研究分野
思考・知識
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OS-2-2-3公募発表本研究は,絵画教室で色鉛筆による植物の写実的描画を始めた入門者による一人称研究である.入門者が自らの作品と指導者のコメントをまとめていた制作メモにもとづくエスノグラフィから,描画実践を通じて立ち上がってくる意味と指導者が持つ創造性について理解を深める過程を考察する.芸術分野で行われてきた制約の緩和や創造促進的効果等に関する先行研究の知見を補完できるものとして,当事者の視点が持つ可能性を議論する.
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OS-2-2-4公募発表音楽に関する態度や行動が、音楽への関与の深化に伴ってどのように変化するかを、音楽への関与度が様々な10人に対する面接により検討した。低関与群では、音楽を環境音の一部や好きなコンテンツの要素の一つとしてとらえる傾向があること、中関与群では気分や感情への影響など、音楽聴取に伴う内面的変化に着目すること、高関与群では、自立したコンテンツとして、音楽を作り手からのメッセージとして捉え、人生において重要な位置づけを行うことが示唆された。
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O-1-1本研究では.より極端な,よりは高い確率を情報として価値があるとみなすという,“明確な予測の探求原理”に対する情報理論的解釈の妥当性を検討することである.具体的には,近年の確率と結果の負の相関に関する研究成果を踏まえ,同じ確率値であってもその確率が指し示す結果の大きさで確率値に対する情報価がどう変化するかを検討した.分析の結果,結果の大きさに応じて確率表現の情報価に対する評価は変動し,その変動パターンは情報理論的な分析と一致していた.
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O-1-2A速さと正確さのトレードオフの文脈では,時間をかけることでよい結果(正確な判断)を得られると考えられている。しかし従来,人の限られた認知資源,特に考えること自体に対するコストが考慮されていなかった。本研究では,資源合理性の枠組みに基づいて,思考コストを抑えつつ高い正確さを維持できるような適度な思考時間が存在するという仮説を立てた。そのうえで,理論(計算機シミュレーション)と実験(行動実験)の双方から,この仮説を検証した。
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O-1-3本研究では、人間が示す記憶に基づく誤った判断の性質について分析を進めた。具体的には、誤った判断は、全知全能ではない人間が記憶に不確実性がある場合に、環境から得られる手がかりに基づいて合理的な推論を行った結果生じているという仮説を立て、計算機シミュレーション、ならびに認知実験を実施して検証を行った。結果として、人間が示す誤った判断のパターンは合理的推論から生み出される誤りのパターンと極めて一致することが示された。
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O-4-1A本研究では, 曖昧な句構造において, 付加情報がある場合, ジェスチャーが自発的に産出されたのか, また, どのようなジェスチャーが表出されたか検討した. 統語境界に基づいて, 新たに分析を行なった結果, ジ ェスチャーは統語構造に応じて表出され, 意味情報を表現していることが示唆された. よってジェスチャーは, 付加情報の補完に役立っていると考えられ, 言語・ジェスチャー両方が提示された場合、必要な情報を過不足なく伝えると考えられる.
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P-1-1本研究は,動作中の認知的な発話行為により知覚対象を弁別することが,身体動作に及ぼす影響について前頭前野の脳活動に注目し,Go/No-go課題を用いて実証的検証を行った.結果から,認知的な発話行為による知覚対象の弁別によって,身体動作の反応時間が遅くなることが明らかとなった.また,認知的発話が前頭局部の脳活動の賦活と関連していることが示され,動作中の言語使用によって動作の反応に影響を及ぼす可能性が示唆された.
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P-1-5空間近接、遠方探索、対話促進の要件を備えた場を設定し、その場が「遠方探索」が実現することを確認した。そして対話によって生成される情報について、「今まで気づかなかった」5タイプの情報に対して、①有用情報の獲得との関連、②有用情報の獲得にする開発者の対話時の「態度」、「状況」との関連について調査を実施した。その結果、開発者がそれまで気づかなかった(プロトタイプの)「価値」および、「提案先」の創造について有効であることが確認された。
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P-1-6ここ十年の間に一般の人々がヒトのこころをどのように捉えているかについて検討されるようになり,その重要性が国際的に強調されてきた。しかし,こころの発達的起源に関する検討やそこにジェンダーステレオタイプがみられるかどうかについては未だ不明な点が多い。本研究では,成人を対象とし,様々な認知能力の出現時期に関する信念にジェンダーバイアスが存在するかどうか,また,その傾向が回答文脈により異なるかどうか検討した。
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P-1-14インターネット検索において,検索者が自身の必要とする情報やその入手方法を適切に把握していない(情報要求が曖昧な)場合がある.本研究では,Yahoo!知恵袋に投稿された質問文を,質問者の情報要求が言語化されたものと捉えて分析し,曖昧な情報要求が言語化されたときの特徴を探索した.外部のwebページを参照する回答が寄せられた質問文中で出現頻度が高くなる語を発見したが,情報要求の曖昧さとの関係性は今後検討する必要がある.
