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  • OS06-1
    公募発表
    櫃割 仁平 (京都大学大学院教育学研究科)
    上田 祥行 (京都大学人と社会の未来研究院)
    尹 優進 (京都大学大学院教育学研究科)
    野村 理朗 (京都大学大学院教育学研究科)
    本研究では,385名が人間もしくはAIによって創作された俳句の評価と判別を行った。人間とAIの共創俳句の美しさが最も高く評価され,人間作とAI作の美しさは同等であった。また,参加者は人間とAIの作品を判別できなかった。これは人間とAIの共創が優れた創造性を持つことを示している。また,AI俳句の美的評価が高いほど,人間が作ったと誤認される傾向が見られた。これはAI芸術がアルゴリズム嫌悪により過小評価されている可能性を示唆している。
  • OS06-2
    公募発表
    村井 源 (はこだて未来大学)
    奥山 凌伍 (公立はこだて未来大学)
    富田 真生 (はこだて未来大学)
    保土沢 朋和 (はこだて未来大学)
    金刺 智哉 (はこだて未来大学)
    基盤モデルや生成系AIと呼ばれる大規模言語モデルによる物語自動生成では,文脈の矛盾や意味の破綻が生じやすく,また表現の詳細を制御できないという課題があった.本研究では,既存の作品から物語の展開や描写の構造を抽出し,従来の物語構造分析の手法と基盤モデルを組み合わせることで,物語の出力を制御する手法を提案した.また提案手法の技術的実現性を確認するため推理物語での会話を例としてケーススタディ的な分析及び自動生成を行った.
  • O1-002
    菊地 浩平 (筑波技術大学)
    須永 将史 (小樽商科大学)
    七田 麻美子 (埼玉大学)
    本論文では,企業研修での質疑応答場面を対象とした相互行為を分析する.とくに,質疑応答場面において,参加者からの質問に回答した講師側が,自分がおこなった回答に対して「答えになっていたか」と言及する発言に注目する.このような発言はしばしば,「認識可能な反応の不在」に続けて産出される.この発言によって参与者が何を達成し,質疑応答という場面が成立しているのかを考察する.
  • O2-003A
    髙木 利輝 (東京電機大学 大学院 理工学研究科 情報学専攻)
    小林 春美 (東京電機大学)
    安田 哲也 (東京大学)
    本研究では,部分名称の教示を大人の実験者1が行い、子どもがそれを見たあとで、それについて知らない別の大人の実験者2に子どもが教えるという実験において取得された映像データを解析した。結果から、5歳児では、実験者が子どもの顔を見続けて教示を行うよりも、事物と子どもを交互に見て教示を行う方が、子どもの部分名称の理解はより正しくなり、かつ子ども自身が他者に教える場合でも、指さしを適切に行なって部分名称箇所を示すことがわかった。
  • O2-004A
    山本 敦 (早稲田大学人間科学学術院)
    牧野 遼作 (早稲田大学人間科学学術院)
    本発表では、マルチモーダルな相互行為研究をその黎明期から牽引し続けた相互行為分析者C. Goodwinの分析手法および概念の検討を行う。彼の分析概念は、人間の認知的・社会的な実践を構成する具体的行為の一般的かつ重要な相互行為的特徴を記述するものだが、独創的かつ難解なうえに数が多く、その妥当性や必要性に関して批判がなされることがある。本研究では、彼の分析手法をその基盤にある相互行為観から整理し、大まかな全体像を呈示することを目指す。
  • P1-004
    ギエム ゴック チャム (法政大学大学院)
    川﨑 貴子 (法政大学)
    田中 邦佳 (法政大学)
    本研究ではベトナム人日本語L2学習者が日本語の歯擦音を学習する際、母語の方言と習得レベルがどのように影響するかを調査するため、発話実験を行った.北部・南部方言話者の両方で日本語の歯擦音は区別されていた.しかし、南部方言の初級学習者の一部では、区別が獲得できていないケースも見られた.実験の結果、上級学習者は習得レベルが高まるにつれて、日本語の歯擦音を明確に区別することができるようになることが示された.
