研究分野

感情

  • O-2-3
    野村 亮太 (早稲田大学 人間科学学術院)
    佐藤 豪 (早稲田大学)
    映像の訴求力は,表現そのものだけで決まるのではなく,視聴者の情報処理も関与するため,直接観察することはできない.本研究では,瞬目情報だけから瞬目同期を引き起こす共通入力としての訴求力の再構成を試みた.再構成にあたって,パラメータの影響は大きくはなかったが,再構成された共通入力のピークは必ずしも印象に残ったシーンとは対応していなかった.今後,訴求力の性質に応じた生理指標データに適用していくことが有益である.
  • O-3-1A
    林 大輔 (日本たばこ産業株式会社)
    白石 祥之 (日本たばこ産業株式会社)
    近藤 涼香 (日本たばこ産業株式会社)
    志方 比呂基 (日本たばこ産業株式会社)
    本研究は,バーチャル空間においてアバターをまとって行われるコミュニケーションと,嗜好品摂取によって得られる心理学的効果との関係について,質的・量的研究の両面から検討した.その結果,一定のプロセスを経てコミュニケーション促進,セルフ・エンパワメント,ポジティブ気分の獲得という3つの効果が得られることが示された.得られた結果と装いや演技との関係を踏まえつつ,バーチャル空間でのアバターをまとったコミュニケーションについて考察する.
  • O-4-3A
    長島 一真 (静岡大学)
    森田 純哉 (静岡大学)
    認知モデルは,人間の属性を推測するためのツールとして使用される.認知モデルを使用すると,行動と認知特性の結びつきを実験的に仮定し,他者の特性帰属に伴うエラーを明確にできる.本研究では,ACT-Rモデルを使用して,「好奇心」に関する特性の帰属を検討した.先行研究において構築された複数の好奇心の認知モデルの振る舞いを可視化し,被験者の主観評価を行った.結果,モデル間での差異が見られ,モデルの振る舞いと特性の関連性が示唆された.
  • O-5-1
    馬場 龍之介 (静岡大学)
    森田 純哉 (静岡大学)
    表情は他者とのコミュニケーションに欠かせないメディアである.特に,他者の表情の模倣は,相手の好感度を高め,共通認識の形成に寄与するとされる.本実験は,参加者が置かれる立場が変化するサイバーボール課題を通し,表情がエージェントと参加者の関係に与える影響を調査した.結果,他者の表情は物理的構成のまま認識されるのではなく,感情を伴って解釈されることが示唆された.また自身の表情によって相手の印象が変化する可能性も示唆された.
  • O-5-2A
    小笠原 香苗 (理化学研究所 脳神経科学研究センター)
    小池 耕彦 (理化学研究所 脳神経科学研究センター)
    本研究は、プレッシャー下で能力が低下する現象が知覚意思決定課題でも生じるか、またそのメカニズムを検討した。課題成功時の報酬が低く高頻度で現れる低プレッシャー(LP)条件と比較して、高報酬かつ低頻度な高プレッシャー(HP)条件では正答率が低かった。また、直前のHP条件の成功が次のHP条件の失敗を呼び込むことが明らかになった。この結果は、HP下での行動の記憶が次の行動の予期を惹起し、それが知覚意思決定課題の能力低下の原因である可能性を示す。
  • P-1-11
    和田 丈太郎 (米子工業高等専門学校)
    林 侑輝 (米子工業高等専門学校)
    本論文では、運転中の「いねむり事故」防止とストレス軽減を目的として、「ボケてくる対話型AI」を提案する。プロトタイプを用いた実験を行ったところ、対話型AIは正常に動作することが確認できた。更に、あらかじめ想定していた「ボケ」による笑いは少なかった一方で、合成音声による何気ない返答が笑いを誘うことが示唆された。
  • P-1-27A
    酒井 美鳥 (名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士後期課程)
    清河 幸子 (東京大学大学院教育学研究科)
    溝川 藍 (名古屋大学大学院教育発達科学研究科)
    本研究の目的は,身体感覚の媒介効果に着目して,ダンスをすること自体が不安および抑うつを軽減するメカニズムを明らかにすることである.参加者はダンス動画を見ながら踊る条件 (実施群) と,ダンス動画を視聴するのみの条件 (視聴のみ群) に無作為に割り当てられ,約15分の介入が行われた.その結果,ダンスをすること自体が不安および抑うつを軽減し,そのメカニズムとして身体感覚のひとつである身体感覚受容感が媒介している可能性が示唆された.
