研究分野

意思決定

  • O-1-1
    中村 國則 (成城大学)
    本研究では.より極端な,よりは高い確率を情報として価値があるとみなすという,“明確な予測の探求原理”に対する情報理論的解釈の妥当性を検討することである.具体的には,近年の確率と結果の負の相関に関する研究成果を踏まえ,同じ確率値であってもその確率が指し示す結果の大きさで確率値に対する情報価がどう変化するかを検討した.分析の結果,結果の大きさに応じて確率表現の情報価に対する評価は変動し,その変動パターンは情報理論的な分析と一致していた.
  • O-1-2A
    白砂 大 (追手門学院大学)
    香川 璃奈 (産業技術総合研究所)
    本田 秀仁 (追手門学院大学)
    速さと正確さのトレードオフの文脈では,時間をかけることでよい結果(正確な判断)を得られると考えられている。しかし従来,人の限られた認知資源,特に考えること自体に対するコストが考慮されていなかった。本研究では,資源合理性の枠組みに基づいて,思考コストを抑えつつ高い正確さを維持できるような適度な思考時間が存在するという仮説を立てた。そのうえで,理論(計算機シミュレーション)と実験(行動実験)の双方から,この仮説を検証した。
  • O-1-3
    本田 秀仁 (追手門学院大学)
    白砂 大 (追手門学院大学)
    川口 潤 (名古屋大学・山形大学)
    松香 敏彦 (千葉大学)
    植田 一博 (東京大学)
    本研究では、人間が示す記憶に基づく誤った判断の性質について分析を進めた。具体的には、誤った判断は、全知全能ではない人間が記憶に不確実性がある場合に、環境から得られる手がかりに基づいて合理的な推論を行った結果生じているという仮説を立て、計算機シミュレーション、ならびに認知実験を実施して検証を行った。結果として、人間が示す誤った判断のパターンは合理的推論から生み出される誤りのパターンと極めて一致することが示された。
  • O-1-4
    寺尾 敦 (青山学院大学社会情報学部)
    統計学の入門講義を履修している68名の学生が,2週の授業にわたって確率の基礎とベイズの定理を学習し,基本的なベイズ課題と3囚人問題に取り組んだ.基本的なベイズ課題を解決できる学習者にとっても,3囚人問題の解決は難しかった.特に,問題文から尤度に関する情報を読み取ることに大きな困難があった.尤度情報を理解し,正しい問題表象を構築できれば,正解が得られる可能性は高い.
  • O-3-3A
    森本 陽生 (東京電機大学大学院理工学研究科情報学専攻)
    小林 春美 (東京電機大学理工学部理工学科情報システムデザイン学系)
    安田 哲也 (東京大学大学院総合文化研究科)
    本研究は,複数人の視線が人の選択行動に与える影響を明らかにすることを目的とした.実験では,パソコン画面に複数の人の顔と選択肢が左右に1つずつ提示され,参加者は1つを正解として選んだ.実際には正解は無い問題が使われた.結果から,向けられた視線の数が多い選択肢の方が,より多く,またより速く選択されることが示唆された.多くの他者が見ている対象物は「正しい」選択肢であると根拠なく判断する傾向があることが示されたと考える.
  • O-5-2A
    小笠原 香苗 (理化学研究所 脳神経科学研究センター)
    小池 耕彦 (理化学研究所 脳神経科学研究センター)
    本研究は、プレッシャー下で能力が低下する現象が知覚意思決定課題でも生じるか、またそのメカニズムを検討した。課題成功時の報酬が低く高頻度で現れる低プレッシャー(LP)条件と比較して、高報酬かつ低頻度な高プレッシャー(HP)条件では正答率が低かった。また、直前のHP条件の成功が次のHP条件の失敗を呼び込むことが明らかになった。この結果は、HP下での行動の記憶が次の行動の予期を惹起し、それが知覚意思決定課題の能力低下の原因である可能性を示す。
  • O-5-3A
    髙宗 楓 (北陸先端科学技術大学院大学)
    西本 一志 (北陸先端科学技術大学院大学)
    論理的に等価であるにも関わらず,記述表現がポジティブまたはネガティブと異なることによって,後の意思決定が変化する現象は属性フレーミング効果として知られている.本研究では,属性フレーミング効果を誘発する文章表現に,数量を表現するジェスチャを追加提示した場合の意思決定への影響について調査を行った.その結果,数量を表現するジェスチャといった非言語情報の追加提示は,フレーミング効果による意思決定の偏りを抑制または解消させることを明らかにした.