  • P1-013
    小松 孝徳 (明治大学総合数理学部)
    杉田 莉子 (明治大学総合数理学部)
    中村 聡史 (明治大学総合数理学部)
    擬音語,擬態語,擬声語などの総称であるオノマトペは,一般的な語彙と比較すると臨場感にあふれ,繊細な表現を可能としており,コミック作品においても頻繁に使用されている.本研究では,そのようなコミック作品においてオノマトペが使用されていないコマに着目し,その意味とその効果について考察を行った.その結果,コミック作品における重要な場面では,むしろオノマトペが使用されていないという傾向を把握することができた.
  • P1-015A
    前田 晃弘 (北陸先端科学技術大学院大学)
    鳥居 拓馬 (東京電機大学)
    日髙 昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    単語分散表現は,そのベクトル演算が単語の類推関係に対応するなどの数理的な性質を示す.この性質は単語共起分布に由来するが,その数理的構造は未解明である.本研究は,二部グラフを用いる分析手法により,バイクリークと呼ばれる完全二部部分グラフが,単語ベクトル間の関係性を数理的に特徴付けるとともに,言語上の意味関係に対応することを示す.さらに共起関係が二項関係であることに起因して,単語共起分布に代数構造が現れる機序を明らかにする.
  • P1-016
    坂中 武蔵 (公立はこだて未来大学)
    寺井 あすか (公立はこだて未来大学)
    本研究では,なぞかけの特性と受け手の個人差がユーモア認知に与える影響について,なぞかけ生成システムにより意味構造に考慮して生成されたなぞかけを用いたアンケート調査により検証した.結果として,自閉症スペクトラム指数と神経症傾向は,なぞかけの前提とオチの関係が異なるなぞかけに対するユーモア認知に対して影響を及ぼすのに対し,外交性はなぞかけのオチの意外性(類似度)が異なるなぞかけに対するユーモア認知に影響することが示唆された.
  • P1-019
    川﨑 貴子 (法政大学)
    田中 邦佳 (法政大学)
    ギエム ゴック チャム (法政大学大学院)
    本論文では、2つの無声歯擦音をL1に持つベトナム語話者が、日本語の ɕ を習得する際、母語音との区別はどうなされるのかを音響的に調査した。ベトナム語話者は、2つの歯擦音をCoG により区別するが、日本語にあるɕ はベトナム語の2音とは異なるF2の値を示す。ベトナム語を母語とする学習者の発話を分析したところ、母語にはF2で区別される歯擦音が無いベトナム語母語話者は日本語の歯擦音の発音においても、CoGのみで区別していることが示唆された.
  • P1-021
    髙橋 麻衣子 (東京大学先端科学技術研究センター)
    近藤 武夫 (東京大学先端科学技術研究センター)
    教科書には本文情報だけでなく,それを補足する情報が本文周辺に配置されている。本研究では,これらの補足情報を本文中に挿入することで,特に読みスキルの低い読み手の理解が促進されるかを検討した。56名の中学生を対象として,補足情報が本文周辺にあるレイアウトAと本文内に挿入されているレイアウトBの理解度や読みやすさを測定した。その結果,特に読みに苦手感のある参加者に限ってレイアウトBの理解成績が高いことが示された。
  • P1-023A
    韓 旼池 (京都大学大学院)
    日常のコミュニケーションでは標準的な発話音声から逸脱した発話音声が現れうる.本発表では,母音の(非語彙的な)延伸を題材に,逸脱した発話音声の規則性を追究する.音声・音韻・統語的な要因による延伸の生起位置の傾向を観察する.観察対象は,生起位置のパターンが目立つ強度強調の母音の延伸である.母音の延伸の生起パターンの存在,声の高低と独立した母音の延伸,統語的な要因に左右される延伸の位置について述べる.
  • P1-024
    本多 明子 (神戸女子大学)
    言語獲得初期の子どもの発話には,動詞letを含む使役構文(ここではLet使役構文と呼ぶ)が観察される.本研究では,Let使役構文の中でも出現頻度が高い表現形式について調査結果を示し,認知言語学、構文文法の観点から他の関連する使役構文との比較を行い、Let 使役構文の特性を提示する.本研究は、原因と結果の二つの事象を子どもがどのような表現形式を用いて発話しているのかを調べ,認知発達と言語獲得の関連性を探究することを目的とする.
