な判断を抑制していることが示唆された。1秒待たせるという介入策は、非常に低コストであり、他の場面への応用可能性も期待される。
  • P3-002
    新堀 耕平 (静岡大学情報学部)
    西川 純平 (静岡大学)
    長島 一真 (静岡大学創造科学技術大学院)
    森田 純哉 (静岡大学)
    記憶のエラーは個人属性や感情状態など様々な要因により生じる.エラーは,想起されるべきでない情報が思い出されるコミッションエラー,想起すべき情報を思い出すことができないオミッションエラーの2種類に大別される.本研究では,これらのエラーをクラウドソーシングにより取得し,それらとACT-Rモデルとの整合を検討した.結果,感情評価項目とモデルパラメータとの間に相関がみられ,個人傾向を推定可能であることが示された.
  • P3-016
    松中 玲子 (東京大学)
    宮内 英里 (筑波大学)
    谷沢 智史 (東京大学)
    岩沢 透 (東京大学)
    開 一夫 (東京大学)
    社会的相互作用場面において協働が成立している際は、お互いの脳活動も同期しやすくなることが近年報告されている。一方で、集団としての創造的思考が求められるような状況下において、互いの脳活動がどのような様相を見せるかについては、まだ明らかでない。そこで本研究は、創造的思考を要する課題をグループで行っている際の脳活動をNIRS(近赤外分光法)で計測し、グループ内の脳活動の同期度合いとグループにおける創造的思考力との関係性について検討した。
  • P3-022A
    小川 裕太 (日本大学 大学院 総合基礎科学研究科)
    小松 孝徳 (明治大学総合数理学部)
    福田 聡子 (日本大学 文理学部)
    大澤 正彦 (日本大学 文理学部)
    近年普及が進んできている家庭用ペットロボットには機体の交換可能性を備えているものが存在する.これにより長期のインタラクションが可能になった一方,機体交換を望まない意見がみられる.その原因の一つとして機体交換前後のロボットを同一視できない問題があると考える.本研究ではアンケート調査を行い同一視できない問題があることを明らかにし,同一視のされ方の特徴を分析する.
  • P3-025A
    市野 弘人 (東京電機大学)
    林 涼太 (東京電機大学)
    大用 庫智 (関西学院大学)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    樋口 滉規 (長岡技術科学大学)
    人間は観察による因果帰納において,相関ではなく非独立性を検出しているということが因果帰納モデルを用いた実験のメタ分析と,刺激を確率的に生成するシミュレーションによって示唆されている.本研究ではこの仮説を検証するために従来の因果帰納実験の枠組みを拡張し実験を実施した.結果は人間の因果帰納が独立よりも相関の検出に近いことを示しており,仮説は支持されなかった.また,人間は観察した情報をマージし単純化して因果推論に利用していることが示唆された.
  • P3-029A
    岩城 史享 (東京電機大学)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    本研究の目的はPlutchikの感情の輪という感情モデルの妥当性を検討することである.実験により感情語順序対の類似性,連想性のデータを収集し,それぞれネットワークを作成した.まず,類似性に比べ連想性の方がより大域的であることを示した.そして,作成したネットワークの構造と元々の感情の輪を比較し,大部分の構造は等しいが,「恐れ」と「驚き」の位置関係が異なるという結果を得た.
  • P3-034
    横溝 賢 (札幌市立大学)
    平尾 実唯 (株式会社ニトリ)
    自己を不在にしたままユーザを客体化して見ようとする人間中心設計アプローチには環世界への志向が伴わず、デザイン行為に関係する当事者間に相互性が生まれにくい。そのように考えた筆者らは,短歌を取り入れた私中心のデザイン実践を試みた.具体的には現場に出向いて詠んだ短歌を題材にモビールを制作し、モビール歌会を通じた社会的なデザイン実践である。本稿では,一連の実践を省察することから,短歌がもたらす社会的なデザイン実践の知の在りどころを明らかにする.
  • P3-036A
    金子 祐二 (東北大学大学院教育学研究科)
    視野狭窄を持つ網膜色素変性症当事者の主観的視覚体験を再現するため,画像フィルタを提案し,その開発と応用の展望について報告する.本報告では画像処理手法により移動物体の除去と周辺視野領域のぼかし処理を行った.本処理により当事者の主観的視覚体験を一定程度再現できることを確認した.今後視線計測や適応性に関する研究を進めることで,人間の主観的視覚体験の発生機序に関する新しい知見が得られる可能性がある.
  • P3-047
    原田 悦子 (筑波大学)
    安久 絵里子 (筑波大学)
    椎葉 黎 (筑波大学)
    渡部 健 (筑波大学)
    富田 智晶 (沖電気工業(株))
    赤津 裕子 (沖電気工業(株))
    マニュアルを見ながら同一/類似の組立て課題を複数回反復する実験室実験を行い,その結果からどのような学習すなわちマニュアル情報の内在化が生じるか,その結果「マニュアルを見ずに組立てを行うと」どのような問題が発生するかを検討した.結果として,マニュアルなしで十分な課題達成が可能な場合とそうでない場合があること,いずれでも内在化されたマニュアル情報は組立て順序の情報を含まず,意味的構造化がなされていることが示された.
  • P3-057
    佐々木 健矢 (静岡大学情報学部)
    長島 一真 (静岡大学創造科学技術大学院)
    西川 純平 (静岡大学)
    森田 純哉 (静岡大学)
    自動運転車などの自律した機械を社会実装するためには,機械自体が直面する道徳的問題に対して,人間と整合する判断を行う必要がある.本研究では,人間とコンピュータの価値観のすり合わせを達成するため,二重過程理論に基づく人間の思考システムとしての道徳をモデル化する.この研究のステップとして,言語モデルと認知アーキテクチャACT-Rを組み合わせた事例ベースな道徳判断のプロトタイプモデルを構築し,ケーススタディとしてのトロッコ問題に適用する.
  • P3-059A
    岡 隆之介 (三菱電機株式会社)
    内海 彰 (電気通信大学大学院情報理工学研究科)
    楠見 孝 (京都大学)
    本研究の目的は,呈示された2つの単語の類似点を文で回答することで参加者の結晶性知能の一側面を測る課題である,日本語版Semantic Similarity Test(日本語版SST)の作成と妥当性を検討することである.予備調査ではSSTの元論文を参考に,日本語版SSTの項目と採点基準表を作成した.本調査では,日本語版SSTが収束的妥当性の指標である令和版語彙数推定テストと弱い正の相関係数を持つことを確認した.