研究分野
推論・問題解決
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O-1-2A速さと正確さのトレードオフの文脈では,時間をかけることでよい結果(正確な判断)を得られると考えられている。しかし従来,人の限られた認知資源,特に考えること自体に対するコストが考慮されていなかった。本研究では,資源合理性の枠組みに基づいて,思考コストを抑えつつ高い正確さを維持できるような適度な思考時間が存在するという仮説を立てた。そのうえで,理論(計算機シミュレーション)と実験(行動実験)の双方から,この仮説を検証した。
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O-1-3本研究では、人間が示す記憶に基づく誤った判断の性質について分析を進めた。具体的には、誤った判断は、全知全能ではない人間が記憶に不確実性がある場合に、環境から得られる手がかりに基づいて合理的な推論を行った結果生じているという仮説を立て、計算機シミュレーション、ならびに認知実験を実施して検証を行った。結果として、人間が示す誤った判断のパターンは合理的推論から生み出される誤りのパターンと極めて一致することが示された。
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O-1-4統計学の入門講義を履修している68名の学生が,2週の授業にわたって確率の基礎とベイズの定理を学習し,基本的なベイズ課題と3囚人問題に取り組んだ.基本的なベイズ課題を解決できる学習者にとっても,3囚人問題の解決は難しかった.特に,問題文から尤度に関する情報を読み取ることに大きな困難があった.尤度情報を理解し,正しい問題表象を構築できれば,正解が得られる可能性は高い.
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O-2-2過去,パフォーマーと観客間で生じる生理的同期の重要性は提案されてきたが,ダンスや音楽等のパフォーマンス場面については十分に検討されていない.我々はダンスバトルを企画し、現実のパフォーマンス時のダンサーと観客の心拍数を測定し,その同期を交差再帰定量化解析により検討した.結果,1)ダンサーと観客間に心拍同期が生じること、2)両者の社会的関係により,その程度が異なること、3)パフォーマンスの進行に伴い,その程度が変化すること,が示唆された.
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P-1-9数独は代表的な制約充足問題の一つである. 各マス目で候補となる値を探索的に確定させて解いていく際,人は網羅的に探索するわけではなく,部分的回答方法を用いた「解き筋」と呼ばれる概念(解き方の癖)が現れることがわかっている.本研究では,解き筋がどのように発生し,繰り返し練習する過程でパフォーマンスを向上させていくような熟達化過程にどのように影響を与えるのかを参加者1名分の学習データから追跡を試みる.
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P-1-14インターネット検索において,検索者が自身の必要とする情報やその入手方法を適切に把握していない(情報要求が曖昧な)場合がある.本研究では,Yahoo!知恵袋に投稿された質問文を,質問者の情報要求が言語化されたものと捉えて分析し,曖昧な情報要求が言語化されたときの特徴を探索した.外部のwebページを参照する回答が寄せられた質問文中で出現頻度が高くなる語を発見したが,情報要求の曖昧さとの関係性は今後検討する必要がある.
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P-1-26本研究では,複数名による創造活動において生じる相互作用過程を可視化・定量化する解析を提案し,有用性を実際のデータを対象に検討した.提案手法は,交差再帰定量化解析と呼ばれる,力学系の非線形時系列解析である.洞察問題やアイデア生成課題、絵画制作場面を対象に検討を行った結果,提案手法により,1)創作者間の潜在的な相互作用過程を抽出出来る可能性,2)フェイズ間の変化を直接比較出来る可能性,3)多様な場面を対象に適用出来る可能性,が示唆された.
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P-1-63本研究では、実験における物質との相互作用から科学的知識が構築される過程を明らかにすることを目的とした。Pickering(1995)の「Mangle of Practice」の視点を援用し小学3年理科「磁石の性質」の実験場面の子どもと物質(磁石や缶)との相互作用を分析した。その結果、自らの科学的知識に反する「物質の抵抗」に対し、現象を再現しようという「子どもの適応」の中で、創発的に科学的知識が構築されることが明らかとなった。
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P-1-64洞察問題では、定型的な思考や作業では解決できず、発想の転換やひらめきによって解決に至る。本研究は図形パズル“タングラム”を使用して、洞察問題の解決における協働の効果について検討した。実験には大学生22名が参加し、二人一組で「アヒル」のシルエットの完成に取り組んだ。完成したペアは11組中8組(72.7%)だった。本報告では、過去に実験から得られた単独でアヒル課題に取り組んだ結果と比較し、協働問題解決の効果について検討する。
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P-2-1人の推論時の心的表象を調べる課題として名辞系列問題があり,特に名辞間の全順序関係がひとつに定まらない問題を不確定名辞系列問題と呼ぶ。不確定名辞系列問題では、名辞間の関係を半順序で表現する心的表象が形成されることが示唆されている。この実験では、対称な名辞が存在しない問題においても名辞を対称だとみなそうとする対称性バイアスも示唆された。本発表では、この実験結果を説明する計算モデルの構築を目指し、その設計方針について議論する。
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P-2-9A本研究は標準的な状態空間モデルにおいて戦略の突出とフォーカルポイントを定式化する. さらに本稿はプレイヤーたちに与えられる情報集合によってフォーカルポイントの候補が絞られた時, その絞られた中からどれが最も各人の利得を高めるのかについて共有知識となっている場合には, そのフォーカルポイントをプレイすることを証明した.
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P-2-20本研究では,値札などで見られる数値の認知において,左端の桁が支配的な役割を果たすleft-digit effectを速度標識に適用し,運転速度に及ぼす影響をタイムプレッシャーの観点から検討した.例えば,速度標識が50 km/hから49 km/hに変わる場合,運転速度の有意な低下が期待される.実験結果から,タイムプレッシャーの有無に関わらず,速度標識によるleft-digit effectが確認された.