  • O-6-1A
    宮本 健史 (名古屋大学大学院情報学研究科)
    小野 誠司 (筑波大学体育系)
    移動物体を追跡する眼球運動(smooth pursuit)と物体運動の知覚との間には,部分的に共通したプロセスが関与することが示唆されている.本研究では,標的速度と独立して網膜像運動を操作可能な視覚刺激により,始動局面のsmooth pursuitと移動物体検出の早さとが,個体間と個体内のいずれにおいても高い相関関係にあることを見出した.これらは,少なくとも網膜像運動処理の段階で,両者に共通したプロセスが存在していることを示唆している.
  • O-6-5
    小鷹 研理 (名古屋市立大学大学院芸術工学研究科)
    児玉 謙太郎 (東京都立大学)
    阿部 真人 (同志社大学)
    村上 久 (京都工芸繊維大学)
    我々は, 自発行為にかかる背景情報の影響を探る手法として, 前方のスクリーンに呈示された時間表示を含むプログレスバーに向けてカメラのシャッターを自由に押す「フリーシャッター課題」を考案している. 本課題は, 2023年にテレビ番組の企画として実演され, 人を扱う心理実験としては異例のサンプルサイズ(N=23630)のデータを得た. 本稿では, 集団の有無にかかわらずに観測されるシャッターの時系列特性に焦点を当て, 実験結果を報告する.
  • P-1-7A
    宮野 修平 (セコム株式会社 IS研究所)
    金 慧隣 (北海道大学大学院農学研究院)
    愛甲 哲也 (北海道大学大学院農学研究院)
    群衆制御による誘導効果を予測するためには,群衆中における個人ごとの経路選択傾向の分布を知る必要がある.本研究では,VR実験によって経路ごとの移動時間や混雑度合い,誘導の有無が経路選択に与える影響を測定し,クラスタリングによって経路選択傾向の分布を分析した.さらに,フォーカスグループインタビューによって得られた仮想の混雑緩和施策に対する意見との整合性を分析することで,VR実験結果の妥当性を評価した.
  • P-1-16
    村上 久 (京都工芸繊維大学)
    児玉 謙太郎 (東京都立大学)
    阿部 真人 (同志社大学)
    小鷹 研理 (名古屋市立大学大学院芸術工学研究科)
    ヒトの集団では、知らず知らずのうちに個々の行動が他者に伝染し、集団レベルでのバースト現象が生じ得る。こうした現象では、どのような知覚的相互作用が働いでいるのだろうか。本研究では、大規模な集団において空間的位置関係を考慮しつつ、自発的行為が周囲から受ける影響を調べた。結果として空間を共有する者同士による知覚的相互作用による顕著なバースト現象が確認し、またこの相互作用は近距離ではなく遠距離であることが示唆された。
  • P-1-31
    牧之内 洋和 (北九州市立大学)
    高橋 建二 (北九州市立大学)
    松田 憲 (北九州市立大学)
    BtoB企業の「営業活動」を技術として捉え,効果的なセールスモデルを探求することを目的とした.米国で行われた先行研究において卓越した成果を上げるとされた「チャレンジャー」と,成果を残せないとされた「リレーションシップ・ビルダー」について,日本で調査を行い,先行研究との比較を行った.その結果,「成約」に関して「チャレンジャー」に対する顧客側の積極的な意思決定(成約意思)が行われる傾向がみられた.
  • P-1-47A
    大貫 祐大郎 (一橋大学)
    大瀧 友里奈 (一橋大学)
    植田 一博 (東京大学)
    Visual Analog Scale (VAS) の回答開始位置が, 回答 (今月, 目標にしたい電気使用量kWh) に与える影響を検討した. 回答を左端 (0kWh) から始める左群, 中央 (138kWh) から始める中央群, VASを使用しない自由回答群の3群で実験を実施した. その結果, 中央群や自由回答群よりも左群の方が, 回答は有意に左端に偏った. この結果は, VASの回答開始位置が回答に影響を与えることを示している.
  • P-2-3A
    緒方 思源 (兵庫教育大学)
    田和辻 可昌 (東京大学)
    松居 辰則 (早稲田大学)
    本研究では,絵画のスタイル典型度を計測する実験方法を提案し,ゴッホとゴーギャンの風景画を実験刺激として実験を実施した.また,ドリフト拡散モデル(DDM)を利用することで,この方法の認知科学的妥当性を一定の程度検証できた.具体的には,各絵画に対して,参加者のスタイル分類タスクでの回答と応答時間を用いてDDMのドリフト率を推定した.ドリフト率の絶対値が分類の容易さを意味し,本実験で計測されたスタイル典型度との間に正の相関が認められた.