  • P1-025
    篠原 和子 (東京農工大学)
    岡野 一郎 (東京農工大学)
    宇野 良子 (東京農工大学)
    英語学習,英語技能習得を自己拡張のひとつと捉え,メタファー文の評定課題によって探索した.日本語母語話者の大学生が英語学習に関する意識をどのようなメタファーに近いと捉えるか,主体性の拡張や身体所有感の拡張に関連する表現を含む文を用いて調べた結果,英語が「好き」「得意」という主観的自己意識,「習熟度が高い」という客観的英語力のいずれの場合でも,「接近可能な屋外の空間」のメタファー表現に英語学習意識との関連が現れやすいことが示唆された.
  • P1-033
    望月 正哉 (日本大学)
    太田 直斗 (名古屋大学)
    本研究では,形容詞の情動価と7つの観点に関する感覚強度を収集することで,感覚強度が抽象性にどのように寄与するのかを探索的に検討した.その結果,聴覚の強度と抽象度の間に有意な正の相関がみられたほか,特定の感覚への関与を示す度合いが低い,すなわち複数の感覚への関与度が高い形容詞の抽象度は高かった.本稿では,さらに抽象度と感覚情報の関連について議論する.
  • P1-035
    加藤 祥 (目白大学)
    浅原 正幸 (国立国語研究所)
    日本語では,同じ語であっても,様々な表記を選択することが可能であり,表記ゆれが生じる.表記ゆれの原因は文脈や用法において説明される傾向にあるが,表記の違いによる読み手の認識の違いは明らかではない.そこで9語の名詞を調査対象とし,語(名詞)を刺激とした一般的な日本語話者の想起語の異同を調査した.想起される語は表記によって異なる傾向があり,受容や生産の傾向との関係が示唆される.
  • P1-037A
    木村 陽菜 (東京電機大学大学院理工学研究科情報学専攻)
    安田 哲也 (東京大学)
    小林 春美 (東京電機大学)
    本研究では、コミュニケーションタスクにおいて、伝え手により自発的に産出された発話の継続時間が、曖昧な句構造の解釈にどのように寄与するのか、聞き手の正誤を基に検討した。その結果、句構造の違いによって発話継続時間が異なり、またその違いが回答の正誤にも影響することがわかった。最初のチャンクにおいて、発話継続時間が句構造の違いを反映していたこと、またそうした情報が発話を聞いた回答者の解釈に影響を与えていた可能性が示唆された。
  • P1-049
    粟津 俊二 (実践女子大学)
    黙読時に主観的に経験される内なる声(以下IRV)について,日本語文のIRVを認識する程度と,抽象性の高い数学概念や数式のIRVを認識する程度の関係を探索した.68名によるアンケートへの回答を分析したところ,日本語文IRVを認識する程度と数学概念・数式のIRVを認識程度には有意な相関がみられた.しかし偏りが見られ,数学概念や数式のIRVを認識するには,その内容に関連する知識や経験が寄与する可能性が示唆された.
  • P1-051A
    大屋 里佳 (東京大学)
    佐藤 有理 (お茶の水女子大学)
    福田 玄明 (一橋大学)
    植田 一博 (東京大学)
    私たちが話し手の言語表現(感想)からその意味(味)について推定するとき,どうすれば推定が成功しやすいのだろうか.本研究では,二者間で味覚言語表現を手がかりに,相手が飲んだコーヒーを推定する実験を実施した.実験では訓練と推定をおこなうが,訓練時に推定者が相手と同じコーヒーを飲用する条件としない条件を設け,味の意味空間のすり合わせができる飲用条件の方が,非飲用条件よりも推定が成功しやすいのか検討した.本発表では現時点での結果を報告する.
