研究分野
言語
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O-2-1ダイナミック・タッチは従来、個人によるものの形や重さの知覚に関わる動作として研究されてきた。しかし、ものを揺する動作は対面相互行為において視覚情報として相手に伝わり、ものの重さの表出となって立ち現れうる。本発表では、ダイナミック・タッチが発話の随伴動作となって表れ、重さを相互に評定しあう行為に関わる場面を分析した。その上で、個人内の認知に伴う動作は、相互行為に援用され、個人間に開かれうることを示した。
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O-4-1A本研究では, 曖昧な句構造において, 付加情報がある場合, ジェスチャーが自発的に産出されたのか, また, どのようなジェスチャーが表出されたか検討した. 統語境界に基づいて, 新たに分析を行なった結果, ジ ェスチャーは統語構造に応じて表出され, 意味情報を表現していることが示唆された. よってジェスチャーは, 付加情報の補完に役立っていると考えられ, 言語・ジェスチャー両方が提示された場合、必要な情報を過不足なく伝えると考えられる.
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O-4-2外国文の黙読時に心的に経験する声(IRV)と,外国語能力について検討した.日本語話者に日本語と英語で,説明文と会話文を黙読させ,その時のIRVについて尋ねた.その結果IRVを経験する者は,英日ともに会話文で多く,英語能力が高いと英語文で経験しやすかった.一方IRVの鮮明さは,英日ともに会話文で高かったが,英語能力による違いはなかった.IRV経験の有無には言語への習熟が影響するが,鮮明さには習熟以外の個人的特性が影響するのだろう.
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O-6-4詩の鑑賞の認知過程に着目した研究は少なくその過程は明らかになっていない.本研究では,鑑賞の認知過程を明らかにするために,詩的効果の喚起過程を説明するずれの解消理論を計算モデル化する.具体的には,詩の意味処理を活性拡散ネットワークでモデル化し,認知的負荷とずれの解消をネットワークの活性度からモデル化した.また,評定実験の結果を目的変数とする重回帰分析を実施し,モデルを評価した.結果,ずれの解消が詩的効果に有意に影響を与えることが示された.
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P-1-1本研究は,動作中の認知的な発話行為により知覚対象を弁別することが,身体動作に及ぼす影響について前頭前野の脳活動に注目し,Go/No-go課題を用いて実証的検証を行った.結果から,認知的な発話行為による知覚対象の弁別によって,身体動作の反応時間が遅くなることが明らかとなった.また,認知的発話が前頭局部の脳活動の賦活と関連していることが示され,動作中の言語使用によって動作の反応に影響を及ぼす可能性が示唆された.
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P-1-3本稿では,日常会話場面において,スマホを持ち替えることがどのような相互行為の機能を果たしているのかを考察した.スマホの持ち替えは頻繁に行なわれるものではないが,持ち替え直後の行為としてジェスチャーや画面の共有がよく行なわれていることが分かった.スマホの持ち替えによって,関与や相互行為空間を調整していることが観察された.
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P-1-4本研究では、3歳から11歳、大人の発話資料を縦断的に分析し、言語発達や物語談話を構成する能力等について考察した。発話データはKH Coder 3を用いてテキストマイニングにより解析し、物語文の使用語彙の変化、内容的特徴、言語的特徴に焦点を当てた。11歳以降の発達の特徴として、情報を加えて描写を豊かにして話を面白くする工夫等、子どもの創造性の発達と物語を独自のものにしたいという希求が示唆された。
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P-1-10対人コミュニケーションにおいて、第一印象はその後の人間関係に大きな影響を及ぼすが、既存の会話練習システムはビジネスシーン向けのものが多い。本研究では、日常会話の場面で第一印象の改善を目的とした会話練習システムを提案する。人間の「話し方」に着目し、「抑揚」、「話す速さ」、「間」、「母音の明瞭性」の4観点から評価を行う。結果はユーザにフィードバックし、繰り返し会話の練習をしてもらうことで、第一印象の改善を図る。
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P-1-14インターネット検索において,検索者が自身の必要とする情報やその入手方法を適切に把握していない(情報要求が曖昧な)場合がある.本研究では,Yahoo!知恵袋に投稿された質問文を,質問者の情報要求が言語化されたものと捉えて分析し,曖昧な情報要求が言語化されたときの特徴を探索した.外部のwebページを参照する回答が寄せられた質問文中で出現頻度が高くなる語を発見したが,情報要求の曖昧さとの関係性は今後検討する必要がある.