  • P-1-37A
    野中 郁子 (早稲田大学大学院人間科学研究科関根ゼミ)
    関根 和生 (早稲田大学人間科学学術院 人間科学部)
    非対面でのコミュニケーションが増え,また個人が携帯する電話の普及により電話応対の機会が多くなっている。電話応対において,お礼やお詫びなどでお辞儀をしながら発話をすると感じの良い応対になると古くから言われ,企業では指導をしている。しかしそれらは経験則と知識の継承であり,明らかにされてはいない。魅力を高めるお辞儀が電話応対ではどのような働きがあるのかを検証するために,電話応対でのお辞儀がどのような影響を音響特性に及ぼすのかを明らかにする。
  • P-1-42
    成瀬 辰 (明治大学大学院先端数理科学研究科先端メディアサイエンス専攻)
    小松 孝徳 (明治大学総合数理学部)
    本研究では,SNSユーザがSNS利用中に不快に感じる状況についての調査を行った。その結果, XやInstagramの利用頻度が高いユーザは自分の好きなものについてのネガティブなコメントに不快感を覚えることが明らかとなった一方,SNSでの投稿が少ないユーザは根拠のない偏見による投稿に対して不快感を抱くことが明らかとなった。そして多くのユーザが,ある対象を一方的に見下すような表現を含む投稿に不快感を抱いたことがあることが明らかになった。
  • P-1-45A
    田中 悠介 (福岡大学)
    人は言語を理解する際に,言語化された物体の色や大きさといった物理的性質を心内でシミュレーションしている。本研究では,認知的共感性が高い言語理解者は好ましい他者の行為を描写している文が呈示された場合に文と画像の内容の一致判断をより素早く行うことを明らかにした。この結果は,物理的性質だけでなく感情価もシミュレーションされること,およびそれが認知共感性の高さと相関することを示している。
  • P-2-10A
    大野 俊尚 (早稲田大学)
    三嶋 博之 (早稲田大学)
    「かっこよさ」を評価対象にしているパフォーマンスでは、しばしば観客が歓声を上げることや、「かっこいい」パフォーマーにつられて観客も音楽のリズムをとることがある。これらの行為に自覚があるとは限らないことから、「かっこよさ」とのちに解釈する情報を知覚した段階で、動作レベルの身体反応が起きている可能性を検討する。パフォーマンス動画を視聴する実験参加者の動作を計測したが、現状分析方法に課題が残っている。
  • P-2-13
    安田 晶子 (一橋大学)
    正田 悠 (京都市立芸術大学)
    上宮 愛 (金沢大学)
    祐伯 敦史 (立命館大学)
    伊坂 忠夫 (立命館大学)
    日本語表現の「感動」は,他の言語・文化圏でも理解されるのか,またその捉え方に違いはあるのか検討するため,日本を含む11カ国で大規模な国際調査を行った.感動反応尺度への回答を求め,どのような出来事に対して最も感動したのか選択させた.結果より,感動反応尺度は11カ国で共通して使用可能であることが確認された.また,ネガティブな事象に対して感動するなど,言語・文化圏による差異も一部で示された.
  • P-2-15A
    岩城 史享 (東京電機大学)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    本研究は,実験を行い収集したデータから感情遷移ネットーワークを作成し,その構造を感情の輪と比較する.さらに,感情の類似性,関連性,遷移ネットワークに3つの埋め込み手法を適用し感情の分散表現を獲得する.そして,基本感情同士の演算で混合感情が表現できるかを検討する.感情遷移ネットワークと感情の輪の構造は大部分での類似性と局所的な相違点が確認できた.また,分散表現の演算により感情同士の関係がモデリングできる可能性が示唆された.