  • P-2-31
    能城 沙織 (木更津工業高等専門学校)
    似た顔の相手を配偶者として選択するのか, 結婚後に夫婦の顔が似ていくのか,という議論に関しては,両方の面がありうるという説が広く普及してきたが,近年白人を対象とした研究で 後者を否定する結果が示された.本研究では,日本人を対象に夫婦の顔の類似性の経年変化を調べた結果,類似性の評価方法によって結果に差が生じた.類似性評価方法について,今後はより検討していくことで,この傾向が人種を超えた普遍性を持つものなのかを検証していく必要がある.
  • P-2-34A
    石倉 圭悟 (東京電機大学大学院)
    横須賀 天臣 (東京電機大学大学院)
    中村 紘子 (日本学術振興会, 東京電機大学)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    本研究では同期待値で試行回数が異なる選択肢の選好を問う二者択一課題において, 試行回数が人間の選択に与える影響について検討した. 本研究の参加者はスロットマシンの期待値が小さい時は試行回数が少ない選択肢を, 大きい時は試行回数の多い選択肢を選好した. また, 実験結果から RS モデル, Q 学習モデル, IBL モデルのパラメータ推定し, モデルの予測と実験結果の比較を行った.その結果, Q 学習モデルの予測が最も良い結果を示した.
  • P-2-37
    鶴島 彰 (セコム株式会社)
    危険回避行動と同調行動が,火災時の建物内避難における動的避難誘導システムの性能に与える影響について,マルチエージェントシミュレーションを用いて評価する。先行研究において,同調行動が動的避難誘導に否定的に影響することは知られていたが,実際の火災避難においては,平均避難時間の延長と火災被害の分散の拡大という形で現れることが分かった.
  • P-2-40
    関 一樹 (日本大学大学院総合基礎科学研究科)
    大西 俊輝 (日本大学大学院総合基礎科学研究科)
    呉 健朗 (日本大学文理学部)
    木下 峻一 (日本大学大学院総合基礎科学研究科)
    福田 聡子 (日本大学文理学部)
    奥岡 耕平 (日本大学文理学部)
    宮田 章裕 (日本大学文理学部)
    大澤 正彦 (日本大学文理学部)
    本研究の目的は,寄付意思がない対象者に反感を抱かれにくい寄付行動促進エージェントの実現である.先行研究として著者らは,対話者が好意的解釈の傾向がある「準」自然言語に着目し,「準」自然言語エージェントを提案している.本研究では,「準」自然言語エージェントの有用性を検証するため,実際の寄付行動を想定した実空間の実験を行った. 検証の結果,仮説は支持されなかったが,「準」自然言語が持つ曖昧性により広告を注視する等の情報を補う行動を誘発した.
  • P-2-51A
    西村 茉鈴 (早稲田大学大学院人間科学研究科)
    大道 麻由 (大阪大学大学院基礎工学研究科)
    高橋 英之 (大阪大学/国際電気通信基礎技術研究所)
    吉村 優子 (金沢大学人間社会研究域)
    菊池 英明 (早稲田大学人間科学学術院)
    われわれは日常生活の中で固定観念に縛られることにより,新しい観点から物事を思考できないという経験をすることがある.そこで本研究では,人間が持つ思考の偏りや固着から抜け出す支援を行うことを目的として,大規模言語モデルを用いた対話ロボットのシステム開発を行った.具体的には,対話ロボットがユーザの悩みを聞いた上で,4種類の発話方略に従って回答を生成するシステムである.どの発話方略がユーザの思考の固着を改善するかについて検討を行う.
  • P-2-67
    片瀬 菜津子 (北陸先端科学技術大学院大学)
    鳥居 拓馬 (東京電機大学)
    日髙 昇平 (北陸先端科学技術大学院大学)
    錯視の一種であり,複数の解釈ができる多義図形に着目し,無意識下で起きている知覚反転の判断基準の定量評価を試みる.多義図形を定量的に評価可能とするために,数学的に表現可能である多義図形を2種類のサイン波を用いて作製し,どのような基準により見え方の優劣が逆転するかを議論する.