  • P1-052
    藤木 大介 (広島大学)
    近年,対話形式を模した文章の利用が増えた。しかし,先行研究の知見から,対話型テキストは内容を理解するための形式として適さないようである。そのため,読み手にとって重要な意思決定につながる情報の提示が対話型テキストでなされてよいか検討すべきである。そこで本研究では「アジア病問題」を対話型テキストで提示した場合の判断の仕方について検討した。その結果,選択肢のフレーミングとは独立にリスクテイクする傾向が強まることがわかった。
  • P1-058A
    Wenlian Huang (北陸先端科学技術大学院大学 橋本研究室)
    Takashi Hashimoto (北陸先端科学技術大学院大学)
    本研究は人間の身体的な体験が言語表現に反映されるという認知言語学の考え方を基盤として,日中多義語「上がる」「上(shàng)」について,イメージスキーマ・ネットワークの類似点・相違点を明らかにし,その比較から日中言語話者の認知の違いを探求することを試みる.本稿ではそれぞれの意味カテゴリを分析し,「上がる」は9種類,「上(shàng)」は8種類に分類した.そして,その分析を元にイメージスキーマ・ネットワークの一部を描いた.
  • P1-059
    川端 良子 (国立国語研究所)
    松香 敏彦 (千葉大学)
    コソア指示詞の文脈指示用法に関する研究では,指示対象に対する会話参加者の知識がコソアの各系列の使い分けに影響すると考えられてきた。本発表は条件が異なる指示対象へのソ系指示詞の使用傾向を『日本語地図課題対話コーパス』を用いて定量的に分析した結果について報告する。
  • P1-060
    猪原 敬介 (北里大学一般教育部)
    上田 紋佳 (北九州市立大学文学部)
    人工文章ではない自然文章からの偶発的語彙学習を捉える方法論として,眼球運動測定と読了後の不意打ち語彙テストを用いたGodfroid et al. (2018) を参考として,日本語・縦書きにて実験を行った。その結果,先行研究の結果を再現し,さらに一般語彙力,内容理解,文章を楽しむことなどの主観的体験の質が語彙学習へ影響する可能性を示唆した。
  • P2-001
    浅原 正幸 (国立国語研究所)
    加藤 祥 (目白大学)
    高松 純子 (日本経済新聞社)
    本研究では、オープンデータである『日本経済新聞記事オープンコーパス』に対して、言語受容情報を収集した。一般の方が読んで語・文節単位にどのような印象を受けるかをアンケート調査するとともに、テキストの読み時間を収集した。さらに印象評定情報と読み時間を対照し、自然さ・わかりやすさ・古さ・新しさ・比喩性の印象と読み時間の関係について検討を行った。
  • P2-011
    宇野 良子 (東京農工大学)
    古宮 嘉那子 (東京農工大学 大学院 先端情報科学部門)
    浅原 正幸 (国立国語研究所)
    従来の言語学的手法では、データ量の大きさから包括的な新動詞のリストを得ることが困難であるという課題があった。そこで、本研究は複数の大規模アンケートを行うことで、オノマトペ由来の新動詞の包括的なリストを得る方法を構築すること試みた。特に、新動詞とその由来となったオノマトペの類像性の比較が分析に有効であることを示した。
  • P2-016
    犬童 健良 (関東学園大学経済学部)
    本論文は心の多様体モデルを提案し,認知過程を場の量に依存する局所座標系間の変換として解釈した.認知的空間は認知的阻止の影響を受けると仮定される.認知的阻止は閉鎖性と創造性の双対性を有し,同時に,自己検出を抑制する再帰性を有する.ねじれた心は,認知的阻止の力による認知空間の曲がりの埋め込みにおける像である.ねじれた心を解釈するため,フレームシステム,ナッシュの埋め込み定理,双行列ゲームに対するラベリングシステムの適用が考察された.
  • P2-018A
    宮本 真希 (北陸先端科学技術大学院大学)
    日髙 昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    近年,マンガはその高い情報伝達性から,情報伝達の手段としても利用されている.マンガは,言語情報と視覚情報の両方を併存させる独特の表現形式によって製作される.マンガの構成要素の中でも,装飾文字「描き文字」は,その特徴を顕著に有している.本研究では,描き文字が付加された場面の情報伝達性にかかわる要因を実験的に検討することで,マンガの高情報伝達性を実現する要因を明らかにすることを目指す.