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P-1-15A本発表では,指示詞を産出させる実験課題を用いて,日本語指示詞の選択に話者から指示対象までの距離と,聞き手位置が及ぼす影響を調べた.多項ロジスティック回帰モデルの推定をおこなった結果,(1)距離は聞き手位置にかかわらず指示詞選択に影響し,(2)聞き手位置の影響は距離によって異なっていた.この結果は日本語の指示詞は聞き手を考慮した基準を用いて選択されるという,先行研究の主張を補完するものであった.
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P-1-18言語の本質は思考かコミュニケーションかという議論は現在でも続いている。また,文という単位の本質について思考的側面(判断)とコミュニーション的側面(報告)があるとする立場が日本語研究にはある。本稿は,認知類型論的な立場から,日本語の文の解釈についてのアンケート調査を行い,一つの文に判断的(物的)解釈と報告的(事態・場所的)解釈がどのように共存しているかを,属性を指す文を中心に明らかにした。
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P-1-33A自分の手で自分自身の身体に触れる行為は,自己接触行動と呼ばれている。本研究は,自己接触行動が語彙検索を促進させるかについて検討した。実験参加者を統制群,自己接触群(課題中手で頬に触れてもらう群),抑制群(ジェスチャーができない群)に分け,語彙検索課題と再生課題を行った。その結果,自己接触行動は語彙検索を促進させることが明らかになったが,TOT 状態に陥った際には,自己接触行動は影響を及ぼしていないことが明らかになった。
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P-1-34A本研究では,Vision Language Model (VLM)が人間とどの程度類似した音象徴的感性を持つかを分析する. 実験には,人間の評価に沿って画像を進化させるシステムであるCONRADをベースに,新たにVLMの評価も反映可能な進化型画像生成システムを構築して分析を行った. 実験の結果,VLMは新たに作成した疑似単語を対象にした場合も含め,人間と類似した音象徴的感性を示すことが確認された.
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P-1-40本研究は,AI翻訳を用いた英作文プロセスを明らかにすることを目的とした.日本語話者の大学生12名に対して,AI翻訳が使える環境で自由英作文を求め,その操作ログを記録した.操作を分類した結果,英語習熟度にかかわらずAIが一定程度利用されること,英語上級者の方がAI利用が少なくAI利用が補助的であること等を明らかにした.最後に,ヘイズとフラワーのモデルを拡張し,AI利用の英作文プロセスをモデル化した.
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P-1-45A人は言語を理解する際に,言語化された物体の色や大きさといった物理的性質を心内でシミュレーションしている。本研究では,認知的共感性が高い言語理解者は好ましい他者の行為を描写している文が呈示された場合に文と画像の内容の一致判断をより素早く行うことを明らかにした。この結果は,物理的性質だけでなく感情価もシミュレーションされること,およびそれが認知共感性の高さと相関することを示している。
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P-1-46A言語隠蔽効果とは,記銘した顔について言語的に説明することが,後の再認を妨害する効果のことである.本研究では,刺激セットの類似性が言語隠蔽効果に与える影響を調べるため,画像生成モデルを使用して顔画像を作成し,実験を行った.その結果,言語的に類似した刺激セットでのみ言語隠蔽効果が観察された.この結果は,与えられた刺激からの言語隠蔽効果の予測に貢献すると考えられる.