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P-1-17A本研究は,網膜色素変性症患者の視野狭窄をリアルタイムで再現するARシステムを開発し,その有効性を評価するものである.ARヘッドセットとステレオカメラを用いて視野狭窄シミュレーションを実現した.主観的視覚的体験はボトムアップ的な知覚とトップダウン的な予測が統合されたものであると考えられ,主観的視覚的体験の再現には両者の考慮が必要であろう.視覚再現性の精度,処理速度向上,ユーザビリティーなど,今後の改良点について議論する.
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P-1-18言語の本質は思考かコミュニケーションかという議論は現在でも続いている。また,文という単位の本質について思考的側面(判断)とコミュニーション的側面(報告)があるとする立場が日本語研究にはある。本稿は,認知類型論的な立場から,日本語の文の解釈についてのアンケート調査を行い,一つの文に判断的(物的)解釈と報告的(事態・場所的)解釈がどのように共存しているかを,属性を指す文を中心に明らかにした。
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P-1-20本稿では,21世紀型の美術鑑賞教育の在り方に着目し,まず美術鑑賞における省察的思考の育成の重要性について検討する.次に,文献調査に基づいて,対話型AIと画像生成AIという2種類の生成AIを美術鑑賞における省察的思考の育成に如何に活用できるのかについて理論的な検討を行う.さらに,生成AIが美術鑑賞の場面で提供できる情報と,人間的な他者から取得される視点とを比較することで,生成AIの活用が省察的思考の指導において持つ利点について検討する.
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P-1-23書において筆は定められた正しいやり方で扱い,文字は整えて書かなければならないという固定観念は日本の書教育でよく見られるものであり,これに捉われることは書の美的な側面への理解を妨げていると考えられる.そこで,本研究では探索行為を積極的に行いながら書作品を制作するワークショップを設計し,それを通して書に対する態度を変化させることができるという仮説の検証を試みる.
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P-1-43A本研究では授業内グループワークにおける個人の意見を表明する活動を開始するやり方について,相互行為分析の方法を用いて検討した.その結果,話し合いを開始するまでに,1)話し合いの開始の提案と承諾,2)話題の限定,3)最初の話し手の決定が行われていた.学生は教員の合図後すぐには話し合いを開始できないこと,話し合いの準備に積極的だが最初の話し手になることには消極的であることが示唆された.
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P-1-63本研究では、実験における物質との相互作用から科学的知識が構築される過程を明らかにすることを目的とした。Pickering(1995)の「Mangle of Practice」の視点を援用し小学3年理科「磁石の性質」の実験場面の子どもと物質(磁石や缶)との相互作用を分析した。その結果、自らの科学的知識に反する「物質の抵抗」に対し、現象を再現しようという「子どもの適応」の中で、創発的に科学的知識が構築されることが明らかとなった。
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P-1-64洞察問題では、定型的な思考や作業では解決できず、発想の転換やひらめきによって解決に至る。本研究は図形パズル“タングラム”を使用して、洞察問題の解決における協働の効果について検討した。実験には大学生22名が参加し、二人一組で「アヒル」のシルエットの完成に取り組んだ。完成したペアは11組中8組(72.7%)だった。本報告では、過去に実験から得られた単独でアヒル課題に取り組んだ結果と比較し、協働問題解決の効果について検討する。
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P-1-66読書感想文の作成にかかわる心的活動を「読む」「思考する」「書く」のフェーズに分解し,各フェーズをICTの機能によって支援するプログラムを小中学生に対して実施した。プログラムの結果,参加者の読書感想文作成の,特に「書く(作文)」活動についての効力感が上昇した。「読む」「書く」を代替,補助するタブレット端末の機能は参加者に取り入れられやすかったのに対し,「思考する」を支援するマインドマップや生成AIの機能の活用は慎重である様子がみられた。
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P-2-2A本研究では,高大連携における学びの充実を目指して,高校生と大学生が協働するアクティブ・ラーニング実践に焦点を当てた。本実践では,協働して学び合う場を創り合い,対話活動を通じて相互に学びを深めていくことが目指された.本実践を通じて,学習者が学びのリスクを共に乗り越えながら,行動が変容していき,思考が広がっていったことが確認された.今後もこうした検討を重ねていき,さらに具体的な学習支援方法を探っていくことが目指される.