  • P-2-26
    小鷹 研理 (名古屋市立大学大学院芸術工学研究科)
    筆者は, 過去10年強にわたって, 主に大学の授業の受講生を含む3205人を対象に, 個人の属性とともに, 「奇数」と「偶数」の好みを問う簡単なアンケート実験を実施してきた. 解析により, 誕生日の数字の属性が「奇数」と「偶数」の好みに(属性が一致する方向で)強い影響を与えることに加え, 誕生日に関わらず「偶数好き」は男性よりも女性に多いこと, 加齢が「奇数好き」を増大させる効果を持つ等の知見を得たのでこれを報告する.
  • P-2-31
    能城 沙織 (木更津工業高等専門学校)
    似た顔の相手を配偶者として選択するのか, 結婚後に夫婦の顔が似ていくのか,という議論に関しては,両方の面がありうるという説が広く普及してきたが,近年白人を対象とした研究で 後者を否定する結果が示された.本研究では,日本人を対象に夫婦の顔の類似性の経年変化を調べた結果,類似性の評価方法によって結果に差が生じた.類似性評価方法について,今後はより検討していくことで,この傾向が人種を超えた普遍性を持つものなのかを検証していく必要がある.
  • P-2-32
    草間 肇 (木更津工業高等専門学校専攻科制御情報システム専攻1年)
    能城 沙織 (木更津工業高等専門学校)
    内面的な類似性が友人関係に影響を与えるということが先行研究より示されている一方で,外見の類似性が友人関係に与える影響についてはまだ検証されていない。本研究では,片方の友人の写真とコントロールの写真3枚を並べたものをもう片方の友人の写真に似ている順に順位を付けてもらう形式でアンケート調査を用いて外見の類似性が友人関係に与える影響を検証した。その結果,友人同士での顔の類似は存在するという事が確認された。
  • P-2-41
    石川 悟 (北星学園大学)
    本研究では,絵文字を用いたメッセージ伝達において,絵文字の「個数」が持つ効果を検討した.場面想定法を用い,「喜び」,「楽しさ(心地よさ)」,「怒り」,「哀しみ(悲しさ)」の4つの感情を伝える文章末に,それぞれの感情に対応する絵文字を1個,または3個付加した「発言」を提示し,その「発言」から受け取った発言者(送信者)の感情を評価させた.その結果,文章に付加する絵文字の個数が1個のときにより強く感情が伝わる,と考えられる結果が得られた.
  • P-2-42
    小川 昭利 (順天堂大学)
    小佐野 重利 (東京大学)
    松田 哲也 (玉川大学)
    坂上 雅道 (玉川大学)
    亀田 達也 (明治学院大学)
    イタリア・バロックの画家カラヴァッジョの絵画を鑑賞するとき,独特の情動的高揚が生じることを美術史家は指摘してきた.本研究はその神経基盤を,機能的磁気共鳴画像法を用いて調べた.情動に関連する扁桃体の活動は,カラヴァッジョの絵画を見たときの方が他の絵画を見たときよりも大きかった.一方で,扁桃体と他の活性化した領域との機能的結合は,カラヴァッジョの絵画を見たときの方が他の絵画を見たときよりも低かった.
  • P-2-46
    斉藤 有利奈 (成城大学大学院社会イノベーション研究科(修了))
    新垣 紀子 (成城大学)
    遠隔共同作業のパフォーマンス向上を目的とし、ビデオ通話ツールを用いた新しいコミュニケーション方法を検討した。特に、ポジティブな感情が思考に与える影響に着目し、対話者の表情を笑顔に変形させることで創造性や発話量が向上するかを調査した。実験には大学生14名を対象とし、人型3Dアバターを使用して対話実験を実施した。その結果、アバターの表情操作により肯定的感情が高まり、対話課題の成果がわずかに向上することが示唆された。
  • P-2-55
    中村 太戯留 (武蔵野大学)
    情動知能は,情動の性質を理解して賢く活用する力のことで,非認知能力の下位概念であるが,他の下位概念との関係は必ずしも明らかではない.そこで,情動知能,レジリエンス,そして批判的思考の各尺度を用いて検討した.情動知能の因子は,レジリエンスや批判的思考の因子と相関があり,それぞれクラスターを形成しており,そして4つの成分に整理することができた.すなわち,情動知能を高める手掛かりとして,これらの因子を活用できる可能性が示唆された.