  • P-3-3A
    横須賀 天臣 (東京電機大学大学院)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    認知的満足化モデルは目的に応じた希求水準を満たすかにより、探索と活用のバランスを調整し、多腕バンディット問題において有効に働く。本研究では、4個の選択肢からなるベルヌーイ・バンディット問題における認知的満足化と Softmax による選択行動について、最尤推定によるパラメータのリカバリ性能を確認した。また、行動実験によるモデルの比較を行った。その結果、全モデルでパラメータのリカバリが確認され、データに適合する際の性質が明らかになった。
  • P-3-14
    佐藤 あかり (東京電機大学)
    高橋 達二 (東京電機大学)
    中村 紘子 (日本学術振興会, 東京電機大学)
    現代社会において,陰謀論や疑似科学などの認識的に疑わしい信念の影響が問題視されている.先行研究では, BADE 課題を用い,妄想傾向が強く信念の更新が困難な者ほど, COVID-19 の陰謀論信念が強いことが示された.本研究では BADE 課題を用い,信念更新の困難さと一般的な陰謀論信念との関係を調査した.陰謀論信念の強さには被害妄想や科学的知識,認知的熟慮性といった要因に関係があるのか,疑似科学信念に対するこれらの影響も検討した.
  • P-3-15
    高橋 達二 (東京電機大学)
    不確実性の下の環境探索と適切な行動の学習に関し、従来は最も適切な (環境から得られる報酬を最大化) 行動の獲得が評価される。しかし実世界課題では多くの場合、単位を取る (60点以上獲得)、黒字化する (損益を0以上に) などの目標の達成との関係で行動が評価される。そこで、バンディット問題において目標設定理論の予測 (具体的で高い目標がパフォーマンスを向上させる) が正しいかどうかを検証する。結果は、目標設定理論を弱く支持した。
  • P-3-16
    長尾 颯大 (立命館大学人間科学研究科)
    安陪 梨沙 (立命館大学人間科学研究科)
    服部 雅史 (立命館大学総合心理学部)
    本研究では,単語対を手がかりとして呈示することのみで連鎖型連想の拡がりを示す指標である前向流動(FF)が変化するかを検討した.実験1では,自由連想を2回行うことによってFFが上昇したことが確認され,実験2では,単に2回連想を行う統制群より,意味的関連度の強い単語対を呈示した群でFFが低下することが示された.以上から,単語対の呈示によって人の創造性に介入できる可能性が示唆された.
  • P-3-23A
    高田 亮介 (東京大学)
    升森 敦士 (東京大学)
    池上 高志 (東京大学)
    本研究では,初期状態やパラメータが同じ複数のLLMエージェントが仮想空間上を移動しながらコミュニケーションするシミュレーション実験を行った.実験の結果,同一のLLMエージェントであるにもかかわらず,エージェントの記憶や周囲へのメッセージ,行動パターン,性格が分化した.このことから,LLMエージェントの個性や性格は,エージェントが空間を移動することで生まれる集団の中でのインタラクションを通して創発し得ることが示唆された.
  • P-3-26
    川上 春佳 (明治大学大学院 先端数理科学研究科 先端メディアサイエンス専攻)
    小松 孝徳 (明治大学総合数理学部)
    気分とは、ある状況におけるその時の心の状態のことを指す。本調査では、気分が喚起される際に個人の性格がどのくらい関与しているのか検討を行うことを目的とした。POMS2、SUBIを用いて算出された気分状態とTIPI-Jで算出された性格特性の関係を調査し、性格で気分が決定されないことが明らかとなった。原因として、性格を構成する個々の要素が気分を決定するのではなく、性格を構成する要素の組み合わせが気分を決定しているからだと考えられた。
  • P-3-47
    金津 達也 (九州工業大学 大学院生命体工学研究科)
    吉田 香 (九州工業大学 大学院生命体工学研究科)
    古川 徹生 (九州工業大学 大学院生命体工学研究科)
    本研究におけるセレンディピティとは,予期せぬ情報を通じた新たな視点や世界の発見である.本研究では,このセレンディピティを促す情報探索システムを提案する.本システムは,内包的検索と外延的探索の組み合わせとユーザーによる積極的な探索によって,新たな情報に出会う環境を提供する.内包的検索では特定の条件を指定し,外延的探索では直感的に情報を探索する.2つの探索手段の交互利用によって,セレンディピティの促進を目指す.
  • P-3-59
    犬童 健良 (関東学園大学経済学部)
    記号表現は言葉や記号で考えを表明するが,その表された意味と相互作用する場として捉えられる.記号表現により思考は文脈から切り離され,自律的なエージェントとして分散する.そのため心内エージェンシーは免疫ネットワークとしての自己決定性と自己言及性を有する.一方記号表現の自壊はその非凸性を意味する.本研究は認知的領域の非凸性を阻止する耐戦略的メカニズムについて論じる.また阻止条件を用いて認知的領域を生成する実験について報告する.