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P-1-51A単語類似度の知覚が単語を提示する順序に影響される現象(順序効果)を説明するため,文脈に対応する部分空間を反映した新たな単語分散表現のモデルを提案する.実験データを用いて部分空間の違いが非対称な類似度評価をもたらすか否か検証する.
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P-1-52A本研究では,Predicationモデルを用いて,知能の個人差と隠喩の解釈過程との関係性を分析する.参加者(N=85)は流動性/結晶性/検索流動性知能の課題と隠喩の解釈課題に取り組んだ.MAP@100が最大となる条件における,モデルのパラメタと個人差指標の相関を求めたところ,検索流動性知能が高い人は主題側の制約を弱めた解釈を,類似に対する感受性が小さい人は主題側の制約を厳しくした解釈を生成する可能性を示唆した.
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P-1-56A中分・佐藤・五十里(2022)に続き,儀礼的行為における系列長さの効果を検討するための実験を行った.2種類の行動からなる長さ5までの刺激系列を用意し,実験参加者に儀式としての効能や複雑性といった側面を評価させた.結果は,系列の長さは効能・重要度・複雑性に強く影響を与えており,ランレングス長はすべての側面に影響を与えていた.回文や反復といった特徴は複雑性や規則性の評価に関連していた.現実の儀式の分析への応用可能性について議論する.
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P-2-7本研究は,子どもの言語発達について,認知言語学の用法基盤理論,構文文法論の観点から考察を行うものである.子どもが言語を獲得していく過程において,構文とそこに生じる動詞をどのように融合させていくのかについて,データベースCHILDESに基づく調査の結果を提示する.動詞のタイプにより,構文の使用頻度に相違が見られること,またその相違には,構文のもつ意味構造的特性と構文同士の継承関係が関わっていることを指摘する.
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P-2-8本研究では,比喩的思考と創造性の関係を検証することを目的とし,抽象的画像を用いた画像説明課題を用いた実験を実施し,課題遂行中の脳波を測定した.画像説明課題では,提示された抽象的画像の形に関する説明を求める比喩的思考条件と,色についての説明を求める字義通り思考条件を設け,α波に関し条件間で比較した.その結果,創造的思考における前頭葉の関与の左右での違いと比喩的思考の関係が示唆された.
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P-2-16本研究は,文脈に応じたSynset選択に基づき単語の定量的意味を抽出する手法を検討した.入力単語のカテゴリを区別して定量的意味を抽出し,ロボットのジェスチャーに反映させることで,人間が持つ定量的な軸を抽出することを目指した.ジェスチャーと発話の自然さを評価する実験を行った結果,文脈を考慮したアプローチにおいて,カテゴリだけでなく各単語に着目するなど,さらなる文脈の考慮が必要であることが示された.
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P-2-21修辞判断における正確性を明らかにすることを目的として,話し役がセリフを伝達し,聞き役が修辞判断を行う実験を実施した.結果,本音伝達条件と照れ隠し伝達条件では認知負荷低条件より認知負荷高条件で正確な判断が行われ,嘘伝達条件と嫌み伝達条件では認知負荷による効果はみられなかった.本音や照れ隠しであると判断するまでの停止規則が嘘や嫌みの判断に比べて複雑であるなど,いくつかの可能性を検討した.
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P-2-22A本研究は,物語の登場人物を演じる演劇体験のうち,物語を読んでどのような演技をするのか構想する「演技計画」を行うことの,他者の心的状態を推測する能力や共感への促進効果を検証した.大学生82名を対象とした実験の結果,物語を読んでその内容を要約した戯曲要約群と比較した演技計画の促進効果は見られなかった.一方で,演技計画群が経験した戯曲の物語への移入の強さは,視点取得能力の向上を促進することが示された.