  • P2-020
    中村 太戯留 (武蔵野大学)
    ユーモア理解においては,ヒトの生存と関連性のある事柄の見いだしと,その事柄を見いだしたヒトを保護するフレームの2つが重要であると,ユーモア理解の「見いだし」理論では考えられている.優越理論,エネルギー理論,そして不調和解消理論などの他の理論で提案されてきた概念は,この2つに発展的に統合できる可能性が考えられる.本研究では,ユーモアの事例を参照しつつ,この2つの概念装置を用いた説明可能性について検討する.
  • P2-030
    大田 琉生 (金沢工業大学)
    橋本 雅生 (金沢工業大学)
    金野 武司 (金沢工業大学)
    人間が発する言葉には字義通りと言外の二重の意味が込められており,この仕組みを解明するために取り組まれた先行研究では,この二重の意味を学習する計算モデルは,1つの記号に異なる意味が割り当てられた状態を解決できないと考えられた.我々は,リーダーシップを調整する方法を考案し,計算機どうしのシミュレーションでは高いパフォーマンスを発揮することができたが,人を相手にした場合にはうまく機能しないことが実験により確認された.
  • P2-031
    越智 景子 (京都大学)
    酒井 奈緒美 (国立障害者リハビリテーションセンター研究所)
    角田 航平 (国立障害者リハビリテーションセンター病院)
    発話の流暢性の障害である吃音の生起について、発症が多い年代である幼児を対象に、発症メカニズムを説明するモデルの観点から、語彙の分散表現に関して定量的に分析した。吃音児10名の親子の遊戯場面の会話の分析の結果、親の発話の直後に子どもが発話する場合、その語彙の距離が遠い、すなわち類似単語の繰り返しでない発話が起こるときに、幼児にとっての負荷が高く吃音が生じやすいことが示唆された。
  • P2-036
    山森 良枝 (同志社大学)
    本稿では、 誤謬推論における前提pは新情報qの動因ではなく、別に、当のcommon groundと非整合的な関係にある隠れた前提xがその動因であるとし、xと整合的なuncommon groundと非整合的なcommon groundの二重の背景をもつ誤謬推論の情報構造がその生成に深く関係していることを提案する。
  • P2-039
    定延 利之 (京都大学)
    鄭 雅云 (京都大学)
    本発表では、度数がデキゴトの数よりも1つ多く表現される(例:失敗が2つで「失敗が2度重なる」)という現象について、これが日本語だけでなく台湾華語についても認められることを、実例観察とアンケート調査により明らかにした。さらに、話し手が心内で述語を形成する段階が、観察対象となる各要素への属性付与の後でもよいと考えることによって、この現象を、度数がデキゴトの数どおりに表現される現象とともに、先行研究とは異なる形で説明した。
  • P2-048A
    阿部 廣二 (東京都立大学人文科学研究科)
    本論では、重いものを受け渡す際に産出される「もらった」という掛け声の相互行為上の機能を検討することを目的として、祭りの準備過程における「ぼや」の受け渡し場面を分析した。その結果、第一にぼやの担い手が二番手に移ったことを示すこと、第二に受け渡しのやり方を理解したことを示すこと、第三に三番手に受け渡し開始を予示すること、第四に活動のリズムを作ることといった相互行為上の機能がある可能性を示唆した。
  • P2-049A
    松本 和紀 (東京電機大学)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    中村 紘子 (日本学術振興会,東京電機大学)
    本研究では,条件文の話者間の上下関係が条件推論の抑制に影響を及ぼすかをポライトネス理論に基づき検討した.ポライトネス理論によると社会的距離や社会的地位,要求量が曖昧な表現の利用に影響を及ぼすとされている.今回の実験では社会的地位に着目し,社会的地位の上下関係を操作したシナリオを用いて,条件推論の実験を行った.その結果,条件推論の抑制に追加条件文の有無の影響が確認されたが,上下関係による推論の抑制への影響はみられなかった.
  • P2-058
    佐々木 康佑 (静岡大学)
    西川 純平 (静岡大学)
    森田 純哉 (静岡大学)
    人間の思考は身体動作と結びつく.この結びつきの詳細を明らかにするために,本研究では,単語分散表現から多次元の数量的意味を抽出する手法を提案する.本手法は,単語分散表現のベクトル空間に,大きさ/速さ/丸さの軸を定義し,その軸に基づいて単語のイメージを生成する.この提案手法を検証するオンライン調査を実施した.その結果,記号と数量の変換機構を持つ人工物の開発可能性が示唆された.