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P-2-4ChatGPTに焦点を当て,成人が,新技術である生成AIにどのような理解を形成するのかを探索的に検討した.複数回の使用の前後で描かれた生成AIをテーマとする線画と自由連想の結果に注目したところ,実際の使用を経て,参加者の理解は個別具体的な体験に基づくようになった.また,生成AIは,人間が操作するツールとして意識される一方で擬人的にも捉えられており,参加者にはヒト性を異投射しうる対象であったことが推察された.
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P-2-9A本研究は標準的な状態空間モデルにおいて戦略の突出とフォーカルポイントを定式化する. さらに本稿はプレイヤーたちに与えられる情報集合によってフォーカルポイントの候補が絞られた時, その絞られた中からどれが最も各人の利得を高めるのかについて共有知識となっている場合には, そのフォーカルポイントをプレイすることを証明した.
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P-2-18A本研究では,「歴史」を対象として,知的選好と興味の関連を検討した.自身の知的選好に合致する側面が歴史の学習において重要であると考えているほど,知的選好と歴史への興味の関連が強いと予測した.成人202名が知的選好尺度,歴史興味尺度,歴史特性認知尺度,歴史目標観尺度にオンラインで回答した.階層的重回帰分析の結果,歴史の学習においてメカニズムを重視しているほどメカニズム選好と歴史への興味の関連が強いことが示された.
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P-2-20本研究では,値札などで見られる数値の認知において,左端の桁が支配的な役割を果たすleft-digit effectを速度標識に適用し,運転速度に及ぼす影響をタイムプレッシャーの観点から検討した.例えば,速度標識が50 km/hから49 km/hに変わる場合,運転速度の有意な低下が期待される.実験結果から,タイムプレッシャーの有無に関わらず,速度標識によるleft-digit effectが確認された.
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P-2-21修辞判断における正確性を明らかにすることを目的として,話し役がセリフを伝達し,聞き役が修辞判断を行う実験を実施した.結果,本音伝達条件と照れ隠し伝達条件では認知負荷低条件より認知負荷高条件で正確な判断が行われ,嘘伝達条件と嫌み伝達条件では認知負荷による効果はみられなかった.本音や照れ隠しであると判断するまでの停止規則が嘘や嫌みの判断に比べて複雑であるなど,いくつかの可能性を検討した.
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P-2-29A人は将来の予測において,ポジティブな出来事がより起こりやすいという楽観主義バイアスを示すことが知られている.Garrett&Sharot(2014)は,ポジティブな情報をもとに信念更新を行いやすいという,信念更新の非対称性によって楽観主義が維持される.しかし,信念更新の非対称性の再現については疑問も呈されている.本研究はGarrett&Sharot(2017)の追試を行い,信念更新における非対称性が,日本人参加者でも生じるかを検討する.
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P-2-32内面的な類似性が友人関係に影響を与えるということが先行研究より示されている一方で,外見の類似性が友人関係に与える影響についてはまだ検証されていない。本研究では,片方の友人の写真とコントロールの写真3枚を並べたものをもう片方の友人の写真に似ている順に順位を付けてもらう形式でアンケート調査を用いて外見の類似性が友人関係に与える影響を検証した。その結果,友人同士での顔の類似は存在するという事が確認された。
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P-2-35佐々木は,自身のイラスト制作過程を対象に起こった知覚や思考,行為を一人称で捉え記述し,これを分析,考察することで自身が創作の過程で働かせている技術以外の知に迫るという研究を行っている.本発表では,佐々木が研究のために始めた一人称記述について,やってみたことで,開始した当初には誰に(どこに)向かって何を書くべきか理解できなかった状態を認識できるようになった事例をあげ,初学者が一人称記述を行う際に理解できなかったことの一端を示す.