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P-2-33先天的に書字機能に困難を抱える書字障害者は日本国内で最低でも 6%は存在すると想定されている.しかし障害の発生要因や診断基準などは不明確であり症状の明確な定義もなされていない.本研究では漢字「要素」と「構造」ごとの想起を対象に書字障害者の漢字想起のエラー特徴の抽出を行い一群の書字障害の症状の定義の構築を目指す.
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P-2-38学生に「欺かれた振りで報復」と「誤解」が主題の絵本各1件を画面で読み聞かせ, 2次的誤信念内容の理解技能を示す実験である。その技能として(a)真実と誤信念内容の対比及び真実の抑制,(b)息子が欺かれた振りで「服毒自殺を偽装」の報復を描く絵本の文章構造理解,(c)類推の下位技能となる真実と誤信念内容の対比)(d)作業台となる作業記憶の負荷,特に(e)下記の方法1に示す様に誤信念理解における後知恵に対処する際の情報処理負荷増加を指摘した。
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P-2-41本研究では,絵文字を用いたメッセージ伝達において,絵文字の「個数」が持つ効果を検討した.場面想定法を用い,「喜び」,「楽しさ(心地よさ)」,「怒り」,「哀しみ(悲しさ)」の4つの感情を伝える文章末に,それぞれの感情に対応する絵文字を1個,または3個付加した「発言」を提示し,その「発言」から受け取った発言者(送信者)の感情を評価させた.その結果,文章に付加する絵文字の個数が1個のときにより強く感情が伝わる,と考えられる結果が得られた.
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P-2-43A本研究では「キャパい」など8語の新規的な派生形容詞を題材に,形容詞の言語使用を可能にする文法知識の構造を,使用基盤モデルの枠組みから探究する.題材の語に対する既知の程度及び一項述語文・二重主語文・ソウダ文の容認性評定を,大学生を対象に調べた.調査の結果,既知語では二重主語文に,未知語,また既知語であっても感情形容詞に判別される語では一項述語文に容認性が高く評定されたことから,一項述語の文型からスキーマ拡張が生起していることを分析した.
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P-2-45形態的一般化のメカニズムとして,主に規則演算型と連想記憶型が提唱されている.後者は類似性の影響を受けやすい.本研究は,日本語のGroup IIIのサ行変格活用動詞(~する)とGroup Iの動詞のうち,基本形がサ変動詞との類似度が異なる実在動詞と新造動詞を刺激として,その意向形の誘発産出課題を、日本語母語話者と学習者に実施した.その結果,母語話者にも学習者にも類似性の効果は見られず,規則演算型メカニズムの適用が示唆された.
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P-2-49ADecorated characters in comic, which we call “comic ideophone” (or “描き文字” in Japanese) describe a sound, a state, an inner feeling of the object etc. in comic. In this research, we will experimentally investigate the effects of comic ideophones for viewers of the picture including the comic ideophone. We focused on comic ideophones which describe shape, texture and hardness of the object and will create some comic ideophones which have a different shape of the contour and a word sound. In the experiment, we will examine 5 different conditions to find out factors which can be correlated to the impression of ideophones.
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P-2-50本研究は, 第二言語としての日本語学習者を対象としたものである. 日本語学習者が日本語漢字単語を視覚的に認知処理する際に, ふりがなが漢字の認知過程に与える影響を検討した. 主な要因はふりがなの有無, ふりがなの位置(上下), ふりがなの表記の種類(ひらがな, カタカナ)であった. その結果, ふりがなを要因とする主効果が認められず, 日本語漢字単語の処理にふりがなは影響がないことが明らかになった.
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P-2-52本研究では,驚きや意外性を表す感情表出系感動詞「えっ」と「ええ」の談話機能を会話コーパスを用いて分析した.その結果,「えっ」は単独で質問として機能し,質問が後続する可能性が高いのに対し,「ええ」は主にフィードバックとして単独で使われやすいことがわかった.これらの結果から,「えっ」は受け取った情報と既存知識との間に不一致があることのみを示すのに対し,「ええ」はその情報が既存知識に組み込まれたことまでもを示すという情報処理モデルを提案した.