  • P2-060
    趙 鵬群 (神戸大学)
    巽 智子 (神戸大学)
    本研究では,中国語会話における話題転換の判断に使われる手がかりを心理言語学的な実験により検証した.その結果,先行研究で話題転換部の「手がかり」とされる要因の中には,談話標識,質問表現,情報提供,笑い,沈黙の5つの要因が中国語のリアルタイムの話題転換の判断に正の影響を与えることがわかった.また,話題転換部の「手がかり」が多いほど話題転換が判断されやすくなること,そして異なる談話標識が話題転換の判断に様々な影響を与えることが示された.
  • P2-062
    谷口 洋志 (京都大学 )
    本発表は,現代日本語のコピュラ否定文(「-ではない」など)が,現実の発話場面に於て,いつ用いられうるのか検討するものである.コピュラ否定文の使用は,ともするとGriceの「量の格率」に違反しうる.しかし,話し手の心内環境に於て,①肯定/否定のみに関心が向いているとき,②表現や内容の心内検索が完了していないとき,③否定する箇所が聞き手と十分に共有されていないときは,相対的にコピュラ否定文が使用しやすくなる.
  • P3-012A
    西畑 千哲 (東京電機大学大学院理工学研究科情報学専攻)
    安田 哲也 (東京大学)
    小林 春美 (東京電機大学)
    本研究では、エージェントの含意の推論能力を参加者が見積もるとき、操作経験が与える影響について調べた。実験で参加者は、協調経験後にエージェントに文脈を踏まえた要求をされ、未知の乗り物に補給するエネルギー量を決定した。その結果、協調性が変化するエージェントを経験した参加者は、コンフリクトした情報をより利用する含意推論を行った。エージェントとの協調経験は含意推論に影響を与える可能性がある。
  • P3-015
    佐藤 央一 (公立はこだて未来大学大学院)
    村井 源 (はこだて未来大学)
    本研究は,指示文の読解を補助するアプリケーションを開発することを目的とした.読解困難性が高いと考えられる媒体を分析して読解困難性の原因を分類し,自然言語処理の手法を用いてそれぞれの原因を改善するアプリケーションを作成した.分析対象として,カードゲームのテキストを選択した.結果,特有の語彙の意味や関連語を表示することは読解補助に有効である可能性が示された.今後,本研究で着手しなかった別の読解困難性の原因について改善することを行いたい.
  • P3-026
    黒田 航 (杏林大学 医学部)
    CMU Pronouncing Dictionary を使って,単語の綴りと発音の対応が理想的な1対 1対応から外れている程度を,二つの方法で定量評価した.一つは必須度の高い資源中の4,290語にの綴りと発音の対応の定量評価で,もう一つは英語とドイツ語の高頻度語形を同じ条件で比較.これらから,英語での対応が一対一から大きく外れている事がわかった.
  • P3-028A
    澤田 知恭 (筑波大学大学院 人間総合科学学術院 心理学学位プログラム)
    原田 悦子 (筑波大学)
    話者交替の際,次話者は自らの発話を,十分な情報が手に入った時点で計画し始めるとする早期仮説が提案されている。この場合,次話者にとって現話者の発話の聴取理解と,自らの発話計画による二重課題状況が頻繁に発生する。先行研究では若年成人を対象に,特定の言語構造に依存した操作を用いて仮説が検討されているため,本研究では,若年成人と高齢者を対象に,発話に含まれる情報の十分性を実験的に操作することで,次話者が発話を計画するタイミングについて検討した。
  • P3-031
    臼田 泰如 (静岡理工科大学情報学部情報デザイン学科)
    本研究では,日常会話において,それについて話すことに社会的・認知的負担がある困難な話題に対し,会話参加者はどのように対処しているのかということの一端を明らかにする.本研究では,そのひとつの事例として,家族の感染症の予防ということがらが話題にされている場面を取り上げる.当該事例では,当該の困難さが参与者の成員カテゴリーに関連する形で生じている一方,その困難さへの相互行為的対処も,その成員カテゴリーをさらに利用することでなされている.