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P-2-38学生に「欺かれた振りで報復」と「誤解」が主題の絵本各1件を画面で読み聞かせ, 2次的誤信念内容の理解技能を示す実験である。その技能として(a)真実と誤信念内容の対比及び真実の抑制,(b)息子が欺かれた振りで「服毒自殺を偽装」の報復を描く絵本の文章構造理解,(c)類推の下位技能となる真実と誤信念内容の対比)(d)作業台となる作業記憶の負荷,特に(e)下記の方法1に示す様に誤信念理解における後知恵に対処する際の情報処理負荷増加を指摘した。
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P-2-39A本発表では,既知の解決策よりもより良い代替案の探索と注意を制御する能力であるエフォートフル・コントロールの関係を検討した実験の結果を報告する.実験の結果,不適切な行動を抑制する能力と適切な行動を開始する能力の両方が低い場合と高い場合において,どちらか片方のみが高い場合よりも,既知の解決策に関係ない情報を探索する傾向が示された.このことは注意制御能力の低い場合と高い場合の両方で,代替解法を探索しやすい可能性を示唆している.
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P-2-51Aわれわれは日常生活の中で固定観念に縛られることにより,新しい観点から物事を思考できないという経験をすることがある.そこで本研究では,人間が持つ思考の偏りや固着から抜け出す支援を行うことを目的として,大規模言語モデルを用いた対話ロボットのシステム開発を行った.具体的には,対話ロボットがユーザの悩みを聞いた上で,4種類の発話方略に従って回答を生成するシステムである.どの発話方略がユーザの思考の固着を改善するかについて検討を行う.
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P-2-61本研究の目的は,洞察問題解決におけるひらめきや行き詰まりと生体反応の関係を調査することである.実験では,アイトラッカーや腕装着型センサを使用し,18名の被験者の洞察問題解決における瞳孔径および心拍を計測した.結果,それぞれの思考状態が瞳孔径に違いとして現れ,インパスでは縮瞳し,問題の正答に向かい散瞳する様子が確認できた.これは今後の創造的問題解決に関する手法の発展に貢献する知見となり得る.
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P-2-62A著者らは意図を読むことができる大規模言語モデルを実現するために,大規模言語モデルと認知アーキテクチャを統合することを提案し,その有効性を示している.しかし,この研究では,プロンプトが日本語で書かれていたことが大きな影響を与えた可能性がある.本研究では,提案手法において日本語とドイツ語でプロンプトを作成し,結果を比較することで,使用する言語が意図理解に及ぼす影響を調査した.結果,特定の条件において,言語ごとに意図理解の程度に差が見られた.
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P-2-67錯視の一種であり,複数の解釈ができる多義図形に着目し,無意識下で起きている知覚反転の判断基準の定量評価を試みる.多義図形を定量的に評価可能とするために,数学的に表現可能である多義図形を2種類のサイン波を用いて作製し,どのような基準により見え方の優劣が逆転するかを議論する.
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P-3-6本研究ではアファンタジアと非アファンタジアの文章読解の過程にどのような異同が観察されるかを整理するための実験が行われた.具体的には文章読解中の場面の転換に対してどのような情報処理を行っているかを群間で比較した.実験の結果,ファンタジアは場面転換の事実の整理だけを行っており,文章への没入の度合いが非アファンタジアよりも浅い読み方をしている可能性があることが示唆された.
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P-3-13本稿は,風景から動物を連想する「見立て観察」とその観察結果を他者に向けて表現する「仕立て作業」を組み合わせ開発したアイデア生成学習プログラム「まちなか動物園」の実践を解説する.まちなか動物園を複数回体験したデザイン初学者らの作品の特徴とその特徴の変化を概観し,デザイン初学者向け学習プログラムとしての可能性を考察した.その結果まちなか動物園は,既存の要素の収集と再構成の経験的な学習過程になる可能性が示唆された.
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P-3-14現代社会において,陰謀論や疑似科学などの認識的に疑わしい信念の影響が問題視されている.先行研究では, BADE 課題を用い,妄想傾向が強く信念の更新が困難な者ほど, COVID-19 の陰謀論信念が強いことが示された.本研究では BADE 課題を用い,信念更新の困難さと一般的な陰謀論信念との関係を調査した.陰謀論信念の強さには被害妄想や科学的知識,認知的熟慮性といった要因に関係があるのか,疑似科学信念に対するこれらの影響も検討した.