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P-2-29A人は将来の予測において,ポジティブな出来事がより起こりやすいという楽観主義バイアスを示すことが知られている.Garrett&Sharot(2014)は,ポジティブな情報をもとに信念更新を行いやすいという,信念更新の非対称性によって楽観主義が維持される.しかし,信念更新の非対称性の再現については疑問も呈されている.本研究はGarrett&Sharot(2017)の追試を行い,信念更新における非対称性が,日本人参加者でも生じるかを検討する.
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P-2-39A本発表では,既知の解決策よりもより良い代替案の探索と注意を制御する能力であるエフォートフル・コントロールの関係を検討した実験の結果を報告する.実験の結果,不適切な行動を抑制する能力と適切な行動を開始する能力の両方が低い場合と高い場合において,どちらか片方のみが高い場合よりも,既知の解決策に関係ない情報を探索する傾向が示された.このことは注意制御能力の低い場合と高い場合の両方で,代替解法を探索しやすい可能性を示唆している.
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P-2-56問題解決課題(Crack-the-Code)を用いた実験を行い,プランニングの構成要素に基づく発話カテゴリーを用いて課題遂行中の自発的な動作の機能の特定と分類を試みた.動作は情報の特定や整理,探索空間の制限や評価といった機能を持ち,問題解決の一助となっていることが推察された.解答の正誤との関連は明確には見出されなかった.
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P-2-61本研究の目的は,洞察問題解決におけるひらめきや行き詰まりと生体反応の関係を調査することである.実験では,アイトラッカーや腕装着型センサを使用し,18名の被験者の洞察問題解決における瞳孔径および心拍を計測した.結果,それぞれの思考状態が瞳孔径に違いとして現れ,インパスでは縮瞳し,問題の正答に向かい散瞳する様子が確認できた.これは今後の創造的問題解決に関する手法の発展に貢献する知見となり得る.
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P-3-2A本研究では,条件文の発話者の性格や追加情報を提供する主体(人間またはAI)が,条件推論の抑制に与える影響をポライトネス理論に基づき検討した. 先行研究では,気難しい相手に対する曖昧な発言は,訂正を意図したものと解釈されやすく,推論が抑制されることが示されている.本研究では,AIによる曖昧な発言が推論に及ぼす影響を実験的に検討し,AIによる曖昧な発言は相手の性格によらず,人間の場合よりも推論の抑制がされにくいことを示した.
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P-3-16本研究では,単語対を手がかりとして呈示することのみで連鎖型連想の拡がりを示す指標である前向流動(FF)が変化するかを検討した.実験1では,自由連想を2回行うことによってFFが上昇したことが確認され,実験2では,単に2回連想を行う統制群より,意味的関連度の強い単語対を呈示した群でFFが低下することが示された.以上から,単語対の呈示によって人の創造性に介入できる可能性が示唆された.
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P-3-30Banakouら(2018)の研究ではVR空間におけるアバターへの印象が内的動機付けや課題の成績に影響を与えることが示されている。プロテウス効果に関する研究では科学者アバターが主に使用されているが、高次の認知情報処理課題のパフォーマンスへどのように影響することが解明されていない。本研究ではアバターがハノイの塔課題に取り組む際の印象評価と内的動機付けへの影響を検討した。その結果、アバターへの印象評価に関係なく成績が向上することが示された。
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P-3-37本研究ではオンライン対話環境において創造的な議論を実践するための環境要因を探るために,複数の集団が互いにオンライン対話システムを介して接続していない/常時接続している/時間限定で接続している状況においてアイデア出しを課題とする実験を行った.その結果,常時接続している集団では問題解決に有用な発想の伝播が生じ,時間限定で接続していた条件では互いの案出偏向が類似する傾向がみられた.
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P-3-49A関連性理論によると発話解釈に認知効果と心的労力が影響を及ぼすとされる。本研究ではこの2つが発話の意図解釈にどう影響するかを実証的に示すことを目的とする。認知効果と心的労力の程度を3段階に調整した会話テキストを実験参加者に提示し、解釈などの反応の違いを分析する。最適関連性の理論では、発話解釈の際に労力最小の道を辿りながら認知効果を最大化するとされ、心的労力が解釈に大きな影響を与えることが予想される。
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P-3-60本研究では,特定のカテゴリに属するものを答える事例課題,一つの単語に関係する単語を列挙する放射状連想,連鎖的に単語をつなげる連鎖連想を使用し,実験前に連想を行うことが,後の概念合成課題の成績に影響するかを比較検討した.結果から,有意ではないものの,独創性得点において連鎖連想が関連度の低い単語対の概念合成を促すこと,カテゴリの切り替えを促すことで関連度の高い単語対の概念合成が促される傾向が示された.
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P-3-61蚊取線香を対象としたユーザビリティテストを実施した処,若年成人において顕著な課題遂行の失敗,課題遂行時間の長延化,説明書への依存,怖がり反応など,これまで高齢者層における情報機器との相互作用に特異的と考えられていたものと類似した反応が観察された.高齢者層にとっての「情報」,若年成人にとっての「火,物理的操作」という極めて基盤的知識が,人の外界との相互作用において持つ意味・機能について考察を深める.
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P-3-62In 2022, Miyata Seminar students started a compost project in Toyota City, involving collaboration with the University Co-op Cafeteria, local citizens and groups in Toyota City, Japan. Our goal was to get more people involved in composting their food waste at work and home. This study will illustrate the various interests surrounding composting and analyze what values lead citizens and groups to become involved with compost. The mindsets around food waste, and the contents of food waste, differ between businesses and households. These differences affect the values each of these groups assigned to food, food waste, and compost. This study will analyze the mechanisms and motivations necessary to sustain composting efforts.