  • P3-039A
    鄧 瑾瑄 (京都大学大学院)
    現代日本語共通語では,「だと思う」「ですね」のように,自立性のない判定詞「だ・です」が発話冒頭に現れうる.本発表では,発話冒頭において「だ・です」の出現が義務的な場合,任意的な場合,不自然な場合の観察を通して,発話冒頭の「だ・です」は,先行研究での代用語ではなく,先行文脈を会話参加者の間で共有されている情報として明示する行動であると主張する.
  • P3-042
    井関 龍太 (大正大学)
    手書き文字の美しさの印象について異なる字種を通して共通の説明変数を見出すことが課題となっている.本研究では,文字の形態の複雑度と左右バランスに注目し,これらの説明変数が文字のタイプ,字種,書き手のそれぞれの層できれいさの評価にどのように貢献するかを検討した.その結果,左右バランスはどの層でもきれいさの評価に影響することがわかった.一方,複雑度については,書き手個人の平均からのずれのみが負の影響をもたらすことが示唆された.
  • P3-048A
    西内 沙恵 (北海道教育大学)
    本発表では多義語の心的実在性を検討するために,想起テストによって母語話者の言語直感を調査した結果を報告する.多義語のメカニズムを説明する基本原理に対して,その心的実在性を批判する立場に,用法説とアーティファクト説がある.小学5年生と大学生を対象に,「甘い」を題材に想起テストを実施した結果,想起される語義の偏りの変化と新規的な例文の産出という2つの説に沿わない結果が得られた.また語義のカテゴリー化関係から多義語の心的実在性を主張する.
  • P3-056
    谷 茉利子 (京都大学大学院)
    本発表は,日本の匿名SNSにおける「打ちことば」についての明示的な主張を質的に分析し,言語イデオロギーの特定を試みた.結果,いわゆる「正しい」表記とのずれに関するメタ語用論的言説からは,表記のずれによる生理的・心理的影響,次いで送り手の社会的イメージの低下を反映するものが多く観察された.「正しい表記を使うべき」という規範は,人々の「打ちことば」への態度に強く結びつき,時に送り手の人物像の評価にまで関与し得ることが示唆された.
  • P3-059A
    岡 隆之介 (三菱電機株式会社)
    内海 彰 (電気通信大学大学院情報理工学研究科)
    楠見 孝 (京都大学)
    本研究の目的は,呈示された2つの単語の類似点を文で回答することで参加者の結晶性知能の一側面を測る課題である,日本語版Semantic Similarity Test(日本語版SST)の作成と妥当性を検討することである.予備調査ではSSTの元論文を参考に,日本語版SSTの項目と採点基準表を作成した.本調査では,日本語版SSTが収束的妥当性の指標である令和版語彙数推定テストと弱い正の相関係数を持つことを確認した.
  • P3-061A
    西川 純平 (静岡大学)
    森田 純哉 (静岡大学)
    著者らは認知モデルを活用した音韻意識形成支援システムの開発に取り組んできた.ユーザの音韻意識は,システムに搭載された複数のモデルへの選好として推定される.本稿では,この推定手法の評価のための実験デザインを検討する.システム出力に音声フィルタをかけることで,未成熟な音韻意識を模擬する.2名を対象とした予備実験の結果として,フィルタ間でユーザのモデル選好が異なる可能性が示された.今後は,参加者数を増やした実験による検証が必要である.
  • P3-062
    奥山 凌伍 (公立はこだて未来大学)
    村井 源 (はこだて未来大学)
    物語の感情状態及び遷移を推定する研究は国内外で積極的に行われている.しかし物語中のどのようなシーンで,読者の感情状態や遷移どのようであるかは,従来の研究において十分に明らかになっていない.そのため本研究では小説の映像化資料である映画が存在する5作品を対象として,物語シーンの機能と読者の感情状態に関する基礎的なデータセット構築を目的とした.本研究は対象作品の各シーンに対し,物語機能と感情のタグを付与することで関係性の抽出を行った.