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P-3-16本研究では,単語対を手がかりとして呈示することのみで連鎖型連想の拡がりを示す指標である前向流動(FF)が変化するかを検討した.実験1では,自由連想を2回行うことによってFFが上昇したことが確認され,実験2では,単に2回連想を行う統制群より,意味的関連度の強い単語対を呈示した群でFFが低下することが示された.以上から,単語対の呈示によって人の創造性に介入できる可能性が示唆された.
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P-3-20幾何学図形を顔のように認識する現象をシミュラクラ現象,雲や花の模様を顔のように認識する現象を顔パレイドリアという.また顔パレイドリアの発現には被験者の性格特性が影響している可能性がある.従って本研究では,物体が規則的に配置されたシミュラクラ現象に着目し,3つの丸が配置された刺激を用いて実験を行い,シミュラクラ現象と性格特性との関係性を調べた.その結果,性格特性の中でも外向性がシミュラクラ現象の発現に影響を与えている可能性が示唆された.
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P-3-22A本研究では,科学博物館と美術館の2種のミュージアムで,メタ認知に焦点を当てたワークショップを企画し,参加者にどのような学びが生まれるかを検討した.その結果,参加者は自らの鑑賞を俯瞰し,その特徴や方法を理解し,鑑賞方法を制御する,いわば鑑賞のメタ認知を働かせ,多様な触発を経験していたことが示された.これらの結果は,複数のミュージアムを往還する経験が自らの鑑賞のあり方をメタ的に考える機会となり,触発を促す可能性を示唆している.
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P-3-40A大規模言語モデル(LLM) がどのような含意推論を出力するかについて調べた.利用したLLMはのGPT-3.5(OpenAI)であった.このGPTに実験参加者としての役割を与え,含意推定に関するタスクを行った.Nishihata et al.(2023)の人間データと比較した結果,GPTでは人間とは異なり,コミュニケーション相手によって含意推論を変えない場合が多い可能性と,文脈が交絡した場合,文脈情報を利用しない可能性が示された.
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P-3-42A個々の人間には固有の記憶の傾向があり,日常生活において様々なエラーを引き起こす.本研究では,エラーを引き起こす特定の個人属性や感情状態を表現するモデルパラメータを,データから推定する手法を検討する.モデルパラメータの推定手法には複数のものが存在する.本論文では,ACT-Rのパラメータを推定する手法として,勾配法に基づくものと最尤法に基づくものを比較し,両者の差異を比較検討する.
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P-3-45A本研究は,ニュース映像でアナウンサーを務めるアバターの口の動きと顔の向きが,視聴者に与える印象やニュース内容の認知に及ぼす効果を調べた.異なる4つの条件でアバターが映った刺激動画が提示され,理解度と好感度に関する質問紙調査を行った.結果,アバターの口の動きがある場合,参加者は動画をより理解したと考えやすかった.さらに,アバターの顔方向がニュース映像の方に動くと,参加者はアバターにより注意を向けていた.
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P-3-47本研究におけるセレンディピティとは,予期せぬ情報を通じた新たな視点や世界の発見である.本研究では,このセレンディピティを促す情報探索システムを提案する.本システムは,内包的検索と外延的探索の組み合わせとユーザーによる積極的な探索によって,新たな情報に出会う環境を提供する.内包的検索では特定の条件を指定し,外延的探索では直感的に情報を探索する.2つの探索手段の交互利用によって,セレンディピティの促進を目指す.
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P-3-54他者モデルは,他者の心的状態や行動を予測するためのモデルである.他者モデルは「平均他者モデル」「典型他者モデル」「個別他者モデル」の3種類に段階別に分類できる.平均他者モデルは一般的な行動パターンを捉える基礎であり,典型他者モデルは性格ごとに分類されて高い予測精度を持つ.個別他者モデルは特定の個人に基づき,最も精度が高い.本論文では典型他者モデルを4つに細分化し,それらの特性について議論した.
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P-3-61蚊取線香を対象としたユーザビリティテストを実施した処,若年成人において顕著な課題遂行の失敗,課題遂行時間の長延化,説明書への依存,怖がり反応など,これまで高齢者層における情報機器との相互作用に特異的と考えられていたものと類似した反応が観察された.高齢者層にとっての「情報」,若年成人にとっての「火,物理的操作」という極めて基盤的知識が,人の外界との相互作用において持つ意味・機能について考察を深める.