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P-2-53A人間は複数の表現を相補的に処理しコミュニケーションを行う.人間と機械の円滑な対話のためには,機械が状況に応じてこれらの媒体を変換する仕組みを持つことが重要になる.本研究では,記号的表現と身体的表現を接続する仕組みをもつ認知モデルベースロボットが,実世界の社会の人々の活動に及ぼす影響について検討する.ロボットの印象を調査するフィールド実験において,ロボットの発話する単語とジェスチャが同期しているとき,いくつかの項目が高得点となった.
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P-2-65対人会話において,話し手のジェスチャーが共通基盤の形成を促進することが示されてきた.しかし,聞き手のジェスチャーの影響については不明な点が多い.本研究では,聞き手の指さしジェスチャーが共同作業に与える影響を調査した.その結果,聞き手の指さしジェスチャーは課題完了までの時間を有意に短縮することが示された.これらの結果は,聞き手のジェスチャーが共通基盤の形成を促進していることを示唆している.
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P-3-2A本研究では,条件文の発話者の性格や追加情報を提供する主体(人間またはAI)が,条件推論の抑制に与える影響をポライトネス理論に基づき検討した. 先行研究では,気難しい相手に対する曖昧な発言は,訂正を意図したものと解釈されやすく,推論が抑制されることが示されている.本研究では,AIによる曖昧な発言が推論に及ぼす影響を実験的に検討し,AIによる曖昧な発言は相手の性格によらず,人間の場合よりも推論の抑制がされにくいことを示した.
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P-3-6本研究ではアファンタジアと非アファンタジアの文章読解の過程にどのような異同が観察されるかを整理するための実験が行われた.具体的には文章読解中の場面の転換に対してどのような情報処理を行っているかを群間で比較した.実験の結果,ファンタジアは場面転換の事実の整理だけを行っており,文章への没入の度合いが非アファンタジアよりも浅い読み方をしている可能性があることが示唆された.
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P-3-7A近年,発展が著しく進んでいる対話型生成AIは,言外の意味を扱うコミュニケーションにおいて,十分な性能を発揮できていない.我々は対話型生成AIと認知アーキテクチャを統合することで,ある3つのシチュエーションにおいて対話型生成AIが他者の意図を読むことができることを示してきた.本研究では,より多くのシチュエーションで提案手法を評価する.
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P-3-17A仕事の現場では,社員らが図面や作りかけの部品を指し示しながら話し合う場面を頻繁に見かける.彼らはコ系指示表現を用いて,指さしや視線を配分しながら,実際にはそこには存在しない「水の流れ」や「製造機の故障」等について話し合っている.本研究は,最近の指示詞研究の分類枠を参考にしながら,相互行為の視点から,そこに「存在しないもの」がどのようにして「存在するもの」として参与者間で共有されるのかを記述し,コ系指示詞を伴う指さしの可能性を考察する.
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P-3-27本研究では児童(n = 27)と書字指導者(n = 13)に分類課題とインタビューを実施し,文字の丁寧さの認識について分析した。分類課題では書字指導者と児童は一致した。インタビューでは,両者ともに丁寧さの判定に書字要素の「配列・配置」をよく使用していた。両者に有意な差がみられたのは「字形」であり,書字指導者は,画間の均整さなどをよく発語したが,児童は少なかった。書字要素の「字形」は児童には認知しづらいか記憶しづらい可能性が示唆された。
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P-3-32本研究では,嗅覚識別能力を向上させるための手段の一つとして,直感的に感性の機微を表現可能なオノマトペに着目する.「ラベンダーよりもややスッキリした香り」や「ふわっとした印象が強いバラの香り」のように,細やかな香りの表現が可能になり,嗅覚感覚を向上させる効果があると期待される.本発表では,よく似ているが微妙に異なる香りを対象とし,オノマトペを用いることで香り識別能力が向上するか確認する実験を行った結果について報告する.