  • P-2-66A
    上野 芙優 (明治大学大学院理工学研究科)
    嶋田 総太郎 (明治大学理工学部)
    本研究では, 脳波の時間周波数解析を用いて, 音楽的快感と驚き(予測誤差)の関係性を調査した. その結果, 前頭部におけるβ波帯域およびγ波帯域のパワー値の増加とθ波帯域のパワーの値の減少が, 主観的快感と, 統計的学習モデルを用いて算出した音楽的驚きの情報量と関連していることが示唆された. したがってθ, β,γ波帯域の活動が予測誤差により誘発された音楽的快感の脳メカニズムに深く関与していることが示唆された.
  • P-3-19
    宮代 こずゑ (宇都宮大学共同教育学部)
    白戸 陽菜 (宇都宮大学卒業生)
    本研究は大学生を対象として,におい刺激の快-不快と,におい刺激を手掛かりとして想起された自伝的記憶の情動性の関連に焦点を当て,実験を行った.その結果,プルースト効果は見られなかったものの,5つのにおい刺激のうち,固形ハッカ,コーヒー豆,カレー粉,および制汗剤において,においがもたらす快感情が肯定的感情に関連した自伝的記憶の想起を引き起こしていたこと,すなわち気分一致効果の生起が示唆された.
  • P-3-26
    川上 春佳 (明治大学大学院 先端数理科学研究科 先端メディアサイエンス専攻)
    小松 孝徳 (明治大学総合数理学部)
    気分とは、ある状況におけるその時の心の状態のことを指す。本調査では、気分が喚起される際に個人の性格がどのくらい関与しているのか検討を行うことを目的とした。POMS2、SUBIを用いて算出された気分状態とTIPI-Jで算出された性格特性の関係を調査し、性格で気分が決定されないことが明らかとなった。原因として、性格を構成する個々の要素が気分を決定するのではなく、性格を構成する要素の組み合わせが気分を決定しているからだと考えられた。
  • P-3-42A
    新堀 耕平 (静岡大学)
    森田 純哉 (静岡大学)
    個々の人間には固有の記憶の傾向があり,日常生活において様々なエラーを引き起こす.本研究では,エラーを引き起こす特定の個人属性や感情状態を表現するモデルパラメータを,データから推定する手法を検討する.モデルパラメータの推定手法には複数のものが存在する.本論文では,ACT-Rのパラメータを推定する手法として,勾配法に基づくものと最尤法に基づくものを比較し,両者の差異を比較検討する.
  • P-3-48A
    木村 慧一 (名古屋大学大学院情報学研究科)
    川合 伸幸 (名古屋大学大学院 情報学研究科 心理・認知科学専攻, 中部大学 創発学術院, 科学技術振興機構 CREST)
    手袋の着用は,嫌悪を感じさせる対象の直接接触を防ぐ.本研究では,手袋の着用によって,嫌悪画像を見ているときの主観的な嫌悪感や脳波でみられる情動処理が低減するかどうかを検討した.その結果,手袋の着用では主観的な嫌悪感や視覚野から観測される情動処理は低減しないことが示された.その後の予備実験から手袋の着用は,嫌悪画像を見ることではなく,触れることに対する嫌悪感を低減させる可能性が示された.
  • P-3-58
    時田 みどり (目白大学)
    平均表情抽出の精度とバイアスの個人差について,ポジティブ表情とネガティブ表情の2タイプと,識別精度,自閉スペクトラム症傾向,評価不安傾向との関連性を検討した.結果から,ポジティブ表情とネガティブ表情の平均表情抽出精度に正の相関が示された.一方,表情の識別精度と平均表情抽出の成績との関連は,ポジティブ表情でのみ認められた.心理的特性と平均表情抽出の成績とには.明確な関連性は示されなかった.