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P-3-35本研究では,ベトナム語を母語とする日本語L2学習者が日本語の歯擦音をどのように区別して発話するのか,音響分析により調査した.その結果,学習者はCoGとF2の一方,または両方を用いて日本語の歯擦音を区別することが分かった.また学習者は日本語の ɕ とベトナム語の ʂ の区別を行っており,その区別は学習者により異なり,CoGを用いる学習者とF2を用いる学習者,そして両方を用いる学習者いることが分かった.
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P-3-36A現在,対面状況と共に遠隔対話ツールを利用する「ハイブリッド空間」の利用が一般化してきているが,こうした新たな空間における指示詞使用についてはあまり調べられていない.本実験では,対面状況とハイブリッド状況でそれぞれ家具が配置された部屋の図を再現する課題を参加者に行ってもらい,指示詞産出頻度を比較した.結果,対面状況では「こ系」指示詞が多く,ハイブリッド状況では「そ系」指示詞が多く使用された.
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P-3-40A大規模言語モデル(LLM) がどのような含意推論を出力するかについて調べた.利用したLLMはのGPT-3.5(OpenAI)であった.このGPTに実験参加者としての役割を与え,含意推定に関するタスクを行った.Nishihata et al.(2023)の人間データと比較した結果,GPTでは人間とは異なり,コミュニケーション相手によって含意推論を変えない場合が多い可能性と,文脈が交絡した場合,文脈情報を利用しない可能性が示された.
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P-3-41Hierarchical Dirichlet Process (HDP) is a non-parametric version of Latent Dirichlet Allocation (LDA). HDP was used for unsupervised extraction of 1) constitutive patterns of English words (either in spelling or pronunciation) and 2) associative patterns between spellings and pronunciations in such a setting that words are “documents” and their character n-grams are “terms”, with distinction between continuous “regular” n-grams and discontinuous “skippy” n-grams. Results suggest regular n-grams allow extraction of morphemes, whereas skippy n-grams allow extraction of abstract patterns that rather capture rules of word-formation. The proposed method is language-independent, and therefore is applicable to any language in unsupervised manner.
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P-3-46A本発表では,心身重複障碍者とその母親との間で比較的スムーズに進行している日常的なコミュニケーションに着目し,障碍のために生じうる様々な困難にもかかわらずスムーズなコミュニケーションがいかにして達成されているか,振る舞いの意味の理解可能性がいかに構成されているかを,日常的な活動の構成に着目することで探索的に検討する.
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P-3-56本稿では、モーダルな背景を持つ発話文が談話とその参与者の共有知識の構築にどのように関わるのかという問題を(命題の真理条件ではなく前提となる世界を否定する)メタ言語否定を通して検討する。具体的には、肯否疑問文の応答文における(メタ言語)否定へのアクセスが質問対象命題の帰属可能な世界が単一か否かという論理特性に依存することを手掛かりに、文と談話/共有知識の相互作用の実態の一端を示す。
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P-3-65オープンサイエンス時代の到来により学術コミュニケーションに変化が生じ,アカデミックライティングも変容が迫られている.本研究では,オープンサイエンスに積極的に取り組んできた研究者が経験した内容に注目しつつ,アカデミックライティングが今後どのような役割を担っていくのかについて論じる.
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P-3-66文処理において,ヘッド(H, 動詞)とヘッドと結びつくべき項(target, T)とtargetと類似する項(attractor, A)があるとき,ヘッドが誤ってattractorと結びつく現象がある.時間制限のある容認性判断課題では促進性干渉効果が見られる.また,語順がTAHの方がATHよりも大きな促進性干渉効果が予測される.日本語の謙譲表現を含む文で検証したところ,語順がTAHの方がATHよりも大きな促進性干渉効果